「歴史の憧憬」

人生は旅・歴史は時間の旅。川村一彦。

『古事記が描く説話の憧憬』全61回(楽しい古事記) 16・天照大神と須佐之男命の説話

2016-11-07 04:18:25 | 古事記が描く説話の憧...
『古事記が描く説話の憧憬』全61回(楽しい古事記)
16・天照大神と須佐之男命の説話

イザナキ神は禊(みそぎ)から生まれた数々の神々の子神にたいそう喜ばれ、中でも三貴公子には特別な喜びと神々の未来を託す「分(ぶん)治(じ)」を示された。
アマテラス大神には天上界を治めなさい。次にツクヨム神(月読命)には夜の世界を治めなさい。次にスサノヲ神には夜の世界を治めなさい。
イザナキ神より委任された三貴公子の中でスサノヲ神だけが身形もだらしなく、長い間、泣きわめき、青々とした山々はその水分が取られてその涙になり、枯れ山になってしまい、海、川の水量は減り干し上がってしまう程であった。
そのため地上は荒れ果て悪神がはびこるようになった。そこでイザナキ大御神はイザナキ神に泣く理由を尋ねられた。
「母が恋しく、母の根之堅洲国に会いに行きたく思い泣いております」とスサノヲ神は答えた。
イザナキ大御神は怒られて「お前はこの国に住むな」と言って追放をされた。
追放されることになったスサノヲ神は一言挨拶をした思いで、姉のアマテラス神に挨拶をして根之堅国にいこうと高天原に上がられて行った。
その時に、高天原は山、川が大きく揺れ動き、国土が地震の様に震えた。
これを知ってアマテラス神はきっと高天原を奪い取りに来るに違いが無いと、神々に告げられた。
そこでスサノヲ神の行為を阻止せんと男神の髪型に左右の手には勾玉を多数の紐に貫いた幾連にも巻き付け、鎧の身を固め五百本入りの矢入れを装着、腕には威勢の良い竹の鞆を付けて弓は一杯張りつめて、固い地面にくい込むように踏み入れ、完全武装でスサノヲ神を待ち受けられていた。
スサノヲ神に向かって「何のわけあって天上に参った」と問われた。
スサノヲ神は答えて「私には邪心もございません」と言い訳けがましく、アマテラス大神に地上の国に行くので挨拶に来ただけだと説明をした。
それならば邪心のないことを、また潔白を証明をするように言った。
「それならば互いに約束を守る誓約をしましょう」そこで天の安の河を間に挟み、まずアマテラス神が先にスサノヲ神の十拳の剣を三つの折り、口に含み嚙み吐き出し、息の霧に出現した神の名前がタギリビメ神・イチキシマヒメ神・タキツヒメ神の三女神が生まれた。
次にスサノヲ神がアマテラス大神の左髪に巻いてある大きな勾玉を、玉の音さややかに響かせ、口の中に含ませて、嚙み砕き生きよい良く息の霧の中から出現した神が、皇継となるマサカツアカツカチハヤヒアメノオシホミミ神(天之忍穂耳命)、次にアメノホヒノ神、次にアマツヒコネ神、次にイクツヒコネ神、次にクマノクスビ神の五神が生まれた。
誓約が終わってアマテラス大神はスサノヲ神に向かって言った。「先に生まれた三女神はあなたの子です。後から生まれた五神は私の子です」と区別をされた。
この二人の神の誓約が何を意味するか理解しがたいが、互いに身の潔白を示す意思表示かも知れない。また天上界、地上界万物に周知させる「公言・契約」の意味が込められている。
アマテラス大神とスサノオ神の対峙は武力を持ても辞さない確執を表している。アマテラス大神がスサノヲ神を迎え討つときの形相はその武装を見ても窺(うかが)える。
またその武具にも神話世界から古代の世界に推測できるものがある。

