戸山の日々

東京の大学に勤務する教授の日常を綴る
  うつりゆくよしなしごとを書きつくる
       ブログの文の狂ほしきかな

蕎麦と和歌懐紙と

2007-08-20 | Weblog
昼食は昨日のうちに、
宿所近く、古川町商店街の中ほどにある
「虚無蕎望 なかじん」を予約したが、
14:00からしか空いていないと言われたので、
遅い食事にする。

我々家族以外、他に客はなく、
カウンターの一番奥の席に案内される。
まず鱧と夏野菜の天麩羅にビールを注文。
主人の中村一臣さんが
目の前で天婦羅を揚げるのを楽しみながら、
ゆっくりと飲む。
荊妻と娘は粗挽き蕎麦、私はせいろを頼む。
デザートにとった
「そばの実アイス」も美味しかった。

「なかじん」はなかなか
気の置ける蕎麦屋ではある。
ご主人眼光鋭く、志の高いことは
店の隅々までスキ無く行き渡っている。
小滝橋の「傘亭」を
ぐっとモダンにしたような雰囲気
と言ったらよいだろうか。
(かなり違うか)

うーん、蕎麦を塩で試してみる
というコンセプトは悪くない。
「五郎八」あたりも、
出す塩に一工夫すれば、
もっといいのになあと思う。

15:00過ぎになったが、
錦の市場に移動。
今夜の食材を少し購入する。
それから、寺町通りを北上し、
パンを買ったり、古書肆を訪ねる。

B堂では、和歌懐紙を何枚か見せてもらった。
驚いたのは、飛鳥井雅章の一首懐紙があり、
それが三行三字で書かれていたことだ。
雅章の懐紙は比較的数が多いが、
飛鳥井家は三行五字にしたためるのが定式だ。
B堂にある雅章の他の懐紙を広げてみるが、
やはり三行五字。
ご主人も、今まで気がつかなかったとおっしゃる。
いかし、手は雅章で間違いはない。
飛鳥井家を集めている、
KO大学のSさんに教えてあげることにしよう。

冷泉為泰の一首懐紙を見せてもらった。
ウブな表具で、たいへん感じのよいものである。
冷泉家の乞巧奠を観にきた記念に、
購入することにする。

続いて、志満家に寄る。
昨夜の公演の折、ご主人にお目にかかったので、
ご挨拶せねば。
古筆切は少なかったが、短冊がかなり出ていた。
有栖川宮歴代のものなどを少し見つくろう。
実際に折ってしたためたものを探す。
「三つ折り半字掛かり」の
「三つ折り」については説があるが、
実際に折った近世の遺品を見るかぎりは、
全体を三つに折り畳んだものばかりである。

古筆切は、伝東常縁筆の新古今注断簡を1枚だけ買う。
こういうものに手が出てしまうので、
ついぞ名葉は集まらない。

志満家の店内で短冊を見ている男性、
どうも見覚えがある人だなあと思ったら、
Uさんであった。
たしか京都で大学の先生をしているはず。

Uさんは戸山大学の出身者で、
中国文学(唐詩)や中国美術史(絵画)を修め、
北京にも国費留学した人である。
私が大学の教員になる前に勤めていた高校に、
漢文の非常勤講師として出講していた。
書画骨董に詳しく、蒐集家でもあり、
仲良くしていた。
本当に久しぶりにお目にかかった。

さて帰りがけに、また古川町商店街に立ち寄って
野菜や肉、果物などを購入する。
宿所には「グリル鍋」まで完備しているので、
今夜は焼肉にする。

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