tamiのブログ

このブログ・・・妄想ー空想大好きな私が、勝手に楽しんで・・・勝手に文字にしています。ボロボロですが(笑)

2018 バレンタイン -1

2018-02-14 08:16:00 | イベント 関係の お話
家が隣同士・・・

その家の間に、大人が両手を伸ばせば互いの家の壁が触れそうな程に近い・・・小路がある。

人は通らない・・・何故なら行き止まりだから・・・奥は多少広い・・・なので、ソコには数多くのベンチが置かれていた。

商店街・・・その始まりにある二つの老舗といえる家・・・
人の出入りも多く、それぞれの目的で出入りしている。


『ハルちゃん!臭い!』
窓から顔を覗かせた妹のクレハが叫ぶ。
『ごめんごめん(笑)。だけど今日から塗り直すって、言ったよぉ!』
『 ・・・』
-勝った(笑)-

うつ向きながら、そう思ったコハルは 作業を始めた。
今迄は汚れたベンチを綺麗に洗っていた・・・今日からペンキで色を塗る事にしていて、朝から一人で始めていたのだ。

今は真っ赤な色に塗る・・・カラフルな色に変わっていく・・・それは玩具の椅子のように・・・途中から考え込む・・・それは模様を入れたくて・・・

飽きたコハルは途中から、お菓子の絵を加えたり花柄にしてみたり・・・次の模様を考える・・・

スケボーに座り、それを転がしながらベンチに色を着けていた・・・膝へ腕を乗せて考える・・・頬杖をして眺めていた姿になった。

『寝てんなよ?』
何処からか聞こえる声に頷くと、静かにロープを引く・・・玩具のような小さな台車に色んなペンキの缶を乗せスケボーに繋いでいたのだ。

空いた缶に刷毛を置くと、膝へ腕を立て顔を乗せてベンチを眺める。
『だから・・・寝ろと言ってねーよ』
新たな声に分かっていると頷く彼女だった事に新たな ため息があり、それは増えていった。

『コハル!』
『分かってる・・・考えてるの・・・よ』
『 ・・・』
眠そうなコハルの声音・・・バン!と激しく近場で音がして驚きバランスを崩した。

地面へ 尻餅をつく・・・転がりそうになるが抱き込まれた事に苦笑いをした。
『危ないだろ』
『驚かすから・・・あっ!服が汚れるからっ・・・』
『それはいい。それより向こうの色を変えろ・・・』

『どれ?』
『花柄は嫌だ・・・』
『空色だけじゃ(笑)楽しくないと思ったから・・・』
『変えろ!』
『(笑)花がね、空に向かってる感じ・・・・何で?』

『 ・・・(笑)わざとか?』
『違うけど(笑)・・・
全部一緒なのが可愛くなくて・・・飽きちゃって(笑)』
『柄はいらない』

『そっか・・・だけど・・・ベンチを替えるから乾くまで触らないでくれる?(笑)』
『 ・・・』
見返したコハルに嫌そうに見返すサクヤ・・・我慢だと笑うコハルを眺めた。

『入り口のベンチを・・・ね・・』
『止めとけ(笑)。それをしたら奥にまで人が入り込むぞ・・・』
『そうかぁ・・・(笑)可愛いと思うんだけどなぁ・・・水玉とか・・・ハートとか・・・』

『それより仕上げ・・・終わってねーだろ・・・行って仕上げてこい』
『 ・・・』
『ハル(笑)行けんだろ・・・』
『(笑)残りも頑張るね』
そっと離れたコハルは、ベンチへと色を塗り込んで行くのだった。


腕を組んで佇む・・・ため息をしながら路地を眺めるサクヤがいた。
サクヤの親友 ケイトが肩を組んで一緒に眺め・・・驚きは最初だけ・・・少しずつ笑みに変えていく・・・その隣でも笑うトウキがいた。

『(笑)今年も賑やかな色だよね・・・今年も柄付きかぁ(笑)可愛い可愛い・・・』
『飽きねーよな(笑)・・・』
『同じってないな』
新たな一人が笑いながら呟いた。


『(笑)通して下さーい・・・』
後ろから声がして誰だと見返すが、観察はするなと彼らの間を通り抜けて行った。
『ハルちゃーん(笑)来たよー!』

彼女の家へ叫びながら路地へ入り込む・・・その子の服を掴み、うつ向きながら静かに歩くマナミもいて可笑しくて眺めていた。

塀から顔を覗かせたコハルの笑みに、二人は手をふって一番奥へ歩いて行った。

『ハル! 戸から出ろ!』
『あ ・・・』
突然叫んだサクヤに驚く・・・唸る声と一緒に塀の向こうへ落ちたようだった。

慌て駆け出すサクヤが、ベンチに上がり塀から中を覗いた・・・

『飛び越える冒険は無理と覚えろよ・・・』
『今日は出来ると思って・・・驚かせるから落ちるのよ?』
『 ・・・いい加減、諦めろ』

『コハルちゃん!(笑)怪我はない?』
『ないよ(笑)今、出るね』
『おっけ(笑)ハートのベンチて待ってるねー』
『(笑)おっけー・・・・トウヤ君とケイト君も居たの?』
サクヤの隣から覗く顔が増えた事に微笑んだ彼女の呟き・・・

