女王蜂を聴いていた
強い女の歌をアヴちゃんは歌う
決別と決意の歌だ
戦うために生きていることを
自覚するためのハングリーな歌
女にも野心はある
どうしても譲れないものもある
一本通った筋を
どんなに傷付いても守ることが出来れば
天使にもファム・ファタルにも
神様にだってなれるよ
今朝早くに家を出た
何があっても1日を乗り切りたくて
誰にも負けたくなかった
携帯電話のディスプレイに表示された
本当か嘘か分からない無責任な言葉より
自分の目と耳と感覚を便りに
すがり付くものなどなくても
地に足をつけて
受け入れて必ず前に進みたかった
人を傷付けてまで欲しいものなんてない
それは私の答えでもあります
朝の霧
光る湖岸の
浮かぶ野鳥ののどかな景色は
小さなセンテンスの慰めよりも
ずっと心を豊かにする
似合いもしない帽子で隠した表情は
暗く疲れていた
爽やかな月曜日の朝だというのに
そそくさと仕事に出ていく背中は
自信に満ち、大きく見えた彼のものではないみたいに
別人のように見えました
一番大切な背負うべきものが
滑り落ちてしまったのか
私が欲しかったものは
こんな情けない背中ではない
こんなとって付けたような表情ではない
無味乾燥な眼差しではない
どんなに反発し合っても
悪態をつかれたとしても
その目には光が宿っていたのに
幾年も経ったみたいに
一気に老けてしまったね
ただのくたびれたオジサンが
私の横を通り過ぎて行ったので
ああ
もうこの人の何をも
私は欲しがらないし羨むこともなく
憧れも尊敬もしないのだと思った
失望をしたの
ふてぶてしい程の自信は
もうひと欠片も感じられない
男の人の自信を支えるのは仕事です
それを指図する女など三流です
身体を明け渡したからといって
男のプライドを奪っていいはずがない
ましてや価値ある身体ですらない
大人でしょう
しゃらくせーのよ
コソコソしなきゃならない理由を
言えるはずがない理由を
上手く隠した気になって
何をはしゃいでいるのですか
あなたの秘密は下らない
二人きりの秘密が
そんな姿になってまで欲しかったのですか
彼女は
俯きながら笑みを浮かべていましたが
それは優越感でした
幸せな微笑みではなく
自分の勝ちだと誇示したいだけの
無意味な勝負の景品のような
少しも羨ましくない笑みでした
私はやっと我に返りました
私ね
仕事も綺麗になることも
色んなこと頑張っているの
それは
2時間も3時間も
胸さらけ出しながら立ち話するために頑張った訳じゃない
サインを送り合い
コソコソ落ち合うためでもない
人目に触れない場所で秘密のデートをするためでも
ファストフード店で
頬杖つきながら話をするためでもない
そんな10代のママゴトみたいなやりとりを
年食った男女がするなんて
一体どんな悪夢なの
嫉妬して苦しくなるかと思っていた
でも、冷静になってみれば
私の知らない、あれから、の時間には
羨む要素など一つもないのだと分かりました
目の前に居るのに
目を見て微笑み挨拶を交わすことが出来ないなんて
業務連絡ですら慎重になり
軽口や小さな話題を挟むことが出来ないなんて
見つめることも出来ないなんて。
あるのはただのラインのトーク画面だけ
いちいち、
あれを見て、これを見てと
指図されなきゃ同じものが見られないのは
心奪われるものの感性が
もう圧倒的に食い違っているからでしょうね
なぜあなたは
私の吐いた煙をわざわざ見つけてしまうのでしょう
雨上がりの空や
名残雪を見上げる瞬間を
一瞬でも共有できた日々がありましたが
それらはきっと
携帯画面を確認しなければ気付けない別の景色に
取って換わられてしまうのでしょうね
あなたには幸せで居て欲しかった
柔らかく笑う顔が好きだった
たまに見せる優しい表情は
仕事を終えた時の自信に満ちた顔は
本当に素敵でした
でもそんな暇はもうありませんね
ただ気まずい夕暮れ
彼女からの連絡を待つだけの
居場所のない沈黙だけがある夕暮れ
縛られた犬みたいなあなたは
ただの
魅力なんか何もない
生活の匂い以外何もないオジサンでしかない
あなたらしい
突拍子のない自由なところが
決まりきった
センスの欠片もない退屈に変わる時
きっと今よりも老けて見えるのでしょうか
酒飲んで玉打ったっていいの
自由でさえいれば
誰かの後について回る
情けない姿だけは見たくなかったのにな
安心してよ
好きだなんてもう
これっぽっちも思いませんから。
どうせもう
暇さえあればラインする、
女々しい人になっちゃうんでしょ
気にする価値すらないじゃないの
私は
簡単に媚びたりはしません
理性を失いたくないからです
経験豊富なことだとか
手慣れていることで優劣をつけるなんて
あんた女子高生か
ましてそれで人をバカにするとか
品性下劣にも程がある。
100円でもお釣が来る程度の女ですと
特価のプライスカード下げて
何を勝ち誇っているのですか
安売りなんかしてたまるか
明日の夕方倉庫の奥で
手伝うフリして一緒に居てねと
口約束を交わしたのかな
今日は目論見が外れたね
だって
仕事にちっとも身が入らないんだもの
帰れる訳がないじゃない
ついに仕事放棄して会いに行こうとしたのに
皆に呆れられ止められたね
待ち合わせなんか思いつき。
待たせて、いるだけでしょ?
