喧噪と余韻 ーロビーにて

映画を待つ間にロビーの喧噪に耳を傾け、終了後は余韻に浸る。グラスを傾けながら、観終わった映画の話でも…。

アメリカン・スナイパー(15年No.25)

2015-02-26 00:16:22 | 映画
 実在したネイビーシールズの元隊員で、“伝説”とニックネームが付けられた狙撃手の回顧録が原作だという本作品は、ラストシーン後に、鎮魂的な音楽をバックに、本人に関するニュース映像などが写される。
 その後、出演者やスタッフなどの名前が、黒い画面に白い文字で下から上にゆっくりと動くだけで、音声のない沈黙の中で終わる。

 エンディング中にシアターを出る観客もいたが、終わった後もざわめきは直ぐには戻らず、観客たちは静かに席を立っていった。

 冒頭から終盤まで、戦場のシーンが多く、緊張感が途切れない。
 それが、主人公クリス・カイル(演:ブラッドリー・クーパー)が除隊して家族の元に戻るラスト前からは穏やかな時間が訪れる。

 心や身体負傷した帰還兵と触れ合う中で、自身の心も病んでいたカイルは、心からの笑顔を家族に向けられるまでに回復する。
 私は、ラストシーンで、目頭を濡らしてしまった。


 映画は、戦場から始まる。
《オープニング》
 ワーナー・ブラザースのロゴが映る。
 サイレンのような、拡声器から流れる声に、鼓動のような音が重なる。
 映画会社のロゴの途中から、キャタピラーの音が加わる。
 戦車が、大写しになる。
 左脇に、兵士の上半身。
 中東の街を行く戦車と、両脇を歩く兵士たち。
 ドアの前に立ち、開け、探索のため家に入る。
 建物の屋上で腹這いになり、ライフルに付けたスコープを覗く兵士。
 建物の上から携帯で話しながら、軍を偵察してる風な男を見つけ、報告する。
 「偵察しているようなら、判断で撃て。」と命じられ、照準を向けるが、男は引っ込む。
 その建物から、何かを隠し持った女性と子どもが出てきて、軍に向かって歩き出す。
 女性が、子どもに金属製の筒状の物を渡す。
 照準を、子どもに向ける。
 ライフルの引き金がアップになる。
 指が、引き金にかかる。

 林に立つ鹿が映り、一発の銃声がする。


《鑑賞データ》
 公開初日の土曜日。新宿バルト9、09:00の回は、朝早いにもかかわらず、幅広い客層で120~130名くらいの観客数。
 字幕は、松浦美奈さん。


 父とのハント、教会、弟をイジメた相手を殴り父に賞賛されたこと。育った環境が端的に語られる導入部。
 入隊から訓練、妻タヤ(演:シエナ・ミラー)との出会いが描かれ、結婚式から、第1回目の派遣。そして、オープニングのシーンへ。

 狙撃手としての目覚まし活躍の一方で、その標的は、ときに女性であったり、ときに子どもであったりする。任務を遂行しなければ、多くの同胞が死傷する中で、ぎりぎりの決断を迫られる。
 銃撃戦の中で、仲間が死傷し、自身も死に直面する。
 どんなに鍛えられていたにしても、精神を病まない方がおかしい。

 都合4回の派遣の合間、帰国して家族と生活していても、妻タヤからは、「心は帰ってきていない。」と言われる。
 祖国を、同胞を、家族を守るために、戦場に気がかりだったカイルが、子どもとじゃれる犬に過剰に反応したり、帰国しても、直ぐには家族のもとに帰れないようになる。


 ストーリー的には、戦場における相手方のスナイパーとの闘いと、ビン・ラディンの片腕“残虐者”の追跡が軸として描かれている。

 第1回目の派遣では、タヤと携帯電話で会話している最中に戦闘になり、電話口からは銃声しか聞こえずに、タヤが泣き崩れるシーンがある。
 第4回目の派遣では、テロリストたちに囲まれ激しい銃撃戦の最中、タヤに泣きながら「帰る」と電話するカイルのシーンがある。
 この映画は、家族との絆も描かれている。