『居たよー(笑)。チャレンジ精神は、相変わらずだねー』
『(笑)こっちも、ソコもベンチがあるから出来ると思うのよ・・・出来そうなんだけどサクが叫ぶから驚いちゃって(笑)越えられないのよねー』
『 ・・・』
サクヤが、押し黙る・・・

『何で(笑)してみたいの?』
笑みながらケイトが聞いた。
『サクが簡単にしたから(笑)』
『(笑)君は女の子だよ』
『 ・・・クレハちゃんは出来ますよ?(笑)』
『 ・・・』
話ながらケイトが彼女に声をかける・・・答えながら路地へ出る扉がある場所に歩くコハルだった。


笑い声は耐えない彼女達の会話・・・それでも話し声は少ししか聞こえなかった。
互いに高校生でもある二人・・・それぞれの友達と、この路地で集まり時間を潰す。

遊びに何処かへ出るより、友達が遊びに来る事も多い・・・一番奥のベンチがある場所には屋根があり、天気の悪さも関係なく居座れる。
陽当たりもいいので居心地はよく、互いの兄弟達も利用していた。


コハルの気分で模様替えは始まる・・・色んな道具をも使い毎回変化させるコハルだった。

絵を描く事が好きなコハル・・・それは小さな頃から描いていた・・・楽しげな姿にコハルの祖父とサクヤの祖父がベンチを準備し、一つずつ数を増やし始めて今に至る。

出口付近は、その祖父たちが使う事が多い・・・だから小さなテーブル迄が置かれていた。
カラフルな場所に笑いながら、通りを歩く人たちもいたのだった。


『コハル(笑)』
『ハズキちゃん(笑)お帰りなさい・・・』
『ただいま(笑)。ついでに塀も塗ったら良かったろ』
『 ・・・今度するの(笑)』

『電話きたぞ(笑)。学校の、仕上げ・・・行ってなかったんだな・・・』
『 ・・・(笑)塀の絵は自由でい?』
関係ないと苦笑いをした彼女は話題をかえた・・・

『呼び出されるぞ(笑)・・・親より俺が言われたんだぞ?』
『邪魔して、ごめんなさい』
展覧会があり美術部で始めたが、不意に描くのを止めたコハル・・・それは仕上げにも行かなくなり時々、学校にも行かなくなる事が増えた。

話題も拒否する・・・聞いても答えず話も聞かない・・・姉のナノハと兄のハズキが同じ担任だった事で何かと連絡をしていたようだった。

『コハル・・・話してみ?』
『 ・・・描くのは楽しいよ(笑)』
『学校の美術室にある絵だそうだ・・・なんでソレを仕上げない?』
『塀の方が楽しいから(笑)』

『(笑)今日は聞けるまで待つよ・・・』
『 ・・・』
両手を掴んで話す兄の声は優しいが・・・有言実行タイプであり、一番上の兄より声にしたら絶対にする・・・そんな言葉を日々呟き自分を鍛えるようにもしていた兄・・・

その兄の呟きだ・・・理由が知りたいのだと聞くまで放さないのだろうと思え項垂れた。

『話したくない理由は?』
『 ・・・』
『嫌なんだなって・・・皆も思ってコハルに声にもして来なかったけどな・・・
今回は兄弟の我慢の限界は越えてる(笑)他から集まる声に聞き飽きてる・・・アキにもだぞ? だから諦めて話せ。
話したくないなら学校に行くんだ!』

どうするという目は真剣な眼差しで、見ないようにしてもグッと顔を掴み直して聞いてくる。

『絵画展が近いから、出して欲しいそうだ。
同じ季節の写真とビデオは、預かったが・・・それを仕上げて出してもいいそうだ』
『あれは燃やしたいの・・・』
『なんで・・・せっかく・・・』

『もうないから・・・』
『 ・・・描くのを止める?』
『 ・・・中がないの・・・私でもない・・・
にぃ・・・出したくないの・・・』
辛く悲しそうなコハルの目に驚いた・・・

