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2017-07-11 12:11:23 | 日記
Microsurgery による再建
-歴史、切断肢指の治療、血管損傷の治療
担当 土田芳彦
マイクロサージャリーの歴史
マイクロサージャリーは20 世紀に発達した医療技術であるが、その背景には①手術顕
微鏡の開発、②手術器具の開発、③血管縫合法の進歩、④手術戦略の改良などがある。
マイクロサージャリーは血管外科が到達した最高峰であった。1897 年J.B. Murphy に
より世界で最初の血管縫合が行われたが、現在の血管縫合法の基礎となっている3 点支
持法は1902 年にAlexis Carrel が開発したものである。彼は3 点支持により端端吻合を
行った。1908 年彼は臓器移植法を開発し、C.C. Guthrie とともに動物の後ろ肢を切断し、
また再接合することに成功した。彼はフランス生まれであるが米国に住みニューヨーク
のロックフェラー協会で研究を重ねた。1912 年「血管縫合法と移植技術の開発」に対し
てノーベル生理医学賞が贈られた。
第2 次世界大戦を契機に血管外科はさらなる進歩を遂げた。抗生物質の開発が手術感
染症を抑制し、より積極的に手術が行われ、より洗練された手術手技が確立されていっ
た。しかし直径2,3mm の血管吻合はまだ通常のレベルとはならなかった。
1960 年、血管外科医のJules Jacobson が手術顕微鏡を用いて1.4mm の血管吻合に成功
したと報告した。彼はVermont 大学病院で働いているときに、耳鼻咽喉科の医師が顕微
鏡を使用して手術しているのをみて血管吻合に応用したのだった「microvascular
surgery」とは彼が始めて使用した言葉なのである。
宝石職人の道具が形成外科に応用され、繊細な摂子や持針器の開発へとつながってい
った。マイクロサージャリーの適応拡大はおびただしい臨床的、実験的研究を生んだ。
1962 年Malt and McKhann は世界で始めて10 歳男児の切断された上腕の再接合に成功
した。そのころ上腕レベルの血管は通常の技術で吻合は可能であったものの、顕微鏡手
技は用いられることがなかったのである。
1963 年のGoldwyn において、Laub and White は動物の皮弁手術に成功した。顕微鏡手
技がなかったならばおそらく成功していないだろう。また1963 年にKleinert and Kasdan
は母指不全切断の再血行化に成功した。さらに1965 年、日本(奈良)の玉井と小松によ
り切断母指の再接着術に成功して以来、マイクロサージャリーは急激に発達するが、こ
れを支えたのは繊細な糸と針の開発である。
また、北海道から奈良医大の玉井先生のところに3週間の血管吻合修行に行き、北海
道で始めての切断指再接着術を施行したのは薄井正道札幌医大前助教授である。
マイクロサージャリーの父 - Harry Buncke 先生
日本マイクロサージャリーの父 - 玉井進先生
北海道マイクロサージャリーの父 - 薄井正道先生
Harry Buncke 先生 玉井進先生 石井清一前教授と薄井正道先生
1964 年、Harry Buncke は世界で最初にウサギの耳の完全切断の再接着術に成功したこと
を報告した。彼が1mmの血管吻合に成功したことは、マイクロサージャリーの世界にと
って画期的なことであった。なぜなら1mm という細さの血管は手指の動静脈の太さとほぼ
同じであり、筋肉や血管への栄養血管とも合致していたからである。彼は独自の道具を開
発し縫合糸も自作し使用した。彼の仕事はStanford University の実験室で始まり、今Harry
J. Buncke Microsurgical Research Laboratory があるDavies Medical Center へと受け
継がれていった。1966 年、かれは第2 の重要な論文を発表した。それは猿の足指を手に移
植するものであった。この2 つの報告はマイクロサージャリーの扉を開いたのであった。
事実1969 年にBuncke はDonald McLean とともに遊離大網移植を頭皮欠損の患者に成功さ
せている。マイクロサージャリーの臨床応用はこの後に急速に発展した。事実Buncke and
McLean の遊離大網移植の成功の後にDaniel and Taylor が下肢に遊離そけい皮弁を成功さ
