大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2016年10月18日 | 植物

<1754> 余聞・余話 「花の美しさ (ノアザミの例)」

     花の美しさは 花の色彩と造形の美しさである

       花の色彩乃至造形は 花の機能に基ずくところ

        いわゆる 花の美しさは 花の機能に由来する

 棚田の畦や道端などで見かけるノアザミの紅紫色の花は艶やかで美しい。咲き誇るこの花を見ていると、チョウやハナバチの仲間が代わるがわるやって来て花に触れて行く。アザミは典型的な虫媒花で、その花の艶やかさはやって来るこれらの虫たちへのアピールであり、虫たちを誘う仕組みによって存在している証の一つであるのがわかる。

 その花の状況は子孫を残すための生殖の仕組み、即ち、雄しべから雌しべへの花粉の授受を虫たちに委ねるための工夫であり、種の知恵による機能としてあるもので、その美しさはその機能を発揮するうえの彩りであり、形であるのが見て取れる。ノアザミの紅紫色の花冠はもちろんのこと、その形の美しさはノアザミにとってなくてはならない生殖器官としての美しさということになる。こうしたノアザミの花の機能を知ればそれがよくわかる。

                              

 ノアザミの花は多数の筒状の花を集めて総状に束ねた形の頭花として造形されている。その集められた多数の筒状の花の一つ一つに雄しべと雌しべの生殖器官が備わり、花を形づくっている。その雄しべと雌しべは実にうまく出来ていて自らに不利益な自家受粉を避けるような仕組みになっている。花はまず雄しべが先に熟し、雌しべが後から熟す雄性先孰の方法を実践している。

 このノアザミの筒状の花は一つ一つに葯筒があって、この葯筒が多数突起状に突き出し、花冠を美しく見せている。この葯筒が生殖機能として、雄性先孰を果している。少し詳しく言えば、葯筒に納まっている雄しべの花粉がチョウやハナバチなどの来訪を受け、これらの虫たちが葯筒に触れると、花糸が縮んで葯筒が下がり、花粉が葯筒より現れてチョウやハナバチたちの体にくっつく仕組みになっている。花粉をつけたチョウやハナバチたちは雌しべの熟した受粉態勢にある別の雌性期の花に移り、雄性期の花でくっつけた花粉を雌しべにつけて交配を成立させるという次第である。この仕組みは花に虫たちが来たときだけ花粉を出す、合理的なやり方であるノアザミの知恵だと言える。

 花は雄性期に花粉を出し切った後、雌性期に移り、同じ葯筒から花柱が伸び出して雌しべの働きが始まるので、このような生殖器官の仕組みによるノアザミの花における花粉の授受方式では同じ筒状花の交配は決して起こらず、自家による近親交配は避けられるということになる。これは花にとって実に有効な機能的特徴で、この特徴が花の造形に繋がり、ノアザミにおける花の美しさに現れているということになるわけである。

  これは一つの例であって、さまざまに存在するほかの花にも花の有する機能による美しさが認め得るところと言ってよい。 写真はノアザミの雄性期の花を訪れ、突起状の葯筒に触れるハナバチ。体に少しだが花粉がついている(左)と雌性期の花に触れるベニシジミ。もちろん、ノアザミの花は虫たちを誘いもてなす蜜を花の奥に持ち合せている。

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