礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

『復原聖徳太子伝略』、「敏達天皇十年」の原文

2015-05-29 03:11:31 | コラムと名言

◎『復原聖徳太子伝略』、「敏達天皇十年」の原文

 これまで、聖徳太子については、あまり関心を払ってこなかったが、一昨日、国立国会図書館で、友田吉之助の論文「日本書紀後世改刪説の再検討」(一九六〇)を読み、さらに、岡田諦賢編纂『聖徳太子伝暦訳解』(哲学書院、一八九四)、藤原猶雪編『復原聖徳太子伝暦』(聖徳太子奉讃会、一九二七)といった文献に目を通しているうちに、いまさらながら、この人物には謎が多いということを認識した。そして、この人物に、いくらか関心を抱くようにもなった。
 しかし、当面の関心は、聖徳太子という人物そのものではない。むしろ、次のような諸点である。
一 友田吉之助は、『聖徳太子伝暦』、「敏達天皇」の項における聖徳太子関係の記述は、「旧本日本紀」とも言うべき文献を踏まえおり、その文献が、改刪を経た上で『日本書紀』となったという説を唱えている。この友田説は、はたして妥当か。
二 友田説が妥当だとすると、『聖徳太子伝暦』、「敏達天皇」の項における聖徳太子に関する記述は、なぜ削除されなければならなかったのだろうか。あるいは、誰が、どのような意図で削除したのか。
三 森博達氏の『日本書紀の謎を解く』(一九九九)によれば、『日本書紀』の第二十巻「敏達天皇紀」は、「α群」に分類できるという。すなわち、同巻は、中国人(渡来唐人)の手によって、「正格漢文」で書かれていると認定できるという。では、『聖徳太子伝暦』、「敏達天皇」にはあるが、『日本書紀』、「敏達天皇紀」にはない部分(『日本書紀』で削られたとされる部分)についても、同様の認定がなしうるのか。
四 『聖徳太子伝暦』、「敏達天皇」の項における文章表現と、『日本書紀』、「敏達天皇紀」の記述の文章表現とは、同一内容を記述している部分において、若干の違いがある。この違いを、森氏の視点、すなわち「倭習の有無」という視点から捉えた場合、何か見えてくるものがあるのか、それともないのか。
五 森博達氏は、その著書『日本書紀の謎を解く』において、『日本書紀』には、「後人」による加筆や挿入がおこなわれた可能性について指摘している。しかし、この問題は、加筆あるいは挿入として捉えるよりは、むしろ、『日本書紀』成立時における「改刪」という問題として捉えるべきではないのか。日本書紀改刪説は、江戸後期の伴信友〈バン・ノブトモ〉が、すでに唱えているという。森氏の方法論(音韻論・文章論)は、昔からある改刪説の当否を判断する際、重要な役割を果たしうるように思うが、どうなのだろうか。

 なお、森博達氏の著書『日本書紀の謎を解く』(中公新書、一九九九)については、鵜崎巨石氏が、一昨日(五月二七日)、そのブログ上に、本質を突いた解説をおこなっている。すでに、当該書を読まれた方も、まだお読みになっていない方も、一読されることをおすすめしたい。

森博達著「日本書紀の謎を解く 述作者は誰か」

 ところで、先ほど書名を挙げた『聖徳太子伝暦訳解』、『復原聖徳太子伝暦』は、国立国会図書館にアクセスすれば、自宅にいて閲覧できる。本日は、参考までに、『復原聖徳太子伝暦』から、藤原猶雪によって復原された「敏達天皇十年」の原文を紹介しておくことにしよう。ページでいうと、八~九ぺージ。改行は、原本に従っている。なお、「你」の字は、ニンベンに爾という字の代用ではない。ここでは、この「你」の字が用いられている。

十年【辛丑】春二月。蝦夷数千寇於辺境。天皇召群
臣議征討之事。於時太子侍側。竦耳左右。聞群
臣論。天皇近召太子詔曰。汝意如何。太子奏曰。
少児何足議国大事。然今群臣所議。皆滅衆生
之事也。児意以為。先召魁帥。重加教喩。取其重
盟。放還本路加賜重禄。奪其貪性。天皇大悦。即
勑群臣。召魁帥綾糟等詔曰。惟你蝦夷。大足
彦天皇之世。合殺者斬。合赦者放。朕今遵彼前
例。欲誅元悪。於是。綾糟等怖懼乃到泊瀬川面
三諸山而盟曰。臣等蝦夷。自今以後。子子孫孫
用清明心。事奉天闕。臣等若違盟者。天地諸神
及天皇霊絶滅臣等種矣。自此後時久不犯辺。

*このブログの人気記事 2015・5・29

ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 友田吉之助、「旧本日本紀」... | トップ | 『聖徳太子伝略』、「敏達天... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

コラムと名言」カテゴリの最新記事

関連するみんなの記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 30日以上前の記事に対するトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。