礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

B29、北国の空にも屡々姿を現はす

2017-07-08 01:31:35 | コラムと名言

◎B29、北国の空にも屡々姿を現はす

 昨日の続きである。山路閑古著『戦災記』(あけぼの社、一九四六年一二月)から、「跋(穎原氏書翰)」の後半を紹介する。
 昨日、紹介した部分のあと、改行して、次のように続く。

 B29の姿は、最近北国の空にも屡々〈シバシバ〉現はるゝ事となり、小生寺に起臥して五七日の間にも、学校の半鐘二三度鳴り渡り候。これが空襲警報に候。しかし勿論起きてどうするといふ事も無御座〈ゴザナク〉、たゞ電灯を消すぐらゐの事に候。その点誠にのびのびと心は休まるゝ事に御座候。豚児の病気も急に治癒するには至らず候へ共、まづ安心の状態なれば、小生は三四日中に帰洛の予定に御座候。ただし途中滋賀県に出動中の学生のところに立ちより、暫く滞在のつもりに候へば、京都に帰るのは下旬頃に相成る事と存候。学生と起臥しつゝ七部集〔徘諧七部集〕など講じ度〈タシ〉と存居候。学生も学窓を離れて、たゞ旋盤や鍬のみを手にする生活では淋しき事と存候。
 寺に一週日を過し、暇はありながらごたごたと暮してしまひ候。足の動く机に向ひて、わづかにその日その日の日記を記し、止むを得ざる向きへ手紙など認むる〈シタタムル〉くらゐに候。雨の晴間に蕗〈フキ〉を採りに出し〈イデシ〉事二回、あとは病児のそばに横臥して、そこらの書物を手当り次第に読み候。おかげにて女学校の物象〈ブッショウ〉の教科書を精読、物理化学の新知識を大いに得申〈エモウシ〉候。只今室の一隅の押入の中に、古き帳面の残り紙を探し出し、硯〈スズリ〉の埃〈ホコリ〉を吹き、短き墨を摺りて、この手紙認め候。御安泰の程祈上〈イノリアゲ〉候。  頓 首
  七月十二日       潁 原 退 蔵
 閑 古 詞 宗
    研 北

 潁原退蔵のこの「書翰」は、内容から判断して、一九四五年(昭和二〇)七月一二日にしたためられたものであろう。ということは、『戦災記』の著者・山路閑古は、同年五月末の空襲で家を焼かれたあと、すぐに「戦災記序」をしたため、これを、潁原退蔵ほかの先輩・知人に送ったということである。
 もちろん、この段階で、「戦後」に、『戦災記』を上梓することを考えていたのであろう。

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