礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

終戦の交渉はどこまでも強気で(松岡洋右)

2017-07-12 04:56:03 | コラムと名言

◎終戦の交渉はどこまでも強気で(松岡洋右)

 先月の二九日および三〇日、東久邇宮稔彦著『一皇族の戦争日記』(日本週報社、一九五二)の一部を紹介した。その際は、「ドウリットル空襲」(一九四二年四月一八日)に関わる記事をピックアップして紹介した。
 本日は、同書から、敗戦の年(一九四五年)のちょうど今ごろ(六月、七月)の記事を紹介してみたい。

 六月十八日(月)
 本日は閑院元帥宮〈カンインゲンスイノミヤ〉の国葬が行われ、午前十時から豊島岡〈トシマガオカ〉の葬儀に参列す。戦時中でもあり、また空襲下にあるので、各方面の代表者がきわめて少数参集し、質素に行われた。

 六月二十三日(土)
 午後二時、緒方竹虎、田村真作、太田照彦来たる。緒方の話、次の如し。
「最近、南京の支那派遣総軍は繆斌【みようひん】に対する考えを変え好意を示すようになつた。南京駐在満州国公使中山優〈マサル〉が緒方に語つたところによれば、先般、中山が重慶政府側の要求により、重慶側要人と会見したところ、日本との和平を希望した。また繆斌【みようひん】は、重慶政府正式の代表として日本に来たことが証明された。中山は最近上京し、わが政府当局と会談しており、重慶との和平交渉が再開される情勢にある」

 六月二十四日(日)
 午前十一時、江藤太吉来たり、北京にいる重慶要人を通じての和平交渉につき、東郷茂徳〈シゲノリ〉外相、岡田啓介海軍大将、小磯〔国昭〕前首相と会談したことを話す。
 午後二時、南京駐在満州国公使中山優来たり、上海にいる重慶要人との和平交渉、繆斌のこと、北京にいる重慶要人との和平交渉、ならびに対重慶和平交渉について東郷外相および阿南〔惟幾〕陸相と会見したこと等につき、詳しい話をする。

 六月二十五日(月)
 本夕のラジオは、沖縄軍司令官牛島満〈ミツル〉中将は、最後の将兵とともに玉砕したと放送す。悲痛の極みである。

 七月七日(土)
 午後二時半、木戸〔幸一〕内大臣来邸。木戸は戦局最悪の場合における天皇の御地位に関し、いろいろ話す。
 午後三時、東洋化学食品会社社長鈴木三郎助〔三代目〕の家に行き、先着の中山輔親〈スケチカ〉侯爵、飯田正美、川添清男と会食し、時局打開策を議論す。

 七月十日(火)
 本夕のラジオ放送によれば、本日来襲の敵機は、航空母艦約十隻からなる機動部隊によるもので、延べ千機以上であり、関東平野の飛行場および軍事施設を攻撃したと。

 七月二十七日(金)
 午前十一時、内閣顧問緒方竹虎来たり、対ソ外交のこと、米国内における現在の対日処理についての議論等につき話す。
 午後一時、元外務大臣松岡洋右〈ヨウスケ〉来たり、次のように、米国に対するわが国の最後的決意について話す。
「松岡は若くして米国に渡り、苦学したので、多くの米国人と接したから、米国人の気持をよく知つている。一般的に米国人は傲慢で東洋人を軽視している。だから、米国を相手に交渉する場合、日本が少しでも下手【したで】に出たり、弱気を示したならば、米国はバカにして圧倒的態度に出るから、交渉は失敗してしまう。第二次近衛〔文麿〕内閣のとき、松岡は米国人の気持をよく知つている自分が責任者になつて、日米交渉を行い、これを成功させる考えであつた。そこで、モスクワに行つた時、駐ソ米国大使スタインハートは私の知人であるので、彼とその下交渉をし、自分が日本に帰つてから、正式に米国政府と交渉する計画だつた。しかるに、私が欧州訪問の留守中に、近衛首相が野村〔吉三郎〕駐米大使をして日米交渉をはじめていた。近衛も野村も米国人の心理を知らないので、はじめから協調的弱腰で交渉をしたので、米国からバカにされ、ご承知のようにあの交渉は失敗してしまつた。これは失敗するのが当然だつたのである。
 結論として、米国人に対してはどこまでも強気に出て決して弱気を見せてはいけない。今日、戦局が最後の段階まで来ており、もし近く米国と終戦の交渉をやる場合があつたとしても、わが国はどこまでも強気でやらなければだめだ。最後のへそくりまでない場合でも弱気を示してはならない」
 午後六時、高松宮邸に行き、高松宮〔宣仁〕御夫妻、三笠宮〔崇仁〕御夫妻、朝香宮〔鳩彦〕、竹田宮〔恒徳〕と久振りで会食をする。同邸〔芝区高輪〕は戦災にあわないので、ゆつくりと一同懇談した。

 以上は、『一皇族の戦争日記』の一八八~一八九ページから引用した。日付が飛んでいるのは、引用の際にピックアップしたからではない。もともと、この日記は、このように日付が飛んでいるのである。

 
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