せた。多くの組織移植が体中のあらゆる場所に現在行われている。
マイクロサージャリーに必要な道具
縫合糸
血管吻合に使用する縫合糸は主に9-0,10-0,11-0 の3 つである。直経が2mm 以上であれ
ば9-0、1mm から2mm の場合は10-0、1mm 以下の場合は11-0 を使用する。すなわち、指
切断再接着には通常10-0 ナイロンを使用し、末節部の再接着に限り11-0 を使用すると
いうことになる。
手術顕微鏡
手術顕微鏡の接眼レンズは双眼となっており、術者と助手がそれぞれ独立して見れるよ
うになっている。光ファイバーによって術野を明るく照らし、ビデオカメラによって看護
師および他の医師が術野を観察できるようになっている。
手術器具
マイクロ用の鉗子、剪刀と持針器、血管クランプなどなど。
切断指再接着術の世界
切断された肢指を再接着することは、外科医にとって長年の夢であった。その夢が現実
のものとなったのは1962 年Malt and Mckhann による切断上肢再接着の成功と、1965 年、
小松と玉井による切断母指再接着術の成功である。それ以来、切断指再接着術は急速な発
展を遂げ、現代日本のマイクロ医によるその生着率は80~90%以上となっている。
しかし外傷性切断再接着術のゴールは生着に成功することではなく、機能が獲得される
ことである。単に切断部位が再血行化することは、最接着術が成功したとは言わない。患
者にとっても外科医にとっても、両者の目的は有用な機能の獲得であり、無用な機能の指
再建には意味がない。
現在、再接着術というのは多くの部位で行われる。たとえば指、手、前腕、足、耳、頭
皮、顔、口唇、ペニス、舌などである。また切断は労災から自己切断まで多くの原因で起
こる。再接着術の適応というのは、多くの要因を考慮して総合的に決めなければならない。
切断指玉井zone 分類
切断指について論ずるためには部位分類を
認識していなければならない。
ここに玉井のzone 分類を図示しておく。
再接着術の適応
切断指を再接着するか、断端形成するかには多くのファクターが関与している。たとえ
ば①損傷部位と程度、②合併損傷、③受傷機転、④年齢、⑤職業、⑥モチベーション、⑦
阻血時間などである。
1、損傷程度からみた適応:鋭利切断は挫滅や引き抜き切断より成功しやすく機能も良
い。挫滅切断では挫滅があっても末梢側が温存されている場合はデブリドマンを施行する
ことにより再接着術は可能となる。一方、引き抜き切断で血管が広範囲に挫滅されている
場合は、たとえ血管移植をおこなっても生着は困難な場合も多く、たとえ生着してもその
機能は不良となるのでその適応は慎重となるべきである。多重切断は予後不良となり適応
から外れる。
2、切断部位、レベルからみた適応:母指切断また多数指切断は再接着術の絶対適応であ
る。単指切断の場合は、玉井zone2,3 のように、切断が遠位であれば機能予後は良くなる
ので再接着の適応となるが、あまりにも遠位では技術的に難しくなり適応から外れる。一
方、基節部での切断は一般的に術後機能が不良であり、労働者など手を良く使用する患者
においては適応を慎重とする。上肢は下肢より再接着する傾向にあるが、足部の感覚は戻
りづらく、機能回復は悪い。多くの患者で義肢の機能は再接着肢より機能が良い。
3、阻血時間からみた適応:阻血時間というのは組織の血行がなく酸素供給がない状態
を示す。阻血時間が長くなれば、その予後も悪くなる。温阻血のほうが酸素消費量も多く、
活性酸素も多く発生するので、冷却にて保存する必要がある(しかし凍らせてはいけない)。
通常は常温下で6-8 時間の阻血が限界とされ、0℃~4℃に保存された場合は12~24 時間の
阻血に耐え得るとされているが、長時間の阻血後でも再接着に成功する症例も多く報告さ
れている。
4、社会的要因からみた適応:若年者では如何なる切断も再接着の適応となる。しかし
60 才以上の高齢者の場合では、神経再生が一般的に不良で長期間のリハビリが必要なこと
を考慮して、患者自身に強い意思がある場合にのみ適応とする。また、女性や接客業では
外観上から単指切断でも適応とする。労働者の場合は単指切断を再接着の適応から除外す
ることもある。
色々な要因を加味して、おのおのの患者はそれぞれ個別に再接着の適応を決める必要が
ある。一般的に以下の例は再接着の適応が高い。それは①多指切断、②母指切断、③手部
切断、④小児例である。次の患者は議論があるものの、患者を適切に選択し、モチベーシ