『合作だったのか? 題名・・・何て言う?』
『 ・・・ないよ』
『 ・・・当時の絵画展の応募は聞いた・・・コハルの言葉を足して・・・
題材に合う素材は、もう無くなってる? あれは途中からコハルは描いてない?』

『 ・・・』
妹が押し黙る・・・それでも全部が正解と思えずに見つめた。
『何処が違う?』
間違いだろう箇所を声にする・・・

『にぃ・・・』
『ん?』
『替えてもいいかな・・・』
『それなら描ける?』
兄に言われて少し考えるように押し黙っていたが、諦めたように静かに頷くコハルにホッとした。

『間に合った(笑)。明後日、部員へ話して始めるそうだ』
だから学校へ行けと笑う兄に苦笑いをするしかなかった。




窓から眺め、ひたすらデッサンしていた・・・題は関係なく描き、それをキャンパスヘ描いた。

久しぶりの人物画・・・だからか静かに視線を集める事に苦笑いをする・・・それでも少しずつ自分の世界に入っていった・・・

彼女しか知らない絵・・・人物画ではあるが辺りへ書き込むモノが増えていき何だと部員が声にする。

『んー(笑)。頑張る姿?』
『それが花?こっち・・・』
『風景にも見えるね・・・』
『(笑)全面に推し出さない事にしようかと・・・』

思ったと笑み、その重なりは増えていった事に皆が驚いた。
コハルは題のままに表現はしない・・・丁寧な描きはあれど、そのままに色は付いても来ない。

仕上がって始めて、全体の雰囲気が題へはまる・・・その時々で変化する色合いは学生という彼女の場所から飛び出していると講師までが言っていた事を思い出した。

何かしら入賞はする・・・コンテストに応募すればポスターにもなる・・・それでも名は一切出さず学校名と学年で表示されて終わる。

合作をと講師から言われ先輩と共に始める・・・大きなキャンパスだから余計に二人で話し込み、色合いはコハルが出していった。

先輩のアイデアの上手さが嬉しくて楽しくなった彼女もいた・・・先を夢見る先輩が照れながら賞状を見せる。
笑みを浮かべたコハルは良かったと楽しかったと声にしただけだった。


今回は・・・それぞれにと言われてもいたが、数校の美術展という事で遊びも交じり色んなモノへとアイデアを出していった。

デッサンと仕上げは違う人で・・・それも楽しいと皆は始めるが、それが仕上がり次の下地が出来上がった途端に体調を崩したコハル・・・残る一枚は 一人で仕上げていいと部長に言われ休みをとった。

学校へ来てみれば色は付けられ、自分のではない仕上がりだった・・・自分のイメージからは かけ離れていて呆然とした。

部長に声をかけられる・・・
『趣向をかえた?』
『私じゃ・・・』
『ん?誰かと合作にしたのか?』
『してません・・・』

『誰も触ってないはずだよ?
まぁいい(笑)完成だろ?出そう・・・』
『 ・・・仕上げてないので』
『ん?これで?』
二人で話をしていると、講師がやって来た・・・

『藤堂さんの絵じゃないな(笑)』
『(笑)今回は合作が多くて・・・』
『君は知るだろ(笑)。
合作でも彼女が描いたという部分は必ず残るが・・・これは全くない。
出展するなら藤堂の名は出すな(笑)、出来はいいが本人じゃない作品を偽って出す行為は私も好きじゃない』

『すみません・・・帰ります』
『直さないのか?』
部長の近藤が聞いた。
『 ・・・』
押し黙るコハルは会釈して静かに出ていった。

『部長くん(笑)。藤堂の腕が欲しくて入賞を狙う子がいたんだね・・・
騙し討ちは駄目だ・・・残念だよ』
『まさか・・・』
『タッチから見て新人の中の誰かだろうな・・・』
『本来のデッサンは覚えてるので、写真とかビデオで撮って保管しときます(笑)』

『 ・・・自分を伸ばしたいからと・・・誰かを真似たりは練習ならいいが・・・人の作品を潰す行為はな・・・
それは焼却したらどうだい?』

『先生、俺だって好きじゃありませんよ・・・
それに全面に人物画でしたが、表に人物像を出す絵は一度もないし・・・』
『モデルは?これ・・・』

『運動部です・・・たぶん。
特定もしないで交ぜてると言ってましたから・・・』
『これは明らかに誰かと気づく(笑)、塗った本人を探してコレは渡せ。
拒否したら捨てるんだ』

『作品を!』
勿体ないと焦り講師へ言った。
『自分が描いてないモノを自分のだと主張出来るか?』
出来ないと項垂れた部長に笑み、優しく頭を撫でて教室を出て行った。

事情を知らない顧問は、連絡をするが彼女が絵に触れる事はなかったのだった。