尾崎光弘のコラム 本ときどき小さな旅

本を読むとそこに書いてある場所に旅したくなります。また旅をするとその場所についての本を読んでみたくなります。

農村男子児童「楽しいこと」の三番目は「勉強 工作」(昭和十八年)

2017-04-21 14:03:49 | 

 前回(2/14)は、戦時下農村児童の科学技術への関心興味の実際を知るために、牛島義友著『農村児童の心理』(巖松堂書店 一九四七)を繙いてみることを決め、その「序」と「目次」を紹介しました。目次をみると全体が大きく三篇に分かれています。今回は、第二篇「農村児童の生活」(第六~九章)の第七章「村の子供の生活観」の第一節「楽しい事」を取り上げます。その理由は、私にはいかに戦時下であろうと子供にとって興味・関心のありかたは、進路を展望する際の選択肢を育てるものだと考えるからです。この第七章で使用される作文は、昭和一八年の夏~十月末にかけて、著者らによる調査研究のさいに実施された複数検査のうちの一つです。また調査地は、≪出来るだけ純農村を選ぶ事として、東京都内でも八王子から更に一時間程乗合自動車に乗つ行く小山、加住、恩方の村々や、五日市町附近のの増戸国民学校、或は更に秋川を遡つた純山村檜原村を訪ねた、又神奈川県大山山麓の高部屋村や、長野県、飯山から更に数十粁(キロメートル)離れた大田村、外様村等の純農村≫です(前掲書 二八頁)。また被検者はおよそ千名の小学校五、六年生男女です。(引用は漢字のみ現代ふうに変えています)

 

≪村の子供達は自分達の生活を如何に見てゐるであらうか、その日常生活の中に如何なる喜びを見出し、何を苦痛に感じてゐるであらうか。之をみるために「楽しい事と苦しい事」の題の下に作文を書いてもらつた。この作文は前の智能検査等を行つたのと同一の学童達に課したものである。従つて約千名の作文である。この作文の中で子供達は、各々が自分の立場から楽しい事或は苦しい事と思ふ事を書き列(ツラ)ねてゐた。従つて子供らしい単純な考へ方や表面的なものゝ見方が強く現れてゐて、必ずしも生活観とか、生活の反省と言ふ程のものではない。併しその内にも農村生活の姿が反映してゐるので、その点から眺めてゆく事とする。

 先づ彼等が楽しい事、苦しい事としてあげてゐる事柄を項目別に大別してみると次の如くなつた。尚一人が一項目をあげるとは限らず、二つ三つの事をあげてゐるものもある。

第一節 楽しい事

 先づ楽しい事と苦しい事を書かせたが、楽しい事の方を詳しく書き、挙げられた項目も多くなってゐる。前者の総数九百十六に対して、苦しい事は五百七十九に過ぎない。之は初めに楽しい事を詳しく書いたので書く処がなくてやめたものもあるかもしれないが、大体に於て、楽しい事の方が色々と思い出されて書き易いらしい。

 楽しい事として実に雑多な事があげられてゐるが、大別すると次表の如くなる。

 即ち運動や、遊びが最も多く、次に休日やお祭日の事が書かれてゐる。その他飲食や旅行に関した事が楽しかった想い出になるのは当然だろうが、他面、勉強、工作、仕事等の中にも数多くの楽しみを見出してゐる事は注目に値しよう。次に各項目別に詳しく考察を進めよう。

楽しいこと

                            女       計

勉強工作・・・・・・七六       四八       一二四

仕事・・・・・・・・・・二一       三六       五七

運動、遊び・・・・・一七八  二〇七    三八五

休日・・・・・・・・・・八一   八七       一六八

旅行・・・・・・・・・・二一       三〇       五一

飲食・・・・・・・・・・一六       二九       四五

自然・・・・・・・・・・六          二一       二七

良い事をする・・・四          一七       二一

生活・行為・・・・・一三        三         一六

人事・・・・・・・・・・三           九         一二

文化・・・・・・・・・・六           四         一〇≫

(牛島義友著『農村児童の心理』巖松堂書店 一九四七 一七〇~三頁)

 

 やはり「勉強工作」が楽しいことだと指摘した男子の七六人(*)は、同じく「楽しいこと」として指摘した総項目数の四二五人のうち、「運動、遊び」、「休日」の項目に次いで三番目に多い数です。割合にすると約十八パーセントです。次回は「勉強工作」の内訳を紹介していきます。もっと具体的にわかるはずです。

(*)本書一七一頁には「七六〇」人と書いてありましたが、あとの頁には七六人とその内訳が書いてありましたので、数字「七六〇」を誤植と判断し「七六」人に訂正してあります。

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