声が聞きたくて

一月。

そこそこ仕事も忙しく日々疲れた体を引きづっていた。

ユリがいたなら…

そう思う事もしばしば。

声が聞きたい。

でも連絡はとらないでおこう。

もし着信拒否されてたら気が滅入るし。

メールも送らなかった。

ここで線引きをしないといつまでも気持ちの整理がつかないと思ったからだ。

しかし毎日毎日頭に浮かぶのはユリの事ばかり。

自分でも驚くくらいに惚れ込んでいたのだろうか。

もしくはこれがしてはならない恋の代償なのか。

人目をはばかって妻以外の女性と関係をもったという甘く危険な経験が強烈な刺激となっていたからだろうか。

もうユリは地元に帰ってしまっている事が逢えない事実を作り上げていることだけがせめてもの救いだった。

そして二月。

忙しかった仕事も一段落した頃、無性にユリの声を聞きたくなった。

なぜだかわからない。

心が体がそう命令している。

気がつくと携帯でユリの電話番号の画面を出していた。

発信ボタンを押すか押さないか躊躇する事およそ10分。

人差し指はとうとう発信ボタンを押してしまった。