大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2016年10月19日 | 植物

<1755> 大和の花 (65) ホトトギス (杜鵑草)                                                     ユリ科 ホトトギス属

  この項では大和地方に自生分布するユリ科ホトトギス属の仲間を紹介したいと思う。ホトトギスと言えば、独特の鳴き声で夏の到来を告げるカッコウ目カッコウ科の渡り鳥で、古来よりよく知られ、和歌などにも登場して来た。

        ほととぎすなくやさ月のあやめぐさあやめもしらぬこひもするかな                                                『古今和歌集』 恋歌・読人しらず

  この歌のごとく『万葉集』以来、その鳴き声は実によく歌に詠まれ、漢字では、杜鵑、杜宇、時鳥、不如帰、霍公鳥、郭公、蜀魂、子規、田鵑などと表記されて来た。ヒヨドリより一回り大きな鳥で、胸から腹にかけて白地に黒い斑紋が入る外見の特徴を持っている。

            

 植物のホトトギス(杜鵑草)は山地に生える多年草で、花に現れる斑紋からこの鳥の胸毛を連想してこの名がつけられたという。ユリ科に属する単子葉植物で、茎は普通枝分かれせず、茎の高さが1メートルほどになる。だが、葉や花の重みで横倒しになることが多く、崖地では垂れ下る。葉は楕円形から披針形まで変異が見られ、先端は尖り、其部は茎を抱く特徴がある。

  花は互生する葉の腋に1個から3個つき、上向きに開く。花期は8月から10月ごろで、6個ある花被片は内外とも斜開する。花全体に紅紫色の斑点があり、これをもってホトトギス(杜鵑)の名をもらったという次第で、植物の方は紛らわしくなるので草がつけられ、「杜鵑草」と記された。花被の内側の基部が黄色くなるのが見分けのポイントで、雄しべと雌しべが独特の形をした花を茎に連ねる。

  分布は関東地方以西、四国、九州で、大和(奈良県)にも自生する。園芸種は多く出回っているが、自生地は極めて限られ、絶滅危惧種にあげられ、自生の絶滅が心配されている花の一つである。 写真は大和郡山市の奈良県立大和民俗公園と御所市の山足で撮影したもので、ともに植栽起源と思われる。

      秋日和のどかなりける大和路は塔の眺めに稲穂稔れる

<1756> 大和の花 (66) ヤマジノホトトギス (山路の杜鵑草)                                  ユリ科 ホトトギス属

         

 ホトトギス属には二つのタイプが見られる。一つは花が上向きに咲くタイプ。今一つは花が下向きに咲くタイプである。このヤマジノホトトギスは前回紹介したホトトギスと同じく花が上向きに開くタイプである。その名にヤマジ(山路)と冠せられているとおり、山道でよく見かける多年草である。

  北海道の東北部を除き、全国的に分布し、大和(奈良県)においても県下全域の低山帯から深山にかけて見受けられる。花期は8月から10月ごろで、この時期に山を歩くと出会うことが出来る。高さは大きいもので60センチほど、茎には下向きの毛が密生する。

  茎の先や葉腋につく花は6個の花被片を有し、紅紫色の斑紋が見られる。これはホトトギスと同様であるが、花被片はホトトギスが斜開するのに対し、ヤマジノホトトギスは平開する。また、花糸や花柱にホトトギスのような斑紋がほとんど入らない特徴が見られる。 

  写真は花を咲かせるヤマジノホトトギス。花の中央に雄しべと雌しべが傘を開いている独特の形をしている(左2点)と落石防止の防護ネットから茎を伸ばし、多数の花をつけるヤマジノホトトギス(花被片が平開していることと花の内側の底に黄色い模様が見られないことからヤマジノホトトギスと見た)。ヤマジノホトトギでこれほど花を連ねているのは珍しい。

        止まらず過ぎゆく秋の日々速し

<1757> 大和の花 (67) ヤマホトトギス (山杜鵑草)                                               ユリ科 ホトトギス属

