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2017-06-19 16:36:41 | 日記
九大農学芸誌 (Sci.BuIl. Fac. Agr.,K yushu Univ.)
第53巻第1-4号41-44 (1999)
トカラ列島由来の在来ヤギにおける遺伝形質の変異について
西村正太郎・林固まき- 小林貴彦
岡野香* 岩元久雄
九州大学農学部畜産学第二講座
・九州大学農学部附属農場
(1998年10月29日受付, 1998年11月6日受理)
Genetic Variation of the Japanese Native Goats
Introduced from Tokara Islands
Shotaro NISHIMURA, Maki HA Y ASHlDA, Takahiko KOBA Y ASHI,
Kaoru OKANO* and Hisao IWAMOTO
Laboratory of Functional Anatomy of Domestic
Animals,F aculty of Agriculture,K yushu
University,F ukuoka 812-8581,J apan
'University Farm,F aculty of Agriculture,K yushu University,
Fukuoka 811-2307,J apan

一言
九州の南西諸島と長崎県下の島今では小型の在来ヤ
ギが肉用として飼われてきた.これらの在来ヤギに関
し,形態的および生理的諸形質に基づいた遺伝的特徴
について,鈴木ら(1967) はトカラ列島,奄美群島,
五島列島.長崎県西海岸,壱岐,種子島,屋久島,上
三島ならびに琉球諸島において詳細な調査を行った.
これらの地域で飼われている在来ヤギは多かれ少なか
れザーネン種の導入による雑種化が認められている.
鹿児島県トカラ列島において肉用家畜として飼われ
てきた小型の在来ヤギは通称トカラヤギと呼ばれる.
トカラ列島では1933年に中之島にザーネン種雌が導入
されたのを皮切りに, 1955年以降にもザーネン種の導
入があり,在来ヤギの雑種化が進んだ.しかし,宝島
と小宝島は離島としての孤立性が著しかったために,
ヤギの雑種化がほとんど進まなかった(鈴木ら, 1967;
高田, 1986). 一般にトカラヤギと称される在来ヤギ
についての学術的に厳密な定義は現在のところないよ
うである.従って,これら2島の集団で確認された形
質をもってトカラ列島在来ヤギの本来の特徴と考える
のが妥当であろう(高田, 1986).
現在,九州圏内においてトカラ列島由来の在来ヤギ
J
b
を相当数保有する機関として,鹿児島大学,鹿児島市
平川動物公園,九州大学などがある.本在来ヤギを肉
用家畜あるいは実験動物として利用するためには,一
定の能力,形質を備えた品種としての確立が急がれる.
また,特異的な形質を発現する遺伝子を資源として保
存することも非常に重要である.しかし, トカラ列島
由来の在来ヤギが宝島・小宝島で認められた形質をど
の程度保持しているかは不明で、ある.
今回は,前述の機関で飼育されているトカラ列島在
来ヤギを用いて, 4つの外貌形質,すなわち毛色,角,
肉髭および副乳頭を観察し,鈴木ら(1967) の宝島・
小宝島のものとの比較検討を行った.
なお,本調査にあたり懇意なるご協力を賜った,鹿
児島大学農学部の高田正治教授,平川動物公園の永井
隆至園長および同酒匂猛氏に深謝します.
材料と方法
鹿児島大学,鹿児島市平川動物公園および九州大学
の3機関で飼育されているトカラ列島の在来ヤギを用
いた.鹿児島大学と平川動物公園ではそれぞれ1998年
9月9日と同10日の時点で飼育されていた個体につい
て,九州大学では1990年から1998年の聞に飼育されて
いた個体について調査を行った.調査項目は毛色,角,
-41ー
42 西村正太郎ら
肉髭および副乳頭の4形質であり,鈴木ら(1967)の
分類に従って,それらの有(+)無(一)について判
定した.毛色は優性遺伝子で、ある白色遺伝子(I)の
有無により有色(ii)と白色(I)に分け, 肉君主およ
び副乳頭については片側にのみ出現したものは0.5と
数えた.
また,形質の遺伝的均質度を見るために,鈴木ら
(1967)の方法に従って表現型均質指数(Phenotypic
homogeneity index: H.I.)を以下の式により算出
した.
=2 [叫1一位
ここでQは形質対の+のものの頻度, (1-Q)は
のものの頻度, nは形質対の数, ヱはn個の形質対
全ての総和を示す.この指数は形質の多様性が最も高
いときに最小値Oをとり,逆に形質の均質度が最も高
いときに最大値1をとる.
