もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

6 036 山口誠「グアムと日本人 戦争を埋め立てた楽園」(岩波新書:2007) 感想5

2017年02月19日 02時56分00秒 | 一日一冊読書開始
2月18日(土):  

205ページ    所要時間5:50     アマゾン265円(8+257)

著者34歳(1973生まれ)。関西大学社会学部准教授。専門、メディア研究、歴史社会学、文化研究

今まで無関心だったグアムに対する見方が大きく変えられる内容のテキストである。グアムについてかなり知ったかぶりができる種本になる。

グアム経済は米軍基地3割、観光7割の2本柱で成り立っており大変貧しい。グアム観光者の8割前後が日本人であり、日本人観光者がもつグアムは沖縄復帰以前の南国宮崎県の延長にある。日本人に都合よく3泊4日の短期滞在型に作り変えられた周囲1キロメートルのタモン地区のみをグアムとして疑わずに往復する日本人たちには、グアムが日本軍によって占領され「大宮島」と呼ばれていた31か月も、その後のアメリカとの激戦で2万人の日本兵が死に、島民が虐待・虐殺された日々も知らない。さらに森に隠れ続けた残留日本兵たちの終わらぬ戦後があったことも知らない。一方で、グアムの島民も、国際社会も日本人が忘れていることすら忘れているそれらの事実を覚えている。

淡路島とほぼ同じ面積のグアムに対する俺自身の関心が、今後も強く維持されるとはとても言えないが、本書はグアムに関する必要十分な内容を簡潔に分かりやすくまとめた良書、テキストだと言える。

グアム観光開発における「三つの波」とその特徴(118ページ)に関して、連動したガイドブックのポケット型⇒マニュアル型(「地球の歩き方」)⇒カタログ型(「るるぶ」)の変遷の解説は秀逸だった。

【目次】 第1章 「大宮島」の時代(日本領グアムに生きた人々/短い戦闘と長い戦争/「私たちの中の横井さん」から「ヨコイさん」へ)/第2章 基地の島と観光の道(「立入禁止」の孤島/グアム観光の「基本計画」/慰霊観光と記憶をめぐる抗争)/第3章 楽園の建設、記憶の埋立て(観光開発と日本のメディア/宮崎の南、ワイキキの西/タモン湾の開発と記憶の埋立て)/第4章 値札と忘却(日本人の観光変容と「三つの波」/格安旅行とマニュアル型ガイドブック/値札を付けるメディア/「記憶の回路」の途絶)/第5章 見えない島(誰も死なない島/二一世紀の植民地/見えないことさえ見えなくなるまえに)

【内容紹介】 年間約一〇〇万もの日本人が訪れる米領グアム。その島が旧日本領で、かつて二万近い日本兵が命を落とした激戦地であった事実が、現在の観光者たちに意識されることは、少ない。いったい誰が、いつ、どうやって「日本人の楽園」を開発したのか。無個性なリゾートの地下に眠る、忘れられた記憶を掘り起こす。写真・図版多数掲載。
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