《エンディング》
 帰還兵の母親に頼まれ、その帰還兵と話すために出掛けるというカイル。息子に留守を頼み、タヤに笑顔を向け、出ていく。
 半開きのドアから、見送るタヤ。
 その日、その帰還兵によって、カイルが殺されたとのクレジット。
 国旗を持ち沿道に並ぶ人々や、スタジアムにおける追悼式などの映像が、鎮魂的な音楽をバックに流れる。
 音楽が消え、文字だけのエンディングロール。

あと1センチの恋(15年No.26)

2015-02-23 00:06:14 | 映画
 東京での公開から2ヶ月経って、長岡でも公開されることになった。
 他の映画を優先し、チェックすべき映画のリストに入れてなかったが、ぴあ出口調査における満足度の平均点が、90点を超えているとなると、観ておきたかった。
 同じ週に公開が始まる映画で、全作品を観れるわけではないので、自分の中で優先度を付けたら、「きっと、星のせいじゃない。」よりも上になった。

 自分の感を信じて良かった。
 というよりは、ぴあ満足度ランキングを信じて良かった、が正しいか。

 誰かと観に行きたかった。そんな映画だった。
 語り合いたいということではないが、一緒に行った人と、「良かったね。」と浸りたいような映画だった。

 映画が始まったときに、この映画を選んで良かったという確信を得た。
 楽しめる映画だと、インスピレーションされたのだ。


 映画は、結婚式のパーティーから始まる。
《オープニング》
 人々の話し声、喧騒が聞こえ、軽快なポップスが始まる。
 遠い目をして座る、ドレス姿の女性の顔が映る。
 その前を、人影が行き交う。
 幼い日、2人の出会いが語られる。
 そして、アレックスの奇妙な夢の話。
 赤毛の女性に促されて立ち上がり、紙を手にスピーチを始めるロージー(演:リリー・コリンズ)。
 「私にとって人生で最良の日です。」と、感情のない顔で話すロージー。
 その前の席で、笑顔のアレックス(演:サム・クラフリン)。

 12年前、ロージーの18歳の誕生日パーティー。
 酒を飲み過ぎで踊り、偶然か、アレックスとキスした直後に、床に倒れるロージー。
 =原題「Love,Rosie」=
 昨夜のことを全く記憶していないロージーを、アレックスが尋ねてくる。
 ロージーのママに、注意されるアレックス。


《鑑賞データ》
 長岡での公開2日目の日曜日。地元T・ジョイ、11:00の回は、観客数10名ほど。
 予告編も、チラシも見ていない。
 宣伝されていないのだから、集まった観客は映画が好きな人たちだろう。
 勿体無い。
 毎週、毎週新作が公開されているシネコンでは、良作であっても、口コミで評判が広がる前に上映が終わってしまう。
 幅広い年齢層で観れる映画だと思うが。
 字幕は、佐藤栄奈さん。


 家が隣で、幼なじみのロージーとアレックスの、12年間に渡る恋の行き違いを、ちょっとのユーモアを交え描いたキュートなラブストーリー。
 使用されるヒット曲の数々も、シーンに合っている。

 センチメンタルに流れないのは、全編に明るさがあるからだろう。
 惹かれあいながら、友だちとして接し、すれちがう人生を過ごす2人を、軽快に描いていく。
 すべての始まりは、ロージーの18歳の誕生日パーティーだったことが、物語が展開していく中で、ラスト前にアレックスから語られる。


 浜辺でみんなと遊んでいるとき、ロージーはアレックスに、クラスの人気者のクレッグ(演:クリスチャン・クック)にダンスに誘われたと話をする。
 アレックスは、「あんな女好きのやつ。」と言いながら、自分はベサニー(演:スキ・ウォーターハウス)とのことを相談する。
 けしかけるロージー。
 だが、授業中、チャットで「ベサニーを相手に、童貞を卒業した」とアレックスが報告すると、「ファック」と思わず叫ぶと、立ち上がる。

 ロージーは、腹いせのようにクレッグとSEXするが、ゴムが消えてしまい恥ずかしい思いをする。

 アレックスは医師を、ロージーはホテル経営を目指して、ボストン大学で学ぼうと約束し、互いに合格するが、ロージーは妊娠が発覚する。
 夢を諦め、シングルマザーとして、イギリスで生活するロージー。
 ボストンで、医師を目指し勉強するアレックス。