結果
調査した頭数および4つの形質の有無についての結
果を鈴木ら(1967)の記載法に準じてTable1に示
す.各機関における在来ヤギの外貌形質の特徴は以下
のとおりであった.
1)鹿児島大学の在来ヤギ
すべての個体が有色,有角であり,肉彰を持たなかっ
た.副乳頭は雄2頭(100.0%)すべてで,雌12頭中7
頭(58.3%)で両側にそれぞれ1本が認められた.雌
において副乳頭は3頭(25.0%)で認められず,片側
に出現する個体は2頭(16.7%)であった.
今回調査した4つの遺伝形質において, H.I.は雄
で1.000,雌で0.778,全体で0.796となり,比較的高
い値を示した.
2)平川動物公園の在来ヤギ
平川動物公園の個体も毛色,角および肉髭の有無に
ついては鹿児島大学のものと同じであった.副乳頭は
雄5頭中4頭(80.0%)で,雌16頭中8頭(50.0%)
で両側にそれぞれ1本認められた.副乳頭は雌2頭
(12.5% )で全く出現せず,雄1頭(20.0%),雌6頭
(37.5%)で片側に認められた.
表現型均質指数(H.I.)は雄で0.910. 雌で0.785.
全体で0.807となり,最も高い値を示した.
Table 1. Distribution of the genetic characteristics of Japanese native goats in the public institutions
in Kyushu.
Coat colors Horns
No.of 一一「一一一一
1nstitution
goats 11 pp P
+ +
Kagoshima Univ. 14 14 。14 。
Male 2 2 。2 。
Female 12 12 。12 。
Hiraka wa Zoo 21 21 。21 。
Male 5 5 。5 。
Female 16 16 。16 。
Kyushu Univ. 99 67 32 99 。
一-..匂・ー
Male 33 22 11 33 。
Female 66 45 21 66 。
Takara-jima Is.事67 57 10 63 。
ホDatafrom Suzuki et al. (1967)
Dominant white gene; i: Recessive color gene.
P: Dominant hornless gene; p: recessive horn gene.
W: Dominant wattles gene: w: Recessive wattles gene.
Wattles Supernumerary
teats
W ww
+ +
。 ト一一一 14 10 4 。2 2 。
。12 8 4 。21 15.5 5.5 。5 4.5 0.5 。16 11 5 。99 87 12
-・・・。.-.,-- ・ ーー・・-------- 33 24.5 8.5 。66 62.5 3.5
3 臼67 。
在来ヤギの遺伝形質の変異43
3) 丸州大学の在来ヤギ
九州大学の個体もすべて有角であり,肉髭を持たな
かった.毛色は有色のものが雄33頭中22頭(66.7%),
雌66頭中45頭(68.2%)であった.雄の11頭(33.3%),
雌の21頭(31.8%)は白色の毛色を有した.副乳頭は
雄22頭(66.7%),雌59頭(89.4%)で両側にそれぞ
れ1本出現した.副乳頭を全く持たない個体は雄6頭
(18.2%)で,雌にはいなかった.片側に副乳頭を持
つ個体は雄5頭(15.2%),雌7頭(10.6%) であっ
た.
遺伝形質のH.I.は雄で0.587,雌で0.733,全体で
0.675となり,鹿児島大学および平川動物公園の個体
群と比較して低かった.
考察
鈴木ら(1967) によると,ヤギの毛色は有色と白色
に大別される.有色は黒色,褐色,黒褐色およびチョ
コレート色に分けられるが,その遺伝様式は現在のと
ころはっきりしていない.白色は1個の優性遺伝子
(1)によって発現し,本在来ヤギに見られる白色の個
体はザーネン穫による雑種化の影響によるものとされ
る(鈴木ら, 1967). 一方,角は1対の常染色体性劣
性遺伝子(pp) により,肉髭は1個の優性遺伝子
(W)により発現し,いずれも性とは無関係である.
副乳頭の遺伝様式は不明である.長野および群馬で
調査されたザーネン種では副宇印頁が認められず,宝島・
小宝島における在来ヤギではすべての個体で両側に副
乳頭の存在が確認されている(鈴木ら, 1967). この
ことから純粋な在来ヤギは両側にそれぞれ1本以上の
副乳頭を持つ,すなわち合計4本以上の乳頭を持つ個
体であると推察され,その発現にも遺伝子が関与して
いると思われる.今回の調査では,副乳頭は九州大学
の個体群で出現率が87.9%と最も高く.鹿児島大学の
ものは71.4%,平川動物公園のものは73.8%であった.
