帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの「古今和歌集」 巻第五 秋歌下 (279)秋をおきて時こそ有けり菊の花

2017-10-02 19:30:16 | 古典

           

 

                      帯とけの「古今和歌集」

                     ――秘伝となって埋もれた和歌の妖艶なる奥義――

 

平安時代の紀貫之、藤原公任、清少納言、藤原俊成の歌論と言語観に従って、古今和歌集を解き直している。

歌の表現様式を知り、言の心を心得る人は、歌が恋しくなるであろうと、貫之は言った。

優れた歌は、心深く、姿清げで、心におかしきところがあると、公任は言った。全ての歌に清げな姿と心におかしきところがあることがわかった。三拍子揃うことは至難の業なのだろう。

 

古今和歌集  巻第五 秋歌下279

 

仁和寺に菊の花めしけるとき、歌添えて奉れと、

おほせられければ、よみて奉りける   平貞文

秋をおきて時こそ有けり菊の花 うつろふからに色のまされば

(仁和寺の上皇におかれて、菊の花を召された時、歌添えて奉れと仰ったので、詠んで奉った・歌) 貞文

(季節の秋を除いても、咲き誇る時が有ったことよ、菊の花、移ることによって、色彩が増しますれば……飽き満ち足りる時を除いても、その時が有ったのだった、貴具の端、移ろうやいなや、色情まされば)

 

「秋…飽き満ち足り」「菊の花…長寿の女花…きぐのはな…貴具の端…貴い身の端」「うつろふ…移ろう…悪い方に変化する(譲位する)…次第に衰えゆく」「からに…(移ること)によって…(移ろうと)たちまち」「いろ…色彩…色香…色情」。

 

秋すぎても色彩ます、長寿の菊の花を愛でた――歌の清げな姿。

上皇になられても、以前にも増して、色香のお盛んなご様子を愛でた――心におかしきところ。

 

当時、貞文(平中)の家には、菊も多くあったが、多くの姫たちが、その親に頼まれて、大人の女になる為に預けられていたらしい。その奇具の女花を奉れrと仰せになられたと思われる。さすれば、歌の心におかしきところがよくわかる。

 

宇多天皇は譲位の後、仁和寺に住まわれたが、一部の女御たちは宮中より院に移っていた。この頃の歌と推察される。後に仁和寺で出家され法皇となられ、女たちと別れ、修行の旅にでられた。

 

(古今和歌集の原文は、新 日本古典文学大系本による