及川輝治の政治日記 

及川輝治の政治への挑戦!

フランスの傲慢さー表現の自由をめぐって

2015-01-28 | 日記
「表現の自由」は基本的人権の重要な構成要件です。それは抑圧との歴史的戦いの中で確立されてきました。でも例外はないのでしょうか。あります。それも歴史の中で承認されたものです。その一つが「人種差別的表現」です。ユダヤ人に対するホロコーストの悲劇からの反省です。ナチを賛美することも、欧州の国々では処罰の対象となっています。
 もう一つが宗教ー特にイスラム教に対する例外です。「シャルリー・エブド」に対するテロ事件を契機として、この例外規定が国際的に論争になっています。特にフランスは「宗教への批判は絶対の権利」として、同誌は再びムハンマドの諷刺画を載せた特集号を大量に発行、完売させました。これに対し世界各地でイスラム教徒の抗議行動が起き、アフリカでは死者まで出ました。また人気が10%台まで落ちていたオランド大統領の支持率は40%へと上昇したとも伝えられています。これは奇怪な、また危険な兆候ではないでしょうか。
 しかし、世界の世論は日本を含め冷静に論争を進めています。それはイスラム教とキリスト教との文明・価値観の違い、その多元性を受け入れるべきだと言うことです。15億人と言われるムスリム(イスラム教徒)にとって預言者ムハンマドは自分の心身と一体化しており、預言者への批判は絶対に許せないのです。それが全生活の中に貫かれています。
 アンリ・レビ(仏哲学者・作家)が言論の自由はボルテール以来続く伝統であると強調しても、それは他者に対する不寛容、排除の論理となり、人間差別への道に連なります。極右ルペンと同じ道を歩むのですか。「自由・平等・博愛」であったはずのフランスも、植民地アルジェリア独立運動に見せた残忍な弾圧、近くはリビアへの武力干渉を思い出して欲しい。映画「アルジェの戦い」は大きな教訓になるでしょう。

人命救助に全力をー皆で声を上げよう

2015-01-22 | 日記
 人質解決の期限は23日午後まで。政府の懸命の努力に期待する。わが国では過去一貫して「人命救助」第一に問題を解決してきた。この実績を、原則を貫き解決することを願う。
 政治的思惑など沢山の異見も存在するだろう。しかし、人命尊重に勝る解決方式はあり得ない。みんなで声を上げよう。マスコミに訴えよう。政府を支援しよう。自分の生命に関わる問題として。

日本人人質問題ー近づくギリシャ選挙

2015-01-21 | 日記
日本人二人が逮捕され、処刑が予告される。「フランスはテロとの戦争状態に入った」と仏首相バルスは宣言したが、すでに述べてきたように紛争は世界的規模に拡大している。日本も決して例外ではない。しかも、今回の問題は安倍総理の中東訪問と関わっていることは否定できない。今ここでは安倍総理が言うように「人命救助」を大原則に解決を期待する。

 1月25日 ギリシャで総選挙が行われる。今日は差し迫ったこの課題を見つめてみよう。
 昨年12月 任期満了に伴う大統領選挙(国会議員による)が行われたが、三度の選挙でも法定得票を得た候補がなく、結果 国会解散選挙となる。議員定数300人のうち、政権与党 「新民主主義党」「全ギリシャ社会主義運動」が過半数を保持してきたが、現情勢では野党「急進左派連合」が第1党に躍進する可能性が大きくなっている。昨年5月に行われた「欧州議会選挙」で26.5%を獲得しているからだ。第3党には極右政党「黄金の夜明け」が予想されている。
 現在 ギリシャはEU IMFから財政支援を受けており、その見返りの条件として厳しい緊縮財政を強いられている。その結果、年金減額、公務員のリストラ、増税などが進められ、失業率も25%強、若年層では50%に達する。
 選挙の最大の問題は第1党を予想される「急進左派連合」が財政緊縮策を拒否、債務減免を求める選挙政策を打ち出していることだ。勿論EUはそれを受け入れない。その結果ギリシャのEU脱退という事態に発展する可能性が出てくる。直前になり政党の合従連衡も出てきているが、この基本構造は変わらないであろう。
 「急進左派連合」は文字通り左翼であり、共産党との連立もあり得る勢力が反EU運動に関わることになる。一方ドイツを除く英仏等欧州連合主要国では、極右政党が第一党を占め、反EU運動を展開している。
 欧州連合=EUは危険なるつぼの中にあると言っても過言ではないと思う。25日の結果を注視したい。
 ヨーロッパは1930年代とは異なることを信じたい。

