喧噪と余韻 ーロビーにて

映画を待つ間にロビーの喧噪に耳を傾け、終了後は余韻に浸る。グラスを傾けながら、観終わった映画の話でも…。

ローン・レンジャー(13年No.99)

2013-08-04 22:42:58 | 映画
もっと、颯爽としたヒーロー物だと思っていた。
ローン・レンジャーは、ヒーロー然としたヒーローだと。

だが、本映画のローン・レンジャー、ジョン・リード(アーミー・ハマー)は、終盤こそ颯爽とした活躍を見せるが、それまでは、法による裁きを信じる検事と言えば聞こえは良いが、銃の扱いにも不慣れで、どこか間の抜けた感じの、頼りなさそうな男である。

トント(ジョニー・デップ)とのコンビも、惚けた掛け合いで、ピンチでも緊迫感がない。

全体的に、クールというより、ユーモラスな雰囲気が漂っている。

もっとも、「パイレーツ・オブ・カリビアン」の製作陣で、ジョニー・デップが主演なのだし、予告編からそんな雰囲気を醸し出していたので、気づかなかった自分がワルい。
とはいえ、記憶もない幼い日に、自分が「ハイヨーシルバー!」と言って遊んだヒーローと、中盤までのローン・レンジャーとは、ギャップがあった。


映画は、1933年のサンフランシスコから始まる。

赤い風船が、空高く飛んでいく。
回る観覧車。
カウボーイ姿に、マスクをした少年が、西部開拓時代の展示室に入る。
ピーナッツを食べながら、展示を見ていた少年は、年老いたネイティブ・アメリカンの像の前で立ち止まる。
魅せられたように近づいていくと、ネイティブ・アメリカンの目が動いた。
人形だとばかり思っていた少年は、驚いて、ピーナッツの袋を落としてしまう。
動き始めたネイティブ・アメリカンは、少年に「馬の準備は出来たか。」と聞く。
少年がマスクを取ると、「マスクは外すな。」と言い、ローン・レンジャーとトントの話を始める。

崖の上、馬に跨るトント。
ローン・レンジャーが合流し、町へ向かう。
そして、銀行強盗…。

少年が、ネイティブ・アメリカンに言う。「ローン・レンジャーとトントは、正義の味方だ。」と。


公開3日目の日曜日。地元T・ジョイ、11:50の回は、若いカップルから老いたカップルまで、年齢高めの男性グループに単独客、女性も多く、幅広い客層で80名ほどの観客。
字幕は、林完治さん。
高齢者は、TVシリーズを見ていた人たちだろうか。


映画の始まりが、1933年なのは、その年に、「ローン・レンジャー」のラジオドラマが始まったからだろう。
少年は、ラジオドラマのファンという設定なのだと思う。


1869年、生まれ故郷のコルビーへ向かう列車に、ジョン・リードは乗車していた。同じ列車には、囚人キャヴェンディッシュと、顔を白く塗ったコマンチ族の悪霊ハンターのトントが護送されていた。
キャヴェンディッシュを脱走させるため、配下が列車を襲う。
異変に気づき、ジョン・リードは車両を移動していく。
キャヴェンディッシュは、隠してあった銃で看守を射殺する。
スキを見て、トントは銃を奪い、キャヴェンディッシュを殺そうとするが、ジョン・リードに邪魔されてしまう。
そこにキャヴェンディッシュの配下が現れ、逃亡を許してしまう。

町の実力者レイサム・コールの命令で、ジョンの兄ダンをリーダーとするテキサス・レンジャーがキャヴェンディッシュ一味を追跡することななり、ジョンもそれに加わる。

テキサス・レンジャーたちは、裏切りにより全滅する。
そこに現れたトントは、レンジャーたちを埋葬するが、白馬が来て、ジョンの前に留まる。
それを見たトントは、ジョンを蘇生させる。

ジョンとトントは、2人の共通の敵であるキャヴェンディッシュを追うために共闘するが、法の裁きを受けさせたいジョンと、復讐を遂げたいトントは噛み合わない。
それでも助け合いながら、2人はキャヴェンディッシュ脱走の裏に潜む陰謀とダンの死の真相に近づいていく。


アクションの視点で見ると、馬上の銃撃戦は少なく、列車を使ったアクションが多い印象を受ける。
冒頭の脱走劇、クライマックスの印象が強いのかも知れないが、大陸横断鉄道が舞台で、列車内や鉄道に絡んだシーンが多いのは確かだ。
そういった点で、「パイレーツ・オブ・カリビアン」の船を、鉄道に置き換えたのがこの映画だと言えるかも知れない。


エンディングは、老いたネイティブ・アメリカンがスーツを着て、鞄を持って消える。頭の上のカラスが、夕闇迫る空、観覧車の上を飛んで行く。

ローン・レンジャーが、愛馬シルバーに跨り、前足を高く上げさせ、ハットを右手で掲げ、「ハイヨーシルバー!」と高らかに声を上げる。
「二度とするな。」と咎めるトント。
2人並んで、馬で荒野を駈ける。
エンディングロール。
BGMに文字だけのエンディングロールが終わると、勇壮な音楽が、緩やかテンポの、聞き方によっては哀愁のあるものに変わる。
荒野をよろけながら歩く、スーツを着た老いたネイティブ・アメリカンの後ろ姿。
エンディングロールが被さり、後ろ姿はだんだんと遠ざかっていく。

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