ョンが高ければ予後は良いと期待できる。それは①母指以外の単指切断、②環指の引き抜
き切断である。
そして次の患者は再接着の適応とならない。
① 前腕近位切断で阻血時間が6 時間を越える
② 生命を脅かす合併損傷がある。
③ 多部位切断
④ 高度汚染
⑤ 全身合併症がある
⑥ 自傷行為、精神病患者
再接着術の概要
再接着は単に生物学的に生着するのみでなく(単についているのみでなく)、その機能の回復が
重要となる。すなわち疼痛のない、よく動き、知覚も優れた指を再建することが必要である。単に生
着するだけならば動脈と静脈を吻合すれば事足りる。しかし優れた機能を獲得する為には全ての
組織を丁寧に再建しなければならない。骨を強固に固定することと、腱(屈筋腱、伸筋腱)をしっか
りと再建することが術後早期のリハビリテーションの為に必須の事項である。さらに知覚再建に重
要な神経も丁寧に吻合されなければならず、場合によっては神経移植が必要となる。すなわちあ
らゆる手段を駆使して、全ての組織を一期的に可能な限り完全な形で修復することが重要であ
る。
☆切断部位の評価と前準備
切断部位は洗浄しデブリドマンを行う。拡大鏡を用いて、損傷範囲を評価し、再接着術
に適しているかどうか判断する。
切断指再接着においては温阻血で6 時間、冷阻血で12~18 時間などと言われている。しかし、
たいていの切断指は冷却保存されているので急がなくても良いなどと考えてはいけない。どのよう
なトラブルがあるかわからない。順調に手術が進むなど誰が保障できないのである。
救急処置室における洗浄処置は阻血時間短縮に有効である。腋窩神経ブロックを施行し十分
な洗浄をおこなっておく。
切断末梢部の展開: 術者は切断指を持って患者に先立ち入室し、顕微鏡下に切断末梢部の
展開を行う。これは時間の短縮もさることながら、貴重な時間を無駄にしていないという認識が術
者の心理的焦燥を軽減する効果をもつ。時間制限がある手術において、時間的浪費を感じさせる
周囲の行為を術者は許容することが出来ない。術者の焦燥は不良な結果につながる。
切断中枢部の展開: 通常は切断指末梢部が終了したところで、患者に麻酔がかかり、
そして術野の消毒と被布がけがなされているはずである。術者は間髪要れずに切断指中枢
部の展開に入る。ここで展開とは、デブリドマン、動脈と神経の剥離同定、骨断端の剥離
展開と形成、伸筋腱・屈筋腱の剥離展開である。背側皮下静脈は血液が充満していないと
わかりづらいので、動脈を吻合してから行う。
☆骨接合
もし再接着術が可能だと判断したなら、まず最初に骨接合術を行う。骨折部は血管神経
の端端吻合のために1cm までの短縮を許容する。短縮することにより静脈移植が不要とな
り、術後の血行障害もほとんど起きなくなる。
骨固定にはC-wire (K-wire)固定あるいはplate 固定が行われる。玉井zone 3 以遠には
主にC-wire cross pinning 固定が用いられるが、骨癒合が遅く長期間抜去できないために
感染を併発するなどの欠点がある。そこで最近は末節骨に対するscrew 固定を考慮してい
る。
中節骨基部あるいは基節骨の切断の場合はプレート固定を選択することが多い。通常チ
タン合金のプレートとスクリューを骨背面にあてがい固定する。利点は皮膚を貫かないこ
と、より固定性が強いこと、術後の可動訓練がしやすいことである。一方欠点は手術時間
が長くなること、骨展開がより大きくなることである。
☆腱縫合
骨固定が終了したら次に背側の伸筋腱を縫合し、続いて屈筋腱を縫合する。伸筋腱は薄
く、しかも挫滅されているので力学的に十分な縫合をすることは困難である。こういった
場合におざなりの縫合をするのではなく、伸筋腱は術後療法の要となるので出来るだけ腱
移植によるaugumentation を加えた方が良い。
屈筋腱も術後の早期可動域訓練に耐えうるように、力学的に確実な方法を選択する。多
くの縫合方法があるが、現在最も汎用しているのはYoshizuⅠ法(Kessler-Tsuge 法)で
ある。
これらのマクロ手術が終了したら、いよいよ顕微鏡下のマイクロサージャリーである。
☆動脈吻合と神経縫合
手術顕微鏡を用いて動脈吻合を行う。指動脈はおおよそ1mm であり、6-8 針縫合する。
血管クランプをはずし勢い良く出血が認められるようなら吻合に適している。
動脈は指動脈の太い側を少なくとも1 本は確実に吻合する。太い側とは通常第1,2.3.4 指であ