ラ・マルセイエーズよ 今中東ではなく欧州極右と戦え①

2015-01-17 | 日記
 1月13日仏首相バルスは「フランスはテロとの戦争状態に入った」国民議会で報告、兵士一万人警察五千人を配置する。その日の議会では「国歌マルセイエーズ」が歌われる。第一次世界大戦終結時の1918年以来のことである。翌14日大統領オランドは空母シャルル・ドゴール船上で「イスラム国への空爆作戦に向かわせる」と宣言する。
 これがフランス革命、「人権宣言」の国の驚くべき対応である。ラ・マルセイエーズを愛する大統領オランドはブッシュ2代目=ピエロと揶揄される存在となった。映画「カサブランカ」で涙したシーンを思い出す。でもあの地はフランスの植民地であった。そのことが今回のテロ問題と深く関わるのである。
 何故かくも自由・人権の国とは異質な政策が出てきたのか、そこにはフランスが、EUが、欧州が、そして世界が抱える危機が存在するからである。
 このためにはフランス・欧州の政治・経済・社会の現状の分析が必要である。
 まず第一にフランス・欧州での選挙による各国国民意識の動向である。

① フランス国民議会選挙(2012年6月)
    社会党          7.618.326  29.35% 
    国民運動連合(保守党)  7.037.268  27.12%
    国民戦線(極右)     3.528.663  13.60%

② 欧州議会議員選挙・フランス(2014年5月)
    社会党          2.649.202  13.98%
    国民運動連合       3.942.766  20.81%
    国民戦線         4.711.339  24.86%

 国民議会と欧州議会の選挙を単純に比較することに問題はあるが、いずれも国民投票である。国民議会では社会党は定数577名中280名が当選、極右政党マリーヌ・ル・ベンの率いる国民戦線は2名の当選である。
 それが欧州議会選挙では社会党が1/3弱に惨敗、国民戦線は第一党に躍進する。この傾向は、この間行われた地方議員選挙でも続いている。次期大統領・議員選挙は2017年に行われる。
 社会党の方針は、かかる政治状況下で打ち出された。ネオナチ、ル・ベンとの戦いを放棄し、出口の見えないイスラム国、イスラム教徒との戦いに社会党の命運を賭けたのであろう。

 このような政治状況の激変はフランスだけにとどまらない。欧州議会選挙ではイギリスの独立党、デンマーク人民党の極右政党が第一位を占め、オーストリア、ハンガリー、スウエーデンでも極右政党が高い得票率を示した。欧州連合に反対する勢力である。イギリスキャメロン首相は、これらの勢力に押され、EU脱退をめぐる国民投票を、2017年までに行う約束をしている。(続く)

紛争地帯ー中東から仏・そして世界へ

2015-01-08 | 日記
七日パリでテロにより12名が殺害される。そして本日も2名の警官が襲撃された。事態の全貌は全く不透明である。
 犯人が「イスラム国」かアルカイダ、タリバンか特定されていないが、フランスがアメリカとともに空爆を続けているイスラム国との関係が大である。事実彼らはフランスへの敵意をむき出しにしている。無差別的空爆で一般市民に被害が及んでいる。
 戦争は本来「宣戦布告」により国家対国家の関係で始まる。しかし中東での紛争は、まったく様相が異なる。事実「イスラム国」には国家がない。地理的領域はない。
 世界各地の特定の集団が、また個人が「イスラム国」への忠誠を誓えば、その集団また個人が構成の一部、構成員となる。近代的な国家を否定するところに「イスラム国」の最大の特徴がある。このため「イスラム国」の兵士は世界各国から集められる。自国に留まる兵士たちは、その地域で戦争を行う。西欧諸国は、それらの紛争をなべて「テロ行為」と規定し、戦争とは認めない。従って紛争終結の条件を持っていない。殲滅させるか、泥沼化の二者の選択となる。
 パリの事件は、イラク、シリアの紛争の一部であり、本質的に同一のものである。
 同質の紛争は、世界各国どこで起きても不思議ではない。遂に世界はすべて紛争地域となったと自覚すべきだ。
 「イスラム国」の構成の原動力となっているのがイラクの「スンナ派」だと言われる。彼らはシリア打倒を目指すアメリカに協力して、武器を獲得する。今やアメリカ製兵器は、アメリカ人に向けられている。イスラム国はスンナ派を超えて、アラブ世界の新しい政治理論として拡大を続ける。勿論イスラム国が行っている様々な問題を評価するものではない。しかし 最大の元凶はアメリカであることは板がいない。
 
 最後にパリの新聞社が襲撃された事件と「言論の自由」の問題である。今回の事件がこの問題にすり替えられているように思えてならない。ナチス賛美、民族差別など、歴史を踏まえて一定の制約が行われている。そこで「ムハンマド」をパロディー化する問題だ。世界のムスリムがその信仰上強く抗議している事実をなぜ認めないのか。これは言論の自由の問題でなく、宗教上の根幹に関わる問題だ。キリスト教徒が、神のパロディー化を認めたとしてもイスラム教徒の異議を否定はできない。