日本型メリット賃金への到達

混乱した日本型成果主義賃金の迷路から脱却して、普遍性のある日本型メリット賃金到達を目指す研究日誌。

教訓-最終回

2010-09-16 08:39:33 | Weblog
本シリーズの最終回となりますので、教訓を総括します。
私は先に引用した小越洋之助[2006]の中で、
コンパラブルワース=同一職務価値同一賃金が日本の企業社会の現実から遊離した、
ある種の啓蒙思想であるという批判に意趣を感じました。
最適賃金にしても、多変量解析という統計学的アプローチを強調すれば、
関係者から理解を得られずに、啓蒙思想として敬遠されるでしょう。

せっかく職務価値のモノカルチャーを脱皮して、
多変量(年齢、勤続、等級、職務価値、人事評価、etc)を用意しているので、
これが最適賃金を実現するための有効な方法論であることを理解して頂きたい。
また、統計学の素養を云々する必要も無いように、誰でも簡単に操作できる、
安価なアプリケーションに仕上ていますので、「やさしい最適賃金」であることを
体験して頂きたい。

弊社の「やさしい最適賃金」は、企業の人事担当者はもちろん、賃金コンサルタント、
公正賃金をサポートするNPO、法曹関係者、労働組合等、
関係者の全てをユーザとして想定しています。
コンパラブルワースのような、賃金差別是正運動に限りません。
コメント (0) |  トラックバック (0) | 

職務評価の補足

2010-09-15 08:52:50 | Weblog
昨日終了した民主党代表選挙の集計方法で、異なる計算基準のミックスがありました。
1.党員・サポーターはブロック毎に勝ち組を集計
2.地方議員は得票数を100点満点の比率で集計
3.国会議員は実数に2倍のウエイトを掛けて集計
その結果、菅総理の圧勝となりましたが、
集計方法を変更すれば接戦になったと予想できます。
特に今回は1を集約型にした結果大差が生じたので、反映型にすれば如何かと。
また、異なる計算基準のミックス、1票の格差も気になります。

いま連載している職務評価点数も、評価要素の選択、
ウエイトの比率で裁量の余地が大きく、恣意的な評価となりがちです。
わが国伝統の年齢・勤続に比べて近代的・科学的な装いに紛れて、
評価者に都合が良い恣意的な職務評価が出来上がる恐れがあります。
それを防止するため労使が協議して実施しても、
その結果が真の職務価値を反映すると期待はできません。
コメント (0) |  トラックバック (0) | 

教訓その4

2010-09-14 07:59:54 | Weblog
日本でコンパラブルワースが挫折した原因を簡単に総括すれば、
職務価値というモノカルチャーを信奉した過ちであると言えます。
さらに踏み込めば、その「モノ」自体の科学性を素朴に信奉していた人が多数派では
ないでしょうか。
理論的に労働力の価値は科学的に数値化できますが、
具体的有用労働の価値をどのように数値化しうるか、
それは科学的な一義性ではなく恣意的な数値化となるでしょう。
現実に企業が実施する職務評価作業では、
資本側の要素(責任の度合いや付加価値への貢献度など)と、
労働側の要素(精神的or肉体的負荷や専門教育など)の二元論で構成されているのが
一般的です。
また労働側が実施するときは労働側の要素だけで評価するものと考えます。
何れにしても具体的な数値化の過程は、実施主体によって変動が大きく、
到底科学的な一義性には達していません。
コンパラブルワースが想定するように、全く関連性のない複数の職務を第三者機関が
職務価値評価をして、同一職務価値同一賃金を指導することは、
欧米のように職務基準賃金の環境で可能であったとしても、
それを信奉するに到る科学的根拠は見出せません。
まして属人的賃金決定が圧倒的に支配的な日本で、
同一職務価値同一賃金を指導する等ということは、空想的社会主義としか思えません。

コメント (0) |  トラックバック (0) | 

教訓その3

2010-09-13 12:35:23 | Weblog
この2日間、著名な賃金研究家の図書からコンパラブルワースの批判を掲げましたが、
本日は自分の意見を書きます。
同一職務価値同一賃金運動が企業に対して、運動主体が数値化した職務価値に対応した
賃金支払いが正しいと主張することには、特に問題なしとします。
しかし数値化した職務価値を忌避する傾向が強い企業が多い状況であることを
知りながら、職務価値基準の賃金支払いを求めることは、企業の反発を招くだけで、
実効性が期待できません。
さて、小職の「やさしい最適賃金」も賃金差別事件に関与することを想定していますので、
先発した賃金差別是正運動からの教訓を得たいと努力しています。
その意味で、特に重要と認識する事項を整理して次に掲げます。
1.職務価値のような、当該企業に存在しないデータに頼らないこと。
2.賃金の決定要素は多元的であるから、多変量解析を応用できること。
3.DBMSとグラフィック画面を制御できるアプリケーションの所持。
4.欧米の模倣ではなく、実情を把握して主体的に考えること。

