もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

6 056 杉原泰雄「憲法読本 第3版」(岩波ジュニア新書:2004)感想 特5

2017年04月27日 02時03分45秒 | 一日一冊読書開始
4月27日(水):  

288ページ     所要時間6:20      蔵書

著者74歳(1930生まれ)。旧制中学三年のとき、動員されていた軍需工場で「八月一五日」を迎え、翌年、日本国憲法に出会う。一橋大学大学院法学研究科博士課程修了。一橋大学教授、東海大学教授、駿河台大学教授を経て、現在、一橋大学名誉教授。専攻は憲法学

初版(1981年)、新版(1993年)とともに所蔵している。いずれも読了してるので、今回は最低でも4~5回目ぐらいの読み返しになる。第4版(2014年)は、まだ高くて買えない。俺は、本書を旧版も含めて繰り返し読んできたことになる。有名な芦部信喜『憲法』を、少し前にアマゾンで取り寄せたがまだ読めてないが、 俺にとっての憲法の基本テキストは本書だと言える。

内容を改めて抄訳・紹介する気力も時間もないが、既に前の付箋をしてある本書にさらにたくさんの付箋をして、線まで引きながら読み始めると、たしかに<俺自身の憲法観>が本書によって基礎づけられていることがよく確認できた。本書を丁寧に読むのは、6時間でも全く足りないが、大きく歴史的背景から今の憲法を位置づけ、その座標と護るべき必然性を教えてくれる貴重なテキストである。

そもそも日本国憲法がこれほどに進歩的で素晴らしい内容になったのは、第二次大戦に敗北して日本人自身の自覚が高まったからではない。つまり、日本人が市民革命を成し遂げた結果ではない。そうではなく、日本に対する占領政策を円滑ならしめる上で「天皇制」の利用価値を高く評価したGHQ(アメリカ)マッカーサーが、オースとラリアなど他の連合国の昭和天皇への戦争犯罪人訴追をかわすためには、その国々をも納得させるに足る進歩的・民主的・平和主義的内容の憲法を大急ぎで作らざるを得なかったのだ。

日本国憲法は、ある意味「不幸な憲法」である。内容の素晴らしさに対して、敗戦直後の日本の権力層も、日本の市民勢力も追いついてなかったのだ。そのため、権力を縛る立憲主義からすれば、権力層は窮屈だと言って「押し付けられた」を連呼するし、日本国民、市民勢力はポカーンとして今の憲法が「世界史的に見ても奇跡のように素晴らしい憲法である!」という自覚が十分に持てていなくて、まさに「宝の持ち腐れ」状態で、権力層からの「解釈改憲」攻撃を受け続けている。しかも、その攻撃を受けているという自覚すらも極めて乏しい。

著者は言うのだ。「憲法の成立の経緯なんてどうだっていい!要は中身の素晴らしさだ!この憲法を護り続けることが、日本人が経験していないままの<「市民革命」の実現>なのだ!そして、この憲法を護るためには、もっともっと多くの市民(国民+在日外国人)が憲法の中身をもっともっともっとしっかりと学び理解して自覚を高めるしかないのだぞよ!」と。

【目次】1 現代社会と立憲主義/2 日本の立憲主義のはじまりー大日本帝国憲法(明治憲法)/3 日本国憲法の制定/4 日本国憲法のしくみ/5 日本国憲法はどのように運用されてきたか/6 明るい未来を求めて

【内容紹介】戦争の放棄、人権の尊重、国民主権、地方自治など、世界に先駆ける日本国憲法。自衛隊が海外派兵され、改憲が声高に叫ばれるいま、憲法の成り立ちとしくみを積極的に学習することが大切です。憲法を理解するうえで、最適の入門書として読みつがれてきた本の第3版。
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