★追放されることになってスサノヲは「アマテラス大神にことの次第を言ってから根之堅洲国に行こう」と高天原に登って行こうとした時に山や川の自然界が揺れ動き国土の皆は恐れ震えた。
この様子を知ったアマテラス大神は「弟は高天原に来るには善意で来るわけがない高天原を侵略しようして来るに違いがない」と言われ武装をすることに決意された。
アマテラスは心身構えて、髪型や左右の髺(みずら)、男装の出立で左右の手に勾玉を数珠(じゅず)紐(ひも)に通して巻き付けて、鎧に背中には千本入りの矢入れを背負い、左腕には威勢の良い竹の鞆を付けて、弓は腹が見える程に振り立てて、固い地面をしっかと踏みつけ勇ましくスサノヲを待ち受けていた。
「何の用あって上がって来たのか」と厳しい口調で問うた。
「私の何の邪心もありません。イザナキ大神に自分が泣きわめくのを問われ『亡き母上の国に行きたいと声を上げないているのです』と申しました。そこでイザナキ大神の言葉があって、お前はこの国に住むな」と言われ追放されました。
そこで事の次第を申したいと思い参上しました。
アマテラス大神は「それならばお前の心が潔白であると言う事が分るでしょう」
スサノヲ神は提案をして「誓約(うけい)の誓いを立て子産ませましょう」と申した。
こうしてそれぞれが天の安の河を挟んで誓い言を立てた。
アマテラス大神はスサノヲ神の十拳を取って三つに折って、その十(と)拳(つか)を天真名井の中に振り漱ぎ、口の中に嚙み砕いて勢い良く吐き出した息の霧の中に出現した神が多紀理毗売(たきりびめ)・市寸島比売(いちきしまひめ)命(みこと)・多岐都比売(たぎつひめ)命(いのち)の三女神が生まれた。
続いてスサノヲ神がアマテラ大神スの左側の髪に巻いてある大きな勾玉を多数束ねた数珠状の玉の天真名井の中に振り漱ぎ口の中に含み、嚙み砕き勢い良く吐き出した。
息の霧の中から出現した神の名は、正勝吾勝速(まさかつあかつはや)日天之(ひあめの)忍(おし)穂(ほ)耳(みみ)命(みこと)。
次に右の髪に巻いてある数珠玉を噛み砕いて出現した神の名は、天之菩卑(あまのほひ)命(みこと)。次に髪飾りから天津(あまつ)日子(ひこ)根(ね)命(みこと)。
次に左手の数珠玉から活津(いくつ)日子(ひこ)根(ね)命(みこと)。次に右手の数珠玉から熊野久須毗(くまのくすび)命(みこと)が出現し合わせ五神。
誓約が終わってアマテラス大神がスサノヲ神に向かって「後から生まれた五神の男子は、素は自分の物から成った。
だから我が子です。先に生まれた三女神の素はあなたの物から成ったので、あなたの子です」と告げられた。

★この場面からアマテラス大神の天つ国とスサノヲ神の国つ神の棲み分けが生じる。天つ神と国つ神の誓約によってアマテラス大神に男子の五神、スサノヲ神に三女神が生まれた。
イザナキ神・イザナキ神のように男女の交合によって子孫を作ることなく、誓約と言う約束ごとで後継を決めることは『古事記』の記述の中では特異な場面である。三女神については九州は宗像大社に祀られている三座大神である。
九州の氏族の勢力を表わし、アマテラスの子の天之菩卑(あまのほひ)命(みこと)は出雲地方の国造、天津(あまつ)日子(ひこ)根(ね)命(みこと)は瀬戸内海から大和にかけての豪族の国造、祖神になっている。
アマテラスとスサノヲの誓約は融和を表わす行為として示されたのかも知れない。

●誓約・神に祈って成否や吉兆(きっちょう)を占う事。(神代時代)☆誓約の説話・解釈・
誓約の儀式、所作は複雑で記述を省略、イザナキ大神より授けられた、天照大御神の勾玉とスサノヲ命に授けられた剣に誓って約束される。
勾玉(まがたま)から生まれた五男神は素は自分の物から成ったと天照大御神は宣言、先に剣から生まれた三女神はスサノヲ命の素の物から生まれたのであなたの物と神子に区別を付けた。★歴史をたどれば、時代に生きた、先人の喜怒哀楽の生きざまが見えてくる。

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