れば尺側、第5 指であれば橈側である。動脈吻合はマイクロサージャリー手技を身に付ければ確
実に行える。1mm の動脈吻合には通常10-0 のナイロン針にて8 針吻合する。どの1 針も不適当
であってはならず完璧でなくてはならない。動脈が吻合されたら、クランプを開放する前にフィブリ
ン糊を1滴たらして補強する。クランプをはずせば切断指には赤い血行が戻る。
神経縫合は動脈吻合に続いておこなう。指神経は両側とも9-0 ナイロンにて2-3 針縫合する。
神経縫合部もフィブリン糊にて補強しておく。
青:フィブリノゲン
赤:トロンビン
☆術中抗凝固薬の動注療法
神経縫合が終了した時点で橈骨動脈に動脈ラインを確保し、ヘパリン生食を動注し、吻合部血
管の内膜をヘパリンコートする。動脈ラインは22g のサーフローを順行性に留置する。
☆静脈吻合
続いて指背側に移る。この時点で切断末梢から還流してくる静脈血流出が認められる。
通常1-2 本の皮下静脈を吻合する。静脈は動脈よりも細く、またもろい。そのため術後に
血栓形成をきたしやすい。あくまで慎重に行う。
☆創閉鎖と固定
最後に皮膚を閉鎖する。皮膚の一次損傷と腫脹のために植皮が必要になることも多い。
手部にはスプリントをあて、術後血行モニタリングを慎重に行う。
☆術後管理
以上の処置を終えれば再接着手術はほぼ終了である。皮膚を縫合し洗浄しながら再接着指が
うっ血していないことを確認し手術を終了する。麻酔を覚醒させている間に前腕から手関節まで掌
側にシーネをあてがい、そして帰室する。
切断指は損傷している血管を吻合しているため、血栓形成の危険性は高い。そのため抗凝固
療法は必須であると考えている。以前は静脈からの全身投与を施行していたが、近年は経動脈投
与をしている。この方法は奈良医大が提唱した方法であるが、投与量が少なくまた効果も高い。プ
ロトコールを以下に示しておく。
術日を含めて7 日間
動脈投与;以下を4ml/hr
低分子ヘパリン(フラグミン) 2500 単位
ウロキナーゼ 6 万単位
生理食塩水 96ml
静脈投与
低分子デキストラン 10ml/kg/day
切断指再接着の症例
単指切断の再接着
この患者はのこぎりによって中指を切断した。もし断端形成すれば短い中指となり、把
持力や操作力などの機能は大分低下してしまう。切断部の状態は良好であり、Xp を参照し
ても末梢/近位部とも温存されているようである。再接着術後早期に可動させることを考
え、K-wire 固定ではなくplate 固定を選択した。その結果、拘縮のない、知覚のよい指を
再建することができた。DIP 関節に若干の可動制限はあるものの、良い手指機能である。
55歳男性、右第2指中節部遠位部(玉井zone3)切断再接着例
複数指切断の再接着
この症例は2 指の挫滅切断である。切断末梢部はかなり遠位であったが、切断部近位・
遠位の圧座は強くなく損傷状態はそれほど悪くなかった。患者のモチベーションも高く再
接着術の適応と考えた。
切断レベルはDIP のすぐ近位であり、この関節を温存してのplate 固定は不適当と判断
し、K-wire にてDIP 関節を貫いて固定した。PIP 関節は固定せず、早期に可動域訓練を開
始することができた。術後6 ヶ月を経過し、知覚の回復は良好で、機能も良好である。再
手術はない。
20歳男性、右第2,3,4指中節部切断(玉井zone3)再接着例
母指切断の再接着
母指は手の中で最も重要な指であり、手の機能のおおよそ40%を占めている。母指の機
能を失うということは悲惨なことであり、それゆえ再接着術が強く勧められる。この患者
は電気鋸にて左母指を基節部で切断した。切断面はやや挫滅さえていた。損傷組織をデブ
リドマンするために少し短縮した。損傷組織は血栓形成を促し、その結果壊死に陥ってし
まうこととなるので、できるだけ完全に切除する必要がある。骨切除面を平坦に整え、
K-wire にて固定した。この際MP 関節は貫通せずに、早期可動域訓練の支障にならないよ
うにした。
1 年後、良好な機能を持つ母指が再建されているのがわかる。健側と比較すると少し小
さい。
68歳女性、左母指切断再接着例
機能回復が困難な玉井zoneⅣ手指切断の治療
玉井zone IV(基節部での切断、腱損傷のzone II nomans land に相当する)での切断は従来、
機能予後が悪いとされてきた。それは長期間のリハビリテーションによっても高度の関節拘縮と腱