この形質には3機関の個体群いずれもザーネン種によ
る雑種化の影響があるものと思われる.
鈴木ら(1967)の宝島・小宝島での調査結果を本研
究と同じ4形質についてH.I.を再計算したところ,
0.830という値を得た(Table1).本調査における平
川動物公園の個体群は鈴木ら(1967) の宝島・小宝島
の調査結果に最も近い値を示した.一方,九州大学の
個体群はH.I.値が0.675とやや低かった.この結果は
毛色が白色を呈する個体の割合が九州大学の個体群で
高かったことが影響しているものと考えられる.しか
し,副乳頭の出現率は九州大学の個体群が高く,宝島・
小宝島の個体群に最も近かった.
以上のように,今回の調査で鹿児島大学,平川動物
公閏および九州大学で飼育されているトカラ列島由来
の在来ヤギがいずれも鈴木ら(1967)の宝島・小宝島
の在来ヤギよりも遺伝的均質度が下回っていることが
明らかになり,ザーネン種を導入したことによる雑種
化の影響が少なからずr残っているものと推察された.
現在,これら3機関だけではなくトカラ列島において
も厳密な意味で遺伝的形質が均一な個体のみをトカラ
ヤギと称しているわけではなく,一部雑種化の影響が
見られる個体についてもその呼称を用いる場合が多い.
今後, トカラ列島在来ヤギを遺伝子資源として保護す
るためには,その遺伝的形質の特徴を明確に定義し.
育種・選抜を行う必要があろう.
要約
鹿児島大学,鹿児島市平川動物公園および九州大学
で飼育されているトカラ列島在来ヤギで毛色,角,肉
髭の有無および副乳頭の数について調査し,従来報告
されている宝島・小宝島の本ヤギの結果(鈴木ら,
1967) と比較した.毛色は鹿児島大学および平川動物
公園で飼育されている個体すべてが有色であったが,
九州大学のものでは67.7%であり,残りの32.3%は白
色であった.調査した全個体が有角であり,肉髭を欠
いていた.副乳頭の出現頻度は鹿児島大学で71.4%,
平川動物公園で73.8%,九州大学で87.9%であった.
また,表現型均質指数(H.I.)は鹿児島大学で0.796,
平川動物公園で0.807,九州大学で0.675となり,平川
動物公園の個体群で宝島・小宝島の0.830に最も近い
ことが分かつた.以上のことより,これら3機関で飼
育されているトカラ列島在来ヤギには雑種化の影響が
見られ,宝島・小宝島の個体群とはやや異なる遺伝的
形質を有することが明らかになった.
文献
鈴木正三・林田重幸・山内忠平・野沢謙・田中一栄・
渡辺誠喜・西中川駿・庄武孝義1967 日本在
来家畜に関する遺伝学的研究. 2. 南西諸島の在
来ゃぎについて.日畜会報, 38: 443・452
高田正治1986 トカラヤギの実験動物としての有用
性.草食家畜用実験動物, 11: 84-95
44 西村正太郎ら
Summary
A Japanese native goat “Tokara goat" has been bred in Tokara islands, south of
Kyushu island in Japan,a nd keeps peculiar characteristics,n amely colored coat,h orns,
supernumerary teats, no wattles and so on. Using phenotypic homogeneity index
(H.I.), the goats bred in Kagoshima Univ. (KGU), Hirakawa Zoo in Kagoshima city
(HZK) and Kyushu Univ. (KSU) after introducing from Tokara islands were examined
about those peculiar characteristics. Both of male and female goats had small or middle
sized horns but not any wattles. All goats in the KGU and HZK populations were
covered with their characteristic colored coat,b ut 32.3% in the KSU with white coat instead
of their own coat,s upposing Saanen breed crossing. Supernumerary teats were
observed at 87.9% of the population in the KSU, 73.8% in the HZK and 71.4% in the
KGU. From these results,H .I. was calculated at 0.807 in the HZK,0 .796 in the KGU
and 0.675 in the KSU and indicated the genetic variation differed from the native goats
(H.I. =0.830) bred in Takara-jima and Kodakara-jima islands of the Tokara.
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