徒然草紙

読書が大好きな行政書士の思索の日々

水原秋櫻子集

2017-05-16 15:17:29 | 日本文学散歩
 俳句で辿る日本の原風景。一言で言えば、このような印象でしょうか。とにかく、日本の美しい風景が、読んでいくそばから目の前に広がっていきます。改めて日本人で良かったと思わせる一巻です。

 水原秋櫻子は、良い旅行吟というのは、その場所に行ったことのない人でも、その句を読むことでそこに行きたくなるものだ、と言っています。けれども、この言葉は旅先で作られた句だけに限られたものではありませんね。句集すべてからそのような感じを受けます。読んでいてわかりやすいし、気持ちがいいです。ただ、あとがきにも書いてありますが、句集に載せられている風景のほとんどは既に見ることができなくなってしまっているのが現状でしょう。淋しいかぎりです。
 
 行春や水草のみなる池の面
 水無月や青嶺つづける桑のはて
 最上川秋風簗に吹きつどふ
 鯉とゐる疾き魚影や石蕗の花
 
 秋櫻子句集には、歴史上の人物や出来事についても詠まれているものがいくつかあって興味を惹かれます。句の前書を読まなければわからないものがほとんどですが、それと知ったうえで読むと味わい深いものがあります。

 おもはざるむかしがたりや田植時
 
  秋櫻子が土方歳三の孫と語った時の句です。
 
 むなしさに冬麗の天残りたる
 
  安土城天守閣址
 
 山茶花や戦記の末に散りにほふ
 
  これは前書に真田幸村戦死のところ、とあります。
 
 田を植ゑて伽羅御所残るものもなし
 
  藤原秀衡の館跡。
 
 源平の合戦から戦国時代、さらには西南戦争まで、水原秋櫻子は俳句の中に様々な時代を詠み込んでいます。こういった俳句にはあまり馴染みがないものですから、ひどく新鮮に感じられました。
 
 最期に心に残った句をひとつ。
 
 鶴とほく翔けて返らず冬椿
 
 石田波郷を悼んで詠んだ句です。哀切な思いが伝わってきます。
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