の癒着が生じるためである。それゆえ、適応のところで述べたごとく基節部での切断は労働者など
手を良く使用する患者においては適応を慎重にしてきた。しかし、近年開発された手指PIP 関節
に対する可動式創外固定器であるCompass PIP joint hinge(CPJH)を再接着術後に装着すること
により、関節拘縮、腱癒着が回避され、高い機能が獲得されるようになってきている。1998 年稲田
らにより報告されたCPJH を用いた玉井zone 4 切断指再接着術の治療成績は良好なものであり、
PIP 関節の可動域は66±3.7°を獲得している。一方CPJH を用いない過去の症例では39±
7.3°と、有意にCPJH を用いた症例で可動域は優れていた。著者らも最近、玉井zone IV 切断に
対して術後10 日後にこのCPJH を装着しており、優れた機能を獲得している。
26歳男性、右第5 指基節部遠位(玉井zone 4)不全切断
切断肢再接着術(major replantation)
大腿、下腿、上腕、前腕切断などのいわゆるmajor 切断の治療に際して、患肢を温存すべきか
否かについて如何に考えれば良いのだろうか? 医療技術の進歩により再接着術は重度の損傷
においても可能となったのは事実である。しかし、再接着術は生物学的温存ではなく、機能的温
存として考えるべきである。major 切断においては再接着術の機能予後は、切断部位と損傷程度
に強く影響をうける。
一般的に下肢においては義肢の機能は良好である。下肢切断の中でも大腿切断の再接着術の
機能予後は不良であり、義肢の方が機能は優れている為に、小児以外では再接着術は正当化さ
れない。一方下腿切断では、遠位のレベルの損傷で、神経移植をしなければならないほどの欠損
のない患者では、良い機能予後が期待できるので再接着術の適応となる。しかし、あくまでも義肢
と同程度の機能予後が得られることが前提であることを考え適応を決めなければならない。
一方上肢切断においては、前腕遠位の切断肢再接着術の機能予後は良く、絶対適応である。
しかし、より近位の上腕切断は挫滅が高度な例が多く、たとえ再接着しても機能予後も悪いことより、
小児例以外の再接着術には慎重な立場がとられてきた。しかし上肢においては義肢の機能は悪
く、再接着肢の機能はそれに勝る。それゆえ、上腕切断においては、今後再接着術の適応を、も
う一度検討しなおし、患肢温存の方向で考えていく必要がある。
Major 切断再接着における問題点
major 切断再接着術が手指切断再接着術と根本的に異なることは、不十分な適応と外科的手
技により手術事態が患者に害を及ぼす可能性があるということである。すなわち再還流障害により
生命を脅かす危険性があり、また例え生着したとしても局所感染から敗血症を併発し、長期の経
過で廃用肢となり結果的に再切断術を余儀なくされる可能性がある。よって上肢major 切断再接
着術は最終的機能回復までを見据えて、一貫した治療戦略を練る必要性がある。
問題点のまとめ
1、阻血再還流障害
2、組織壊死と感染症
3、無機能肢
問題点の解決法について
筆者らは再還流障害予防と術後機能向上のために以下の治療方針をとってきた。それは①一
時的動静脈シャントによる可及的阻血時間短縮、②骨短縮による挫滅軟部組織切除、神経の端
端吻合、③皮弁術併用による一期的創閉鎖、④上腕切断における肘屈曲能獲得のための早期
機能再建術(広背筋移行術)である。
温阻血時間は最も重要な問題であり、筋細胞の代謝に著しい悪影響を及ぼし重大な合併症で
ある再還流障害を引き起こすことは良く知られたことである。阻血時間短縮のための一つの方法
は一時的動静脈シャントであり、Weinstein ら、Nunley らによって有用性が報告されている。筆者ら
は再還流障害が特に問題となる上腕近位レベル以上の3 症例において一時的動静脈シャントを
施行し、阻血時間を6.5 時間以内に留めることが出来た。その結果、術後再還流障害はまったく
問題とならなかった。しかし、再還流障害回避のためには、阻血時間それ自体を指標とするので
はなく、阻血障害のより客観的指標が必要であるとの報告もある。Waikakul らは、shunt tube から
の還流静脈血のK 濃度が筋組織細胞の障害程度をよく反映していると述べ、6.5mmol/l を超える
場合は切断術をすべきであるとしている。今後、導入すべき指標と考える。
術後機能を左右する因子に関しては様々な報告がある。若年齢、手関節から前腕遠位レベル