 2人は…。


 12年前から、冒頭のスピーチの場面まで、2人すれちがっていく。
 冒頭のシーンも、ロージーが浮かない顔をしていることから、2人の結婚式でないことは分かっている。
 ストーリーが展開していき、アレックスの結婚式前に、アレックスは自分の気持ちを手紙にして伝えるが、ある理由によりロージーが読むタイミングがズレて、アレックスの結婚式が決まってからになる。
 それでも、結婚を止める気持ちでボストンに向かうが、飛行機の遅れで、到着は式のあと。
 そして冒頭のスピーチ。
 ロージーの、自分の気持ちを滲ませ、押し殺しながらのスピーチは、感動的である。
 パーティーで、ある出来事があって、アレックスはロージーの子ケイティに語りかける形で、自分の気持ちをロージー話すことになる。

 スピーチやパーティーのときの、全てを感じ取ったようなベサニーの表情が、なかなか良い。
 その表情があるからこそ、ラストが納得できるのだ。


《エンディング》
 自分の夢だったホテル経営を始めたロージー。
 初めてのお客さんが来て、部屋に案内した直後、ドアから入ってくる人影に振り向くロージー。
 立っていたのは…。

 ホテルの外観から、だんだん引いてホテルがある岬の全景。
 エンディングロール。

東へ、西へ(2015年2月20日夜~21日)

2015-02-22 22:32:05 | 日記
 友人が店を辞める前に、せめて月一回くらいは顔を出したかった。
 先週、2月13日に行こうかとも思ったが、店の女の子にバレンタインチョコを貰いに行くようで、嫌だった。
 ま、一週遅らせたところで、“贈ってくれる子は贈ってくれる”とは思ったが。

 仕事を定時に終え、新幹線に乗る。
 駅ビル内で買ったお寿司で、夕食を済ませる。

 東京駅から一駅。有楽町へ足を延ばし、本日発売開始のグリーンジャンボ、連番とバラを10枚ずつ買う。
 ついでに、ITOCiAのワインショップを覗く。
 新年会のとき、誰かが貴腐ワインのことを話していたので、買っていってあげようと思ったのだ。
 店頭にあった貴腐ワインを手に、レジに向かいながらチーズコーナーを確認する。好きなフォレストがあるかと思ったのだが、有った。だったら、長岡で別のスモークチーズ、買わなくても良かったな。

 ホテルにチェックインを済ませ、土産を持って店に向かう。
 ドアの前で、(やけに静かだな。)と思って入ったら、カウンターに、常連で我が飲み友だちが2名いるのみ。女の子の方が多い。
 友だちの1人は、すでに出来上がっている感じ。

 挨拶し、座ると、長岡と有楽町で買った土産をカウンターに並べる。

 ワインが2本。
 貴腐ワインと、岩の原葡萄園のスパークリングワイン「ブラン・ド・ブラン ローズ・シオター」。
 岩の原のスパークリングワインは、伝統的なシャンパン製法の瓶内二次発酵で作られており、原料のブドウも、“ローズ・シオター”というあまり聞かない品種なので、以前から飲んでみたかったワインだ。

 あと、つまみにもなるおかき2袋と、女の子用にお菓子を。
 あと、友人に“たまり漬けチーズ”を。これもイケる。

 ママさんから、バレンタインのお菓子をいただき恐縮。

 出来上がっている飲み友だちが、しきりにまた長岡に行きたいという。そんなに、良い思いをしたのだろうか。
 話しながら飲んでいると、ようやく他のお客さんが入ってくる。

 仕事を終えてから来た女の子が、「ハッピーバレンタイン♪」と言って、チョコレートをくれる。
 ま、私1人ではないが、宛名を貼ってくれているから、誰彼なく配っている訳ではないだろう。
 ありがとう。

 カラオケは、back numberの「ヒロイン」から。
 back namberは好きで、よく歌うが難しい。それに、女の子や友人の食いつきがよくない。歌い切れていないからだろうが。
 この店で、「最後の雨」をよく歌っていたときも、まだヒット前で、皆に「知らない。」とよく言われたっけ。

