5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

味噌文化は桶文化

2017-05-25 21:17:01 | たべもの
子供の頃に暮らした家の前を通り抜けた。と言っても建物の跡形はなく、敷地は倉庫と駐車場に変容してすでに大分の時が経った。子供の視線では結構広い庭だった思い出があるのに、今見ればなんと猫の額サイズではないか。ちょっとがっかりした。

当時は敷地の裏は地酒の仕込み蔵だった。蔵の中の仕込み用の木桶の大きさには驚いた記憶がある。 今では分譲のマンションに建て替わっている。仕込みが今風の金属製のバットに切り替わる前に酒蔵会社は廃業し、酒の商標だけが別の酒造会社に渡ったと聞くが、そんな名前の地酒が売られている様子もない。

家の斜め前に味噌屋があった。先代夫婦が亡くなってここも廃業。今は新築でも埃っぽい感じのプレハブ住宅が建っている。この味噌屋も木桶から味噌を売り、木樽で醤油や酒を売っていた。

こんな木の桶や樽のことを思い出したのは、中日夕刊の「目耳録」が「桶屋に吹く風」と題して醸造用の木桶について書いているからだ。

岡崎といえば八丁味噌が有名だ。この味噌のメーカーでは杉の木桶五百個を保有するが、その多くが製造から百年が経過して交換する時期に来ているのだという。

メーカーは年に数個づつを買い替えているのだが、何処も同じ後継者不足の事態から桶屋が減って大きな六尺桶を作れるのは大阪・堺の製桶所一軒だけなのだそうだ。

昔ながらの味噌製造にこだわれば仕込み桶は必需品。桶文化が消えれば八丁味噌も消えることになるとメーカーには危機感もあるという。

一方で、 五年前から小豆島の醸造業者が堺の製桶所に弟子入りして桶づくりの修業を始めているという期待の持てる話もあるんだそうな。

「伝統を守る」という言葉の感覚に今の若者たちは弱いのだろうか。古い文化の復興に自分の仕事を合わせてゆく若い人たちが増えているようだ。

こんな若者たちが吹かす新しい風で再び桶屋が儲かる日が来るかもしれないと目耳録氏はまとめている。

リユース、リサイクルの先駆けだった木桶や木樽。こうした生活器具が21世紀の市場に再現したら食生活も変わりそうだ。過剰な清潔さに馴れすぎた現代日本人たちだから、衛生面で先ず文句を言い出しそうだ。



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