の切断、鋭利切断の成績が良好であることは一般的に認められていることであり、筆者らの症例で
も同様の結果が得られている。損傷のレベル、程度は受傷時に決定されており、人為的にはどう
することも出来ない要因であり、医療者側が出来うることは残存している組織の機能を最大限に引
き出すことである。Axelrod らは重度上肢切断症例に対して骨短縮術による軟部組織修復と神経
再建を行った結果、Chen grade Ⅰ、Ⅱの機能良好例が76%であったと報告した。またGraham ら
も損傷程度は術後機能にそれほど影響を与えなかったとしており、その理由はaggressive
debridement と骨短縮術施行によると述べている。筆者は現在のところ正中、尺骨神経のうち、少
なくともどちらかが端端吻合可能なレベルまで短縮することを方針としている。
骨短縮術により軟部組織修復が容易となるが、一次創閉鎖のためには皮弁術が必要となるほ
どの軟部組織欠損が残存することがある。軟部組織損傷の著しい重度四肢開放骨折における開
放療法は容認されず、感染の予防と良好な機能結果から早期皮弁術施行が望ましいとされてい
る。今後の展開は、早期機能的筋肉移植術の導入である。特に上腕切断の症例に対して有茎広
背筋移植により肘関節屈曲再建術を施行しることがあるが、これは損傷時に筋皮神経および上腕
2 頭筋の損傷が強く、回復が全く望めないことがわかっている場合に適応となる。最終的な機能を
予測することができれば、腱移行術で対処できるのか、それとも遊離筋肉移植術が必要なのかが
判断できる。しかも手術は受傷早期が最も施行しやすい。しかし、神経および神経筋接合部がど
の程度損傷され筋体機能がどの程度回復するか、見極めは困難な場合が多く、今後の課題であ
る。
Major 切断再接着術治療戦略のまとめ
①一刻も早く血行を再開させろ(bypass tube による可及的阻血時間短縮)
②骨は短縮し神経が端端吻合できるようにしろ
③皮弁術を早期に併用して一期的創閉鎖をめざせ
④機能再建術を早期に導入せよ(上腕切断における肘屈曲能獲得のための早期機能広背筋移
行術)
Bypass tube による
早期再血行化
手部切断の再接着
この症例は破滅的な右手切断である。伸筋腱の近位からの引き抜き切断があったものの
正中神経および屈筋腱は比較的clear に切離されていた。引き抜き損傷であることを考慮
して、コンパートメント症候群を回避するために手部と前腕に筋膜切開を加えた。単純Xp
では手根骨中央レベルでの切断で、近位手根列は近位側に残存していた。
手部はいくらか圧挫されていたが、切断部位以外の明らかな骨折は認められなかった。
再血行化は橈骨動脈と橈側皮静脈の吻合により行われた。前腕掌側の切開創は強い浮腫の
ために開放のままとした。骨接合にはK-wire を使用した。近位手根列は切除した。
術後2 年の状態である。橈骨神経麻痺に準じて、手関節の背屈、指伸転再建を行ってい
る。
前腕切断の再接着
この不幸な40 台の男性は、左前腕遠位1/3のちょうど筋腱移行部で完全切断した。彼
は再接着術施行のために我々の施設へ転送されてきた。橈骨および尺骨をそれぞれ3cm ず
つ短縮し、再接着を施行した。橈骨動脈と尺骨動脈、さらに正中・尺骨・橈骨とを一次吻
合した。腱は筋腹に埋没させた。術後5 日間デキストランを使用し、前腕に皮膚移植術を
追加した。また術後hand therapy を開始した。術後1 年で比較的良好な手の機能が得られ
ている。
●血管損傷の治療
多発外傷のところで既述したの一部繰り返しになるが、血管損傷治療における考え方をもう一
度既述する。
非開放性四肢骨折に合併した血管損傷例の阻血時間の現状について
閉鎖性骨折に伴う動脈損傷治療の最大の問題は、長い阻血時間にある。日本医大救急部、奈
良県立医大救急部に、および自験例において、阻血時間は3 施設ともに10 時間を上回り、本来
の血行再建までのgolden time6 時間を大きく超過しているのが現状である。当部における上肢
major 切断の阻血時間は平均5時間であることと比較して、極端に長い阻血時間の原因はどこに
あるのであろうか。
阻血時間延長の原因について
閉鎖性動脈損傷は、強度な直達外力による圧挫傷が多いため、内膜が断裂していても、中膜、
外膜によって連続性が保たれ、正常な動脈拍動を示すことがある。また、側副血行路が発達した
