世靄真逆(よもやまさか)

関係が無い、と思っていたもの同士が
実は、関係が有る、と分かった時

アダムとイヴ-語り継がれる「中心の神話」 岡田 温司 著 中公新書

2012-11-23 17:14:04 | 書籍一覧

購入日:2012-11-21
著作名:アダムとイヴ-語り継がれる「中心の神話」
著 者:岡田 温司
発 行:中公新書
読了日:2012-11-30

<読了前>
読み終わった『化石の分子生物学』の終りのほうで、『失楽園』が出てきた。本屋の棚を眺めていたら、
丁度その中心人物名がタイトルの本があったので、あまり迷わず購入。
副題に、「神話」とあるので、バランス取りのために日本の神話『古事記』についての本も同時購入している。
バランス取ったつもりだが、どちらも神話?なので、普通の日本人達に比べれば、かなり偏っているな。
概要はキリスト教関連本で、分かったつもりになっているので、少し詳しく見ようという腹である。
なんか、表紙のすぐ後に、アダムとイヴっぽい中世の格調高そうな絵画が複数。全て生々しい裸体。
ところが、電車の中で読む時は、ラノベの萌え絵の方が恥ずかしいのである。
2012-11-23より読み始める予定。付録資料除き、全211ページ。

<読了後>
2012-11-30読了。
タイトルの通り、「アダムとイヴ」及び、エデンの園、原罪などについて、詳しく読め、考えを深めた。
中世の絵画や、教会などの壁の彫刻やレリーフなど、図や写真、地図も多く用いられ、それを用いての
アダムとイヴに関連する部分についての旧約聖書やその後の見解の解説である。

解説は、主に、過去のいろいろな時代の教会や哲学者などの思想をもとに、当時の民衆の風俗や
文化、時代・歴史背景も加味して、多数の相反する考えなどとも比較しながら説明されている。
特に多く出てくる人物は、アウグスティヌスだったように思う。

アダムとイヴ関連のことについては、基本的に、よく知られている考え方だったと思う。
イヴの誕生についてや、男と女どっちが優れているかとか、どっちが良いか悪いか、罪や罰についての見解、
エデンの園が実際にどこにあるかの探求や、時代を経るにつれて、話が大きくなってきたり、新しい要素が
混入してきたり、180度違う考えが出来たり。

カインとアベルの話は、私はほとんど知らなかったので、今回はその点は新しい知識となった。
よく考えると、旧約聖書の話が、(解釈の違いや外伝の影響もあると思うが)ホントの話であるとすれば、
人類の最初の殺人を犯した人はカインになるわけですね。そして、最初に死んだ人がアベルと。

また、殺人の償いとして、「街を作ること」があったようですが、はぁ?街づくりが罰????という思いでした。
ただし、例えば街づくりによって、本来無償であるはずの土地に価値がつき、価値の発生により金(カネ)
が発明され、更に、金の貸し借りが発生、土地と金によって、貧富の差ができ、現在のように、生き地獄と化す
というくだりになるのであれば、納得です。

ただし、私の考えでは、この兄弟による殺人事件の発端は、神がアベルが納めたものばかりを選択して、
「納めたもの」に優劣を付けたことによると思う。元々価値を創造したのは、神であったということになりますね。
しかも、神がなぜアベルが納めたものばかり選択していたのか、の説明も無いようです。

また、選択したものが、子羊という、動物の生命。生贄。

この本の前に読んだ、『化石の分子生物学』で私が気になった、カンブリア紀の爆発的進化のことが思い出された。
他の生命を奪う方が、食料調達には効率がよいことが発見され、それが元になり、それまで争いごとの
なかった時代が終り、弱肉強食を追求するため、各生物は急激に進化したということ。各動物達は、
それまで争いごとがなかった楽園に居たのに、他の生命を奪うこと=果実を発見したがために、
その楽園を追放されたに等しいという考えです。

また、上記考えとすれば、このカインとアベルの話は、イヴが、知恵の実(=他の命)に、価値を見出すと、
とたんに失楽園するというのと、同じ展開になっていると思う。
今でも、「知らぬが仏」とか、「知らないほうが幸せだよ」とかありますが、正にそれですね。

カインはイロイロ考えた。神がなぜ自分の物を受け取らず、弟の物ばかり受け取るのか。
神の考えなど考えてはいけなかったのです。そういう差別に気付き、対処しようとしても出来ないとき、
不幸が起こるわけです。

新たな知識によって、現在の自分が不幸であることに気が付く・・・。そんな感じでしょうか。

イヴの場合は、サタン(蛇)が誘導した。カインとアベルでは、神が結局誘導者になっている。この時の神は
実は神に扮したサタンだったのではないか?あるいは、神=サタン?とも取れるなぁ。なんだ、同じかよ。

おとととととと、冒涜してしまった。

あと、罰の街の名前が「エノク」というのも、他のマニアックな書籍で重要な街として出てきたので、
とても引っかかるものがある。エノクの街か・・・。

エデンの園探しで、聖書の記述を元に描いた中世のいろいろな地図が出てくるが、これらが、後の
大航海時代に冒険の指南書替わりになっていたというのは面白い。

結局、前から私が思っているように、西洋史=キリスト教(聖書)史 だよなぁ。
突き進んでる。まさにカンブリア紀と同じで、カインが突き進んでるのと同じ。進化してないなぁ。
これが資本主義、新自由主義というものですか。

以上。



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