                                                      

  山地の林内や林縁などに生える多年草で、高さは大きいもので80センチほどになり、葉は楕円形で先が尖る。花期は7月から9月ごろで、ヤマジノホトトギスと同じような花を散房状花序につけるが、花被片が平開するヤマジノホトトギスに対し、ヤマホトトギスでは下向きに反り返る。

  自生の分布は北海道の東北部を除く、全国的で、これはヤマジノホトトギスと全く似るところであるが、個体数の違いが歴然としてあり、大和(奈良県)におけるヤマホトトギスは稀にしか見られず、レッドリストの希少種にあげられている。 写真は木漏れ日を受けて自らの葉に影を落とすヤマホトトギスの花(左・上北山村の山中で)と散房状の花序に反り返った花被片の花を咲かせるヤマホトトギス(右・金剛山で)。

        大きい秋が言いました

        小さい秋が寄り合って

        大きい秋を奏でます

        小さい秋が言いました

        大きい秋に包まれて

        小さい秋は歌います

        みな同じ秋 秋が来て

        秋はほどよく野に山に

        そして 私の心にも

<1758> 大和の花 (68) キイジョウロウホトトギス (紀伊上臈杜鵑草)                        ユリ科 ホトトギス属

                                            

  花が下向きに咲くタイプのホトトギスで、この種のホトトギスは黄色い花を咲かせる。分布は極めて狭い地域に限られ、その名に地名のついているものが多い。キイジョウロウホトトギス(紀伊上臈杜鵑草)もその一つで、分布は和歌山県と三重県、それに奈良県の十津川村の南部域に限られ、紀伊半島南部特産の固有種として知られる。キイジョウロウ(紀伊上臈)にこの意味がよく表されている。ジョウロウ(上臈)は地位の高い貴品を示しているのであろう。

  「水がしたたる岩壁などに垂下して生育するやや大型の多年生草本で、9月末から10月初めにかけて長さ3~4cmの鮮黄色の花を葉腋に一個ずつつける」と『大切にしたい奈良県の野生動植物』に記されている絶滅危惧種である。園芸採取の嵐に曝され、激減したようであるが、道路壁面の防護ネット内などで生き延びているのを見ると、環境の変化に負けないで頑張っている姿が感じられたりする。 写真は湿った崖地に垂れ下って黄色い花を咲かせるキイジョウロウホトトギス(十津川村で)。

         秋の花 

         秋を奏でている花は

         ゆく秋ゆえに

         身に沁みる

         一つ一つに 点る秋

         ああ 秋ゆえに

         秋の花

<1759> 大和の花 (69) チャボホトトギス (矮鶏杜鵑草)                                         ユリ科 ホトトギス属

                                

  チャボ(矮鶏)は小型のニワトリで、宮崎県に自生するキバナノホトトギス(黄花の杜鵑草)の矮小型と考えられるところから、この小型のニワトリの名を冠して命名された多年草である。東海地方から紀伊半島南部、四国、九州南部に分布する襲速紀要素系の植物で、大和(奈良県)では十津川村の南部の山中で見かけられるが、個体数が極めて少なく、絶滅危惧種にあげられている。

  その名のとおり、ホトトギス属の仲間の中では最も小さく、斑紋のある長楕円形の葉が地表に貼りつくように生える。花期は8、9月ごろで、茎頂や葉腋に6花被片からなるレモンイエローの花を1、2個上向きに咲かせる。花にも視褐色の斑紋が入る。葉はよく虫に食われ、まともな個体に出会うのはなかなか難しいところがある。如何なる虫か、虫にとってチャボホトトギスの葉は美味なのだろう。 写真は花を咲かせるチャボホトトギス(十津川村の山中で)。

        山頂に点りし秋は日を追いて下り来るなり木々を染めつつ

 

 

 

 

 

 

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