部位の損傷では、典型的な阻血の5徴候に乏しいことも多い。このことから搬入時における臨床診
断が不確実なものになりがちである。自験例においても2症例に微弱ながらも末梢の動脈音が聴
取されていた。この2症例は側副血行路により末梢の血行がある程度保たれていたものと思われ
るが、コンパートメント症候群の進行とともに、結果的に完全阻血に至ることとなった。すなわち、徴
候が明らかでないことが、診断を遅らせている原因の最たるものと考える。疑わなければ全ては始
まらない。
また、臨床診断のための阻血の5徴候、確定診断のための血管造影以外に、より迅速に、正確
に診断するための手段を持っていないことも大きな要因である。1~2 時間を要する血管造影が汎
用され、臨床診断の遅れに加えて血行再建に更なる遅延をもたらしているのが現状である。それ
では、どのような戦略を持てば、阻血時間が短縮できるのであろうか。
阻血時間短縮のための戦略
阻血の5徴候は認められないが、部位的には血管損傷の可能性がある骨折/脱臼を診察したと
きに、直ちに簡便、迅速で、かつ侵襲が少ないdoppler 聴診による圧測定を行うべきであると考え
る。健側比が0.9 以下、もしくは健側差で20mmHg 以上の開きがあれば動脈損傷を強く疑うことが
できるとされる。Bandyk らは、同方法によりaccuracy 95%で動脈損傷を診断できると報告している。
doppler 聴診器は多くの医療施設に常備されており、同方法の普及が阻血時間短縮に大きな役
割をもたらすと考える。
動脈損傷が強く疑われたならば、次に血行再建のために損傷高位を同定しなければならない。
特に下肢動脈損傷の場合、膝窩動脈レベルであるか否かで、アプローチの方法が異なるので、
損傷高位の同定は特に重要である。通常の血管造影法はきれいな画像が得られる極めて有用な
方法であるが、通常その時間的余裕はないものと考えたほうが良い。血管造影早急に施行する体
制を整えるとの考え方もあるが、他に方法がない場合にのみ選択されるべきである。
動脈損傷レベルの同定に関して、最近color doppler 法が有用であるとする報告が散見される。
Bynoe らによると、同方法によりaccuracy98%を獲得し、この所見を元に198 例の血管再建が可能
であったとしている。我々は、閉鎖性骨折に伴う動脈損傷に対して同方法を用いて診断した経験
はないが、四肢仮性動脈瘤、四肢動脈閉塞例に対して施行しており、その有用性を確認している。
しかし、その操作には技術的問題が含まれており、訓練された医師でなければ有用性に乏しいの
も事実である。我々は今後、血管造影の代わりにcolor doppler 法を汎用し有意に阻血時間を短
縮することを計画している。
尚、阻血許容時間を延長させる目的で、救急処置室にてコンパートメントを開放することも一つ
の手段かもしれない(血行再建時にはルーチーンに施行される手技でもある)。しかし、それはあく
まで血行再建を前提とする場合にのみ施行されるべきであると考える。コンパートメント開放により
血行再建が遅れてよいはずもなく、またそれが四肢動脈損傷の治療手段の一つであると認識され
るのであれば、本末転倒ではなかろうか。
●指尖部損傷
指尖部損傷治療にはさまざまな再建方法が報告されており、いまだ確立された方法はない。
図-1 石川の切断レベル分類
Zone Ⅰ
Zone Ⅱ
中枢1/ 3
爪甲基部
我々の施設では現在までに①10 才以下の小児はまずcomposite graft を施行する、②年長児ある
いは成人のzoneⅠ(石川の分類)の損傷においてはocclusive dressing 法(アルミホイル法)を施
行する、③zoneⅡ(石川の分類)の損傷や大きな指腹部欠損を伴う例ではoblique V-Y 前進皮弁
あるいは逆行性指動脈島状皮弁を施行する、などの治療方選択を用いてきたが、それぞれの方
法における問題点につきのべる。
1、 composite graft 法について
1996 年、坪らはAllen 分類に基づき、composite graft 法の適応について検討している4)。成人
においてはtypeⅢ(石川zoneⅡの中枢1/3レベル)、小児においてはtypeⅣ(石川zoneⅡの爪基
部レベル)までの鋭的切断に適応があると述べている。さらに、比較的強い挫滅では生着困難の
ために、中等度挫滅例はcup technique、高度挫滅例は保存療法もしくは皮弁形成を行うべきと報