コメント (0) |  トラックバック (0) | 

教訓その2

2010-09-12 09:46:35 | Weblog
本日は、もう一人の著名な賃金研究家(小越洋之助|2006)からの批判を引用します。
本書では71pに節を設けて、コンパラブルワースについて本格的に論じていますが、
以下はその一部です。
…………………………………………………………………………………………………………
欧米諸国と比較して日本ほど賃金・人事決定に企業側の人事考課の影響が強い国はない。
そして職務評価や職務給が定着していない国の代表である。
また、欧米のような企業を超えた細分化した仕事別賃率も社会的に定着していない。
さらに現段階での賃金体系の動向をみるとき、アメリカ化=グローバリゼーション化の
進展においても、日本全体へのアメリカ型職務給の一般化などは現時点で展望することは
できない。
それは現在の成果主義賃金の導入、その混乱において明らかなように思える。
そのなかで日本において「仕事基準」として職務給や職務評価の導入、ましてや第三者
機関による評定の導入を機械的に説くのは日本の現状から乖離した一種の啓蒙思想で
あると考える。
…………………………………………………………………………………………………………
かって1960年代に経営側から職務給化の大攻勢がありましたが、
その結果として賃金体系上では一定の成果がありました。
しかし本来の職務給化とは異質の、皮相な日本型の職務給に落ち着きました。
いま2010年代ですから、あれから50年も経過化して尚、上記のような現状認識が正しいの
ですから、何と日本社会は停滞していることでしょうか!
―正確に言えば、この間に堂々巡りを何回も続けた結果、停滞しているのでしょう。
嘆きはさて置き本題に戻りますが、『日本の現状から乖離した一種の啓蒙思想である』
とは正にズバリ言い当てています。
運動に積極的に関与した人々は、自分の立つ足元を見ていなっかたのでしょうか?
コメント (0) |  トラックバック (0) | 

コンパラブルワースの教訓

2010-09-11 14:37:36 | Weblog
今月は1990年代に起きたコンパラブルワース(同一価値労働同一賃金)運動の
沈滞ないし挫折という現実を踏まえて、
それを今後の教訓として小職の最適賃金について再考します。
もとより小職はコンパラブルワースについて一定の関心と共感はありましたが、
何ら関与はありません。
さて、先ず著名な研究者からの批判(遠藤公嗣|2005)を掲げます。
………………………………………………………………………………………………
ところが、同一価値労働同一賃金の原則に好意的な研究者の間でさえ、
たとえば労働法分野の少なくない人々は、この原則が「職務基準賃金」の
もとでしか成立しないことを理解していない。
どのような賃金形態であっても、具体的には、年功給・職能給など
「属性基準賃金」であっても、この原則は適用可能である、
としばしば理解している。これは誤解である。
そして、こうした誤解が生まれる遠因は、賃金形態の相違が長く軽視されて
きた結果であったといってよい。
………………………………………………………………………………………………
私は、遠藤氏は最も優れた分析力を発揮する賃金研究者であることを認めます。
コンパラブルワースを声高に提唱してきた関係者は、慎重な吟味を経て運動に
乗り出したのではなく、日本のインテリにありがちな欧米の慣行に魅惑された
と考えて良いでしょう。
経営者の司令塔が年功賃金の本質を理解せずに様々な提言を発するように、
反体制派の司令塔も同じようなレベルの理論的過ちを犯しているのです。
したがってコンパラブルワース(同一価値労働同一賃金)運動の沈滞ないし
挫折という結果に至った根本的な理由について、上記の引用で充分語っています。


コメント (0) |  トラックバック (0) | 

賃金差別対策−LAST

2010-04-19 08:24:43 | Weblog
8.労働基準法について

本シリーズの最終回に、差別を規制する根本の法律の盲点について触れます。
第4条に賃金の性差別禁止がありますが、同一労働同一賃金を定めた条文はありません。
また賃金の決定要素に関する条文も一切ありません。
私見ではこのような法律は差別賃金の温床だけでなく、
男女差別賃金禁止について矛盾を含んでいます。
何故なら同一労働同一賃金は男女差別賃金禁止の前提条件であるからです。
理論上は同一労働同一賃金を掲げなくても、
男女差別賃金禁止を実現することは可能であると考えられます。
しかし前提が欠けると賃金の決定要素は属人的にならざるを得ないので、
性差別に都合の良い環境が出来上がってしまいます。
実業界では現実の賃金管理もその盲点を無意識的に利用しています。
立法は無関心を装い、行政も司法もわざと目をつぶっているように考えられます。

例えば職務価値と乖離した職務遂行能力によって、
賃金等級を決定するような仕組みであるとき、
子育てや家事負担の多い女性は格付けが低くなり、
その結果基本給の男女格差となります。
類書はこのような批判的分析に乏しく、平明な法律解釈に終始しています。
それは実用書としての価値を損なうものでは無いにしても、
高額な書物としては物足りなく思います。

