二月、登場したてのトリ貝の殻はまだ薄く、手で簡単に割ることができます。身もまだ小ぶりです。これが徐々に大きくなり貝殻も身に合わせるように厚みを増し、三月・四月頃には成長したトリ貝がネタケースに並びます。中には身の成長に貝殻の厚みが追いつかないものもあって、薄い殻のものは道具で貝を開ける僅かな力で壊れてしまい、割れた貝殻の間からはち切れんばかりの黒いトリ貝が顔を覗かす…などという光景も見ることができます。五月・六月頃にはピークを過ぎ、身は少しずつ小さくなって殻は分厚くなるいわば“なごり”に移っていきます。
* おかみノート 『トリ貝と沈丁花』