はさみの世界・出張版

三国志中心の、創作小説のHP「はさみの世界」の出張版です。
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孤月的陣 花の章 12

2017年08月09日 13時27分45秒 | 孤月的陣 花の章

「すまなかったな」
孔明が言うと、趙雲は薄く笑った。
「べつに。たいした手間じゃない」
水のことではないのだが。まあ、いい。
誤解であっても、感謝していることだけ伝われば。
孔明が落ち着いたのをみると、趙雲は、周囲に聞かれないように声を落として言った。
「ここは虎穴どころの騒ぎではないな。この城のどこか、あるいはだれかが『壷中』なのだ」
 
「まったくそのとおりだ。斐仁の話でわかったことは、
一、やはり斐仁は『壷中』に雇われた人間であった、ということ
一、それは七年前で、ある秘密を守るためであったこと
一、その秘密は、荊州を揺さぶるほどのもので、曹操にとって有利に働く種類のもの
一、糜竺は『壷中』の仲間であること
一、諸葛孔明は『壷中』からもっとも遠い人間であること
一、斐仁は程子聞を殺していないこと
以上の点だな…
しかし、斐仁が程子聞を殺していない、ということは信じてよいものなのだろうか」
「その場で取り押さえられたのだから、誤魔化しようがないのでは? やつが嘘をついているのではないか」
「この期に及んで、嘘をつく理由は? いまさら命が惜しくなったというのであれば、自害をしようとするのも不可解ではないか…
子龍、斐仁の気持ちはもう『壷中』にない。あと一押しで、奴はすべてしゃべる。喋らせるための材料が必要だ。だれが斐仁を取り押さえたのか、調べる必要がありそうだな。」
「ほかの人間が、程子聞を殺し、その罪を斐仁になすりつけた、というのか? しかし、それは斐仁の動きを把握していなければできない芸当だろう」
「その芸当をこなした人間がいるのだ。子龍、そもそも、斐仁はなんのために利用されたのだろう。いま、結果として、わたしたちは樊城にいるわけだが、このことで有利になる人間はだれだ?」
「劉公子か? いや、まさか。程子聞は、公子の学友だったのだろう?」
「それなのだが、なぜ程子聞だったのだろう。斐仁があなたに向けた最後の言葉『樊城のおまえの仲間を殺してやる』、に惑わされて、暗殺された程子聞が『壷中』の仲間だとわたしたちは思い込んでいたが、ほんとうにそうだったのかな」
「程子聞が『壷中』の敵であった可能性がある、ということか。
軍師、さっき、花安英と話す機会があったのだが、奴はこう言っていた。劉公子の腹心たちは、蔡家の人間を同じ出身の豪族仲間だと見なしているので、殺すのにためらいがある、と」
「ふむ、なるほど。『壷中』が樊城の人間のみで構成されているのであれば、そうかもしれぬ。だが、斐仁はそうではない、と言っている」
「糜子仲どのか。主公が知ったら、悲しまれるだろうな」
趙雲の言葉に、孔明も落ち込む。
そもそも、糜竺が『壷中』である、という考えすら、斐仁に言われるまでは浮かびもしなかった。
それほどに、孔明は糜竺という温厚な人物を信用していたのだ。
不思議なほど自分に親しくしてくれたのは、隠れ蓑にすぎなかったのか。
あの笑顔の裏側では、殺意がふつふつとたぎっていたというのか。

それでも、わからないことがある。糜竺は、なぜ孔明にその存在を報せるように、『仇讐は壷中にあり』などという言葉を残して消えたのか。
まるで挑発するかのようではないか。
そもそも、なぜ自分が『壷中』に恨まれねばならないのだろうか。

「まだ新野に帰ることはできないな。われらはまだ、『壷中』の掌の中だ。策を練るにしても、情報が足りない。まずは調べねばなるまい。
斐仁を取り押さえた人物を探す
程子聞が『壷中』の仲間であったのかどうかを確かめる
糜竺が樊城で誰と誰に面会したのか確かめる
斐仁が守ってきた『秘密』とは何か、探る
最後については、これは斐仁がずっと新野にいたことを考えると、新野になにかあると思う。
至急、早馬を新野に送ろう。
さて、のこりの三つをどう首尾よく片づけていくか、だな。ここは敵陣の真っ只中だ。われらの行動は逐一、『壷中』に知られていると考えてよいだろう。
われらふたりだけで戦わねばならぬ。心の準備はよいな?」
「当然だ」
と、言って、趙雲は不敵に笑った。

つづく…
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