本シリーズその6で書きましたように、賃金管理そのものに差別的運用はなくとも、
職務評価点数の低い職務に女性を集中させる結果として、
X軸:年齢、Y軸:基本給プロット図で男女間に賃金格差を形成します。
本シリーズではこのような人事戦略的な側面まで分析には至りませんが、
それでも同一労働同一賃金を確保することの重要性は変わりません。
コメント (0) |  トラックバック (0) | 

賃金差別対策その7

2010-04-18 05:35:32 | Weblog
7.偏差の許容範囲について

小職は、先の丸子警報機事件では許容される賃金格差について、
「正社員とパートの賃金格差が20%を超えない範囲であれば、
公序良俗に違反しない」と黙示されたと解釈しております。
しかしこの20%という格差を賃金プロット図で可視化すると、
とんでもない巨大な格差であることが分かります。
まして同一労働の労働者間の格差であれば尚更!
因みに上図グラフの最低線と最高線の格差は10%です。

さて本日は、格差ではなく偏差の許容範囲について考えて見ます。
上図では基準線に対して上下に5%の偏差ラインを設定しています。
多数の説明変数で重回帰分析した結果では偏差は小さくなり、
経験的に3ないし5%のラインが妥当です。
経験的にとは、これなら可視化しても極端に大きく見えないし、
また一回の昇給or降給で調整できる範囲ですし、
かつ米国で一般的なマトリクス昇給ガイドの昇給率の範囲でもあります。

最後に賃金差別の定量的分析は有効ですが、単に数値結果を出力するだけでなく、
プロット画面に下記のような機能を付加することで効果的な資料として活用できます。
1)多変量解析結果のプロツト図とカーブ
2)2次式or3次式の回帰分析結果のプロツト図とカーブ
3)プロット画面の任意のポイントにクリックしてカーブを描く
4)プロットマークから個々人のデータを参照できる
5)プロット画面から残差or格差を確認しながら昇給(降給)入力できる
やさしい最適賃金は総合的な賃金管理アプリケーションですが、
差別賃金対策としても重宝します。



コメント (0) |  トラックバック (0) | 

賃金差別対策その6

2010-04-17 09:16:56 | Weblog
6.やさしい最適賃金で分かる差別の有無

次に□:男子管理職と●:女子ケアマネージャの最適賃金を計算して、
近似度グラフから偏差を分析します。
偏差とはグラフ上では何らかの基準線からの乖離の度合いであり、
数値としては、回帰方程式の計算結果と支給された賃金の残差です。
上図では最適賃金カーブに対する偏差を確認することができます。
そこで□:男子管理職と●:女子ケアマネージャの偏差は同等であると分かります。
本例では、社会福祉法人コスモス介護サービスの3ないし4等級正社員、
□:男子管理職と●:女子ケアマネージャについて、年齢、勤続年数、
職務達成率、職務評価点数の4つを説明変数として、最適賃金を計算しました。

さて、グラフでは□と●の基本給の格差が大きいことも分かります。
問題はこの格差の要因は何かということですが、
実は□と●の年齢、勤続年数、職務達成率、職務評価点数の4つを説明変数の中で、
有意な格差が存するのは職務評価点数だけなのです。
その結果、次のように結論することが可能です。
□と●の間に基本給の格差が存するのは事実ですが、
その要因は殆どが職務評価点数の格差であり、従事する職務価値を反映している。
また□と●の間に最適賃金を基準とした偏差(残差)の偏りは殆どなく、
これは男女の賃金決定(昇給運用)で恣意的な取り扱いをしていないと言い得る。
―したがって、当該企業の□と●には男女間の賃金差別は存しない、と。
コメント (0) |  トラックバック (0) | 

賃金差別対策その5

2010-04-16 08:49:07 | Weblog
5.格差より偏差に注目する

賃金差別事件の判例では、よく格差が「公序良俗に違反する」云々という
司法の判断が出現します。
判断の基準として、丸子警報機事件では女子正社員とパート社員間の格差が
20%を超えていることを問題にしていました。
しかし正社員とパートが同一労働であることを知りながら、
20%の範囲であれば格差は許容の範囲内であり、「公序良俗に違反しない」
という論理の根拠は何か?
単なる大雑把な目安を基準にして判断しているだけではないだろうか。
このような旧態依然としたスキームの中で、
先に批判した男女別の年齢/賃金プロット図が何の疑問も無く提出されるのでは。

さてUS賃金研究所の提唱するやさしい最適賃金では、
格差より偏差に注目します。
上図で説明しますと、□:男子管理職、●:女子ケアマネージャの基本給には
格差が存するということよりも、基準となる最適賃金からの偏差に注目します。
―なお上図のカーブは単に基本給を年齢で回帰分析したもので、
ここで強調している最適賃金カーブではありません。
同一カテゴリー*の男女間に賃金格差が存するということよりも、
女性の賃金が基準額より低いことに着目します。
逆に言いますと、基準額を明示しないで賃金格差を問題にするだけでは解決が難しい。

*同一労働または同一職務価値に限定されない労働の銘柄という意味で使用。
コメント (0) |  トラックバック (0) |