 「ブラン・ド・ブラン」を、皆で飲んでみる。
 瓶内二次発酵だからか、炭酸が柔らかくて飲みやすい。
 程良い酸でキリッとして、それでいて優しい味わいだ。


 23時半を過ぎたので、そろそろ店を辞す。
 次に来れるのは、友人がこの店を辞める日になる。
 私より先にいた友だちは、まだ帰らない。2人とも元気だな。


 5時半頃に一度起きたが、そのまま、また1時間ほど寝る。
 6時半過ぎに目覚めるが、頭は寝たまま。
 ようやく7時過ぎに、ベッドから起き上がる。
 あらかじめ決めていた予定では、遅くとも8時40分前後には新宿に着きたい。
 シャワー浴びたり、朝食の時間を考えると、そんなに余裕がある訳ではない。
 それでも、身体は動き出さない。

 何とか、8時過ぎにはホテルをチェックアウトして、駅に向かう。
 朝食は、新宿駅に着いて、その時間で食べるか否かを決めることにした。

 8時半くらいに、新宿駅に着く。
 ぎりぎりだが、立ち食い蕎麦くらいなら。

 食べ終えて、新宿三丁目方面へ急ぐ。

 さすがに、9時前だけに、チケットカウンターには行列はない。
 速やかに買えたが、座席の状況を見ると、結構埋まっていた。


 新宿バルト9、シアター8にて、「アメリカン・スナイパー」の09:00の回を鑑賞(前売1400円、パンフ820円)。
 幅広い客層で、観客数は、120~130名といったところ。
 字幕は、松浦美奈さん。

 「アメリカン・スナイパー」は、長岡でも上映しているので、別の映画も考えたが、長岡における来週以降の公開予定や、明日に観る予定の映画の上映時間を考え、東京で観ておくことにした。

 やはり戦場のシーンが多いだけに、緊張感がある。
 個人的には、あまり良い緊張感だとは思わないが、ラストには涙が滲んでしまった。
 そして、初めて体験するエンディングロール。字だけで、全くの無音。音楽はない。
 その意図は、十分に伝わる。
 客席が明るくなる前に席を立ったのは約40名ほど。3分の2の観客は残っていた。


 エレベーターで1階に下り、時間をみると、11:30。やはり、池袋へ動いて「花とアリス殺人事件」を観るのは無理か。

 都営新宿線の新宿三丁目駅に移動し、神保町に向かう。
 前回行けなかった共栄堂で、ポークカレーを食べるために。
 時間的にはカツカツだが、12時前なら、並ばないだろう。
 出てくるのは早いハズだし、食べるのも早い。
 何しろ、カレーは飲み物だ。

 意外と混んでいたが、スムーズに席に案内され、ただちに注文。たまに、ポーク以外のカレーも食べてみようかとも思うが、いまだにポーク以外食べたことなし。

 運ばれてきて、相席の人を気にしながら写真を撮ったが、あとでミスに気づく。
 前にすべきはカレーポットで、ライスではなかった。

 サッと食べ終え、勘定を済ませ、神保町駅へ。
 ぎりぎりではないが、余裕のない時間だ。
 ネットで、空席の状況を確認すると、まだ“○”。大丈夫そうだが、その次の回は、シアターが変わり客席数が少なくなるとはいえ、“△”表示。
 新宿三丁目で降りると、真っ直ぐに新宿ピカデリーへ向かう。

 チケットカウンターで、席をみると、前2列以外は、両脇に若干の空席があるくらい。
 朝、新宿バルト9に向かう途中で寄れなかったのは痛かったか。
 それでも、通路に面した3列目の中央寄りが取れたので、ヨシとしよう。


 新宿ピカデリー、シアター3にて、「はじまりのうた」の、12:30の回を鑑賞(当日1800円、パンフ720円)。
 「アメリカン・スナイパー」よりも、女性客の比率は多い気がする。年齢層を含め、より幅広い感じだ。
 シアターの座席数から推し量ると、観客数は220~230名だろうか。
 字幕は、中沢志乃さん。

 今回、「はじまりのうた」だけは観るつもりで、前後の時間の予定を立てた。
 本当は、本日公開の「君が生きた証」も考えたのだが、同じ音楽映画になるので見送ることにした。どこかで、観る機会が得られることを願うが。