待つマヌケも相当だけれど
てめーの仕事のケリもつけられないなら
あんた必要ないんだよね。
二人して
追い縋り偶然を作り上げ
沢山の嘘を付きながら
人より早く老けていきなさいな。
可愛い可愛い恋人たち
また明日ね。
強い女の歌をアヴちゃんは歌う
決別と決意の歌だ
戦うために生きていることを
自覚するためのハングリーな歌
女にも野心はある
どうしても譲れないものもある
一本通った筋を
どんなに傷付いても守ることが出来れば
天使にもファム・ファタルにも
神様にだってなれるよ
今朝早くに家を出た
何があっても1日を乗り切りたくて
誰にも負けたくなかった
携帯電話のディスプレイに表示された
本当か嘘か分からない無責任な言葉より
自分の目と耳と感覚を便りに
すがり付くものなどなくても
地に足をつけて
受け入れて必ず前に進みたかった
人を傷付けてまで欲しいものなんてない
それは私の答えでもあります
朝の霧
光る湖岸の
浮かぶ野鳥ののどかな景色は
小さなセンテンスの慰めよりも
ずっと心を豊かにする
似合いもしない帽子で隠した表情は
暗く疲れていた
爽やかな月曜日の朝だというのに
そそくさと仕事に出ていく背中は
自信に満ち、大きく見えた彼のものではないみたいに
別人のように見えました
一番大切な背負うべきものが
滑り落ちてしまったのか
私が欲しかったものは
こんな情けない背中ではない
こんなとって付けたような表情ではない
無味乾燥な眼差しではない
どんなに反発し合っても
悪態をつかれたとしても
その目には光が宿っていたのに
幾年も経ったみたいに
一気に老けてしまったね
ただのくたびれたオジサンが
私の横を通り過ぎて行ったので
ああ
もうこの人の何をも
私は欲しがらないし羨むこともなく
憧れも尊敬もしないのだと思った
失望をしたの
ふてぶてしい程の自信は
もうひと欠片も感じられない
男の人の自信を支えるのは仕事です
それを指図する女など三流です
身体を明け渡したからといって
男のプライドを奪っていいはずがない
ましてや価値ある身体ですらない
大人でしょう
しゃらくせーのよ
コソコソしなきゃならない理由を
言えるはずがない理由を
上手く隠した気になって
何をはしゃいでいるのですか
あなたの秘密は下らない
二人きりの秘密が
そんな姿になってまで欲しかったのですか
彼女は
俯きながら笑みを浮かべていましたが
それは優越感でした
幸せな微笑みではなく
自分の勝ちだと誇示したいだけの
無意味な勝負の景品のような
少しも羨ましくない笑みでした
私はやっと我に返りました
私ね
仕事も綺麗になることも
色んなこと頑張っているの
それは
2時間も3時間も
胸さらけ出しながら立ち話するために頑張った訳じゃない
サインを送り合い
コソコソ落ち合うためでもない
人目に触れない場所で秘密のデートをするためでも
ファストフード店で
頬杖つきながら話をするためでもない
そんな10代のママゴトみたいなやりとりを
年食った男女がするなんて
一体どんな悪夢なの
嫉妬して苦しくなるかと思っていた
でも、冷静になってみれば
私の知らない、あれから、の時間には
羨む要素など一つもないのだと分かりました
目の前に居るのに
目を見て微笑み挨拶を交わすことが出来ないなんて
業務連絡ですら慎重になり
軽口や小さな話題を挟むことが出来ないなんて
見つめることも出来ないなんて。
あるのはただのラインのトーク画面だけ
いちいち、
あれを見て、これを見てと
指図されなきゃ同じものが見られないのは
心奪われるものの感性が
もう圧倒的に食い違っているからでしょうね
なぜあなたは
私の吐いた煙をわざわざ見つけてしまうのでしょう
雨上がりの空や
名残雪を見上げる瞬間を
一瞬でも共有できた日々がありましたが
それらはきっと
携帯画面を確認しなければ気付けない別の景色に
取って換わられてしまうのでしょうね
あなたには幸せで居て欲しかった
柔らかく笑う顔が好きだった
たまに見せる優しい表情は
仕事を終えた時の自信に満ちた顔は
本当に素敵でした
でもそんな暇はもうありませんね
ただ気まずい夕暮れ
彼女からの連絡を待つだけの
居場所のない沈黙だけがある夕暮れ
縛られた犬みたいなあなたは
ただの
魅力なんか何もない
生活の匂い以外何もないオジサンでしかない
あなたらしい
突拍子のない自由なところが
決まりきった
センスの欠片もない退屈に変わる時
きっと今よりも老けて見えるのでしょうか
酒飲んで玉打ったっていいの
自由でさえいれば
誰かの後について回る
情けない姿だけは見たくなかったのにな
安心してよ
好きだなんてもう
これっぽっちも思いませんから。
どうせもう
暇さえあればラインする、
女々しい人になっちゃうんでしょ
気にする価値すらないじゃないの
私は
簡単に媚びたりはしません
理性を失いたくないからです
経験豊富なことだとか
手慣れていることで優劣をつけるなんて
あんた女子高生か
ましてそれで人をバカにするとか
品性下劣にも程がある。
100円でもお釣が来る程度の女ですと
特価のプライスカード下げて
何を勝ち誇っているのですか
安売りなんかしてたまるか
明日の夕方倉庫の奥で
手伝うフリして一緒に居てねと
口約束を交わしたのかな
今日は目論見が外れたね
だって
仕事にちっとも身が入らないんだもの
帰れる訳がないじゃない
ついに仕事放棄して会いに行こうとしたのに
皆に呆れられ止められたね
待ち合わせなんか思いつき。
待たせて、いるだけでしょ?
待つマヌケも相当だけれど
てめーの仕事のケリもつけられないなら
あんた必要ないんだよね。
二人して
追い縋り偶然を作り上げ
沢山の嘘を付きながら
人より早く老けていきなさいな。
可愛い可愛い恋人たち
また明日ね。