全開ギュバア

私は木下侑介といいます。
短歌を詠みます。

「夜にあやまってくれ」(鈴木晴香)について

2016-10-08 13:20:34 | 文章
「夏。
突然振りだした雨に慌てて、通学路を走り家まで急ぐ。
雨宿りをするために立ち寄ったスーパーの軒先で雨を見ている。
どう見てもすぐには止みそうにない強い雨だ。しかし経験上、この強い雨は30分ほどで止み終えるゲリラ豪雨だと気づいてはいる。
傘を買おうか悩んでいると、同じように雨宿りをするために隣のクラスの女の子が駆けてきた。
二言、三言話し、後は沈黙の中で同じ雨を見上げていると、30分もしないうちに雨は止み、彼女は軽い会釈をして走り去っていく。
そんな出来事はやがて特別な意味も持たないで消えていった。
何故なら夏が更に本格的になると、僕は違う女の子と仲良くなっていったからだ」

文章にするとわずかこれだけの出来事を、モノクロの鉛筆画のようなタッチで綴ったサイレントアニメーションを観たことがある。
確か高校生の時だ。
そんな甘酸っぱい出来事とは全く無縁の童貞ハイスクールスチューデントだったにもかかわらず、何故かそのアニメーションにはリアルさを感じた。
この場合のリアルというのは、「こんな事あったかもしれないし、あるかもしれない」という既視感と予感のことだ。

鈴木晴香さんの歌集、「夜にあやまってくれ」は、そんな一夏の雨宿りのような出会い。
その出会いが交差したところで生まれたような印象を受けた。

もう少し早く出会っているような世界はどこにもない世界より(鈴木晴香)

偶然、出会った君を忘れることになったとしても、忘れられなかったとしても、確かに君は世界の不思議さの中、そこにただいた。
どこまでも他人の顔をして。
それはとても寂しい事かもしれないけれど、私はその寂しさは素晴らしいことだと思う。

初夏の君の笑顔に糸切り歯見えたらしんと冷たい世界(鈴木晴香)
ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 短歌の時間 | トップ | 短歌の時間 »

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 30日以上前の記事に対するトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。