 ポップスのような、耳障りよい映画、だったろうか。
 爽やかだが、若くない爽やかさというか。
 その辺は、マーク・ラファロや、ジェームズ・コーデンの存在もあるか。
 キーラ・ナイトレイだけだと、“爽やか”で終わっていたかも知れない気もする。
 微妙な感じではあるが。


 無理をすれば、渋谷で「花とアリス殺人事件」を観て、長岡へ帰れるが、無理しないことにした。
 「きっと、星のせいじゃない。」を観るのを、諦めればよいだけだ。
 さもなければ、金曜日の夜だな。

 さて、御徒町へ行き、酒悦に寄ってから、長岡へ帰ろう。


 《余談》
 余裕を持ちすぎて、ぶらぶらしていたら、17時台の新幹線になってしまった。予想以上に混雑していた車内、ドラマとかでしか体験していない出来事に遭遇した。
 上野を出たあと、車掌さんが慌てて前方の車両に向かったと思ったら、「車内で急病のお客さまが…。お医者さまか看護師の方でご協力いただける方は…。」
 あるんだな。
 大宮で救急車を手配するかと思ったが、高崎まで行って救急車の手配となったようだ。
 そのくらいの余裕はあったということなのだろう。

おとこの一生(15年No.22)

2015-02-15 23:29:05 | 映画
 大人のラブ・ストーリーなのだが、ロマンよりも癒やしを感じた。
 不倫で傷ついた堂薗つぐみ(演:榮倉奈々)と、報われない想いを抱いて独身のままきた海江田醇(演:豊川悦司)。2人が出会い、寄り添うようになるまでが、優しい空気感の中で描かれていた。

 正直、歳の離れた2人を、周囲の人は、こんなに暖かく見守ってくれるのだろうかと、嫉ましくもあり、羨ましくもあった。

 ラストまで観て、2人が恋人同士になったという感じよりも、家族になったという感じの方が強かった。
 それは、遠縁のシングルマザーの春美(演:岩佐真悠子)が置いていった、富岡まこと(演:若林瑠海)と過ごしたエピソードが、そんな印象を与えたかも知れない。


 映画は、つぐみの幼少期から始まる。
《オープニング》
 鼻歌が聞こえる。
 染め物が庭に干された、田舎の一軒家。
 縫いぐるみを左手に持った少女が、屈んで布を染めている祖母(演:紺野千春)に、「家に帰りたい」と言う。
 祖母は、「帰っても誰もいないよ。あなたはお姉ちゃんになるんだから。」と答える。
 学生らしき若者が訪ねてくる。
 染め物の色の出し方について訊く若者。
 答える祖母。
 染め物が並んで干された間で、祖母を後ろから抱きしめる若者。
 居間に駆け込んで、台に上り、柱時計のネジを巻く女の子。
 女の子の後ろ姿が、大人の女性の後ろ姿に。
 柱時計のネジを巻く女性の右側に、
 =タイトル=

 橋を渡り、田んぼの中の一本道を走る郵便配達のバイク。
 門の前で止まり、入り、庭からつぐみに声を掛ける友生貴広(演:落合モトキ)。
 郵便物を受け取り、祖母の容態について会話を交わす。
 電話が鳴り、出たつぐみは、固まった表情で、前を見たまま無言になる。


《鑑賞データ》
 公開2日目の日曜日。地元T・ジョイ、11:20の回は、観客数11名ほど。
 比較的、年齢層高いか。
 30、40代向きな気もするが、小さな子がいる世代だと、こういうラブ・ストーリーには食指が動かないか。
 榮倉奈々ファンとか、映画好きじゃないと、20代以下の男性は観ない気もする。


 祖母の葬儀を終えた翌朝、新聞を取り、家の中に戻ろうとしたつぐみの前に、長袖を折った白いワイシャツ姿の、中年の男性の後ろ姿が現れる。
 振り返った眼鏡を掛けた白髪まじりの男は、海江田醇と名乗り、つぐみの淹れた珈琲を所望する。

 海江田醇は、祖母から離れを自由に使ってよいと言われていたと、つぐみにカギを示す。

 こうして、祖母の教え子だった、今は大学教授の海江田と、つぐみの共同生活が始まる。
 狭い町だけに、すぐに話は広まる。
 知人たちに関係を訊かれ、閉口して家につぐみが戻ると、海江田は、祖母の友人だった坂田佳代(演:木野花)に、「結婚する予定です。」と話していた。