告している。1993 年、平瀬らはcomposite graft 法後にアルミホイル冷却法を追加し生着率向上を
得ている。しかし、自験例において施行したcomposite graft 法は全例壊死に陥った。石川zoneⅡ
までの切断レベルで小児例かつ平瀬らの冷却法を併用した症例においてさえ全例壊死し生着し
なかった。軟部組織の状態が不良であったため生着に失敗したと考えられたが、指尖部損傷は少
なからず挫滅を伴うものである。Cup technique の経験はないが、筆者らはこの方法の適応には疑
問を感じざるを得ない。
2、occlusive dressing 法について
occlusive dressing 法(アルミホイル法)は簡便で確実な方法として、指尖部損傷治療法のなか
でも現在最も汎用されている。佐々木らによれば、この方法は全ての指尖部損傷に適応があるが、
爪甲形成、cold intolerance など多少の問題を残すと述べている。自験例においてzoneⅠ、zone
Ⅱの爪中枢1/3 レベルまでは爪甲の形状もよく、断端部の疼痛しびれは軽度で比較的良好な結
果を得た。しかしzoneⅡのより中枢側の爪基部での切断、掌側斜め切断では爪形成は不良で、
少なからず疼痛を残存する症例が多かった。すなわちocclusive dressing 法の適応はzoneⅡの爪
中枢1/3 までの比較的軟部組織欠損が小さい例に最も良い適応があると考えられる。zoneⅡの中
でも爪基部レベルの損傷、掌側斜め切断においては、皮弁形成術により利点があると考えている。
しかし、皮弁形成術は両刃の剣であり、不用意な手術手技による合併症が多いことを肝に銘じて
おく必要がある。
3、皮弁形成術について
皮弁形成術の適応は掌側斜め切断およびzoneⅡレベルの切断にある。皮弁形成術も多岐に
わたるが、筆者らは比較的軟部組織欠損が少ない場合はoblique V-Y 皮弁を第1選択としてきた。
また軟部組織欠損が大きく、皮弁の移動距離が1cm 以上必要な場合は、V-Y 皮弁では対処不能
で無理に移動すれば高率に知覚異常を呈するために、児島らが報告した逆行性指動脈島状皮
弁(reversed digital artery island flap)を用いてきた。すなわちzone Ⅱの中枢1/3レベルまでは主
にV-Y flap を用い、掌側斜め切断およびzoneⅡの爪基部レベル損傷においては主に逆行性指
動脈島状皮弁を用いてきたわけである。V-Y 皮弁を施行した症例の中で3 指に巻き爪変形と爪形
成不全を生じた。結果的に指尖部を十分に被覆できなければこのような合併症を呈するわけであ
り、逆行性指動脈島状皮弁も考慮すべきと考えられた。掌側斜め切断に用いた逆行性指動脈島
状皮弁の断端の形状は良く、指神経を縫合していないのにも関わらずm2PD で知覚の回復も
10mm と満足できるものであった。本来神経縫合を施行しない逆行性指動脈島状皮弁に知覚が回
復することは良く知られていることである。
指尖部損傷で最も成績が不良で問題があるのは爪基部での切断例である。同症例は高頻度
の爪形成不良と中等度断端部痛を呈する。より損傷が重度であるためではあるが、更なる工夫が
必要である。爪基部切断例に対して十分な爪床を獲得するために、1991 年吉村らが報告した爪
再建断端形成術を用いるのも一つの方法である。現在筆者らが最も注目しているのは、背側の爪
甲,骨のcomposite graft と掌側の知覚皮弁の併用法である。1995 年松井らは本法16 例の良好
な臨床経過を報告している。自験例においても爪基部損傷例に対し末節骨・爪甲のcomposite
graft 法と掌側の皮弁術にて再建し良好な結果を得ている症例もある。しかし、背側composite
graft の部分壊死をきたす症例も散見され、今後追試していく必要がある。
指尖部損傷治療のポイント
1、小児例であっても高度挫滅例はcomposite graft 法ではなく、occlusive dressing 法あるいは皮
弁形成術を選択すべきである。
2、occlusive dressing 法はzoneⅠに最も良い適応があり、zoneⅡに対しては皮弁形成術がより望
ましい。
3、zoneⅡの中でも爪基部の切断では単なる皮弁形成術では不十分であり、爪再建断端形成術
あるいは爪甲composite graft の併用が望ましい
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