 何だろう。
 登場人物たちの、誰もの笑顔に、暖かい気持ちが見えた気がした。


《エンディング》
 貴広が、郵便を届ける。
 受け取る海江田。
 門の表札に、「海江田」の文字が。
 郵便物の中から、葉書を1枚だけ取り、残りは自転車のカゴに入れ、笑顔でつぐみに持っていく。
 葉書は、まことからのものだった。
 干された染め物の間で、海江田の背中に抱きつき、顔をつけるつぐみ。
 JUJUの「Hold me,Hold you」が流れ始める。
 黒い画面に、榮倉奈々と、豊川悦司の名前が、白い文字でクレジットされる。
 タイトルがクレジットされ、エンディングロール。

チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密(15年No.19)

2015-02-15 22:12:55 | 映画
 印象として、コミカルな古典的スパイアクション映画、という気がした。
 古典的というのは、英国紳士然としたファッションによるところも大きいのだろう。

 パンフレットを読んで、原作が、英国推理作家協会の新人賞に選ばれていたことを知ったが、何か納得できる気がした。

 スパイアクションとして印象づけるのは、チャーリー・モルデカイ(演:ジョニー・デップ)の使用人たるジョック(演:ポール・ベタニー)のキャラによるところが大きい気もする。
 モルデカイの友人(?)としてMI5のマートランド警部補(演:ユアン・マクレガー)も出てくるが、諜報的活躍はしていない。

 どちらかといえば、チャーリーの妻ジョアンナ(演:グウィネス・パルトロー)の方が、スパイ的活躍をする。

 アクションも、どことなくユーモラスで、ハラハラドキドキはしないのだが、後を引くような可笑しみがあった。


 映画は、香港での商談から始まる。
《オープニング》
 トレイに乗った、火のついた3つのグラス。インチキ臭いナイトクラブ内を運ばれていく。
 チャーリー・モルデカイの自身について語る台詞が始まる。(字幕は、画面右、縦書き。)
 =タイトル=
 (台詞の字幕が、画面下、横書きに変化。)
 モルデカイの座るテーブルが映る。
 壺を取り出し、売りつけようとするが、前回の取引が尾を引いてトラブルになる。
 危ういところを、使用人兼用心棒のジョックのおかげで抜け出すが、ナイトクラブは大混乱。

 ロンドン郊外の自宅に戻ったモルデカイだが、家計は火の車で、破産目前。
 後から帰った妻ジョアンナとの再会に、いそいそと向かうが、ジョアンナは、モルデカイのちょび髭を見て、すぐに剃るように言う。剃るまでは、ベッドも別と。
 落ち込むモルデカイ。


《鑑賞データ》
 公開2日目の土曜日。地元T・ジョイ、13:30の回は観客数40名ほど。
 複数で来ているようなグループ客は見掛けなかったが、幅広い感じはした。
 字幕は、石田泰子さん。


 美術修復家の女性が殺され、1枚の絵画が盗まれた。
 世界的テロリストのエミル・ストラーゴ(演:ジョニー・パスヴォロスキー)が暗躍しているとして、MI5のマートランド警部補がモルデカイを訪ね、絵画の捜索に協力するよう命じる。
 マートランドは、オックスフォード大の学生だったときに、ジョアンナに恋していて、今も恋心は冷めていない。

 モルデカイは、報酬を得ることを条件に、渋々承諾をする。

 盗まれた絵画は、どこに。
 絵画に隠された秘密(ナチスの隠し財産)と、ゴヤの幻の名画を巡り、ロシアの収集家、テロリスト、モルデカイが入り乱れ、争奪戦が始まる。


《エンディング》
 バスに仲良く入るモルデカイとジョアンナ。
 ジョアンナに、ちょび髭の許しを得て、接吻を交わす2人。
 唇を離すと、バスの外に向かい…。


 テンポよく、分かりやすく展開して、小気味良かった。

 モルデカイとジョアンナの夫婦関係も、微笑ましい感じで、引き立て役的のマートランドが、若干哀愁を帯びて見えたりもした。

 チャーリー・モルデカイのシリーズは、まだ3作あるようなので、次回作もあることを期待したい。