大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2016年11月18日 | 植物

<1785> 大和の花 (86) ギシギシ (羊蹄)                                                           タデ科 ギシギシ属

                                                              

  全国各地の道端や川岸、原野などの少し湿り気のあるところに生える多年草で、在来と外来が見られ、最近は外来のナガバギシギシ(長葉羊蹄)、アレチギシギシ(荒地羊蹄)、エゾノギシギシ(蝦夷の羊蹄)などが勢力を広げている。在来のギシギシは高さが1メートルほど。葉は長楕円形で波打つが、在来と外来で波の打ち方が異なり、在来のギシギシでは大きく、外来の方は細かい特徴が見られる。

  ギシギシの花期は6月から8月ごろで、茎の上部に総状花序を多数出し、淡緑色の小花を輪生状に密につける。小花はそれぞれに内花被片が翼状に広がり、真ん中には実が含まれ、そこが膨らむ。ギシギシでは翼が広卵形になり縁に粗い鋸歯がある。羊蹄(ようてい)は漢名で、和名はこれをギシギシと読ませている。これは実が膨らむ内花被片の形に羊の蹄(ひづめ)を連想したのだろう。これをギシギシとは奇妙な名であるが、これも花序につく多数の花と実の姿に由来するのではないかと想像される。つまり、ギシギシは「ぎちぎち」と同じく、いっぱいで密に咲く花や実がついている「ぎっしり」の意から来ていると察せられる。

  ギシギシは仲間のイタドリ(虎杖)やスイバ(酸葉)ほどではないが、昔は暮らしに身近な植物としてよく利用されて来た形跡がある。瑞々しい若芽は食用にされ、黄色く粗大な根は羊蹄根(ようていこん)と呼ばれ、薬用植物の大黄(だいおう)の代用として下剤に用いられた時代があった。いんきん、たむしなどの皮膚病にも根を摺り下ろして患部に塗った。また、染色にも利用され、鉄媒染によってネズミ色を得たと言われる。写真は花を咲かせるナガバギシギシ(左)と花の後、翼状に広がる実を抱いた内花被をびっしりつけたギシギシ。   和のこころ障子に差せる冬日かな

<1786> 大和の花 (87) スイバ (酸葉)                                                        タデ科 ギシギシ属

            

  路傍や田んぼの畦など身近なところに見られるギシギシの仲間の多年草で、全国的に分布する。茎の高さは大きいもので1メートルほど。葉は長さが10センチほどになる長楕円状披針形で、基部はやや切り形になり、茎の上部につく葉は茎を抱く。この茎や葉にはシュウ酸が含まれ、酸っぱいので酸い葉の意によりこの名がある。多くの地方名にもスカンボ、シート、スイスイ、スイッパといったようにこの葉の酸味に由来してつけられた名が目につく。古名はスシで、これも「酸い」の古語「酸し」から来ている。学名の小種名も酸っぱい意によっている。

  漢名は酸模(さんも)で、漢方では根を干したものを酸模根(さんもこん)と呼び、これもシュ―酸を含む酸っぱい意による。これを煎じて服用すれば便秘に効能があると言われ、生の根を摺り下ろし、たむしなどの皮膚病の患部に塗ることはギシギシに似る。また、若芽をゆでて酸味を除き、和え物などにして食べた。スイバは今や全くの雑草であるが、昔は薬用食用にして来た身近な植物だったことが言える。ただ、生のものを多量に食べると下痢や嘔吐などの中毒症状を来たす恐れがあるので注意が必要とも言われて来た。戦後間もないころ、岡山の我が実家ではスイバの酸っぱい茎や葉を刻んで、潰した牡蠣殻に混ぜてニワトリに与えていたのを覚えている。

  花期は5月から8月ごろで、ギシギシに似て茎の上部に総状花序を出し、多数の小花を密につける。雌雄異株で、花どきには花序が淡緑色に見えるものと、赤っぽく見えるものとがあり、赤っぽい雌株は果期に入ると実を含む内花被が翼状に張り出し、その部分が鮮やかな紅色になるので美しく見える。花は夏が主であるが、季題は春である。 写真は棚田の畦を被って咲くスイバ(左)。多数の花を咲かせる雌株(中)。ともに御所市で。内花被が翼状に張り出し赤味を帯びて美しい雌株の花序(右)。    冬日差す障子明かりに花図鑑開けば春のたけなはの花

<1787> 大和の花 (88) イタドリ (虎杖)                                                         タデ科 タデ属

                               

  再びタデ属の紹介。全国各地の山野に見られる大型の多年草で、高さは1.5メートルほど。茎は中空で、表面には紅紫色の斑点が見られ、成長すると木質化し、低木状になる。葉は卵状楕円形で先が鋭く尖る。雌雄異株で、花期は7月から10月ごろ。分枝した多くの枝先や葉腋に花序を出し、小花を多数つける。小花の花被は白色から淡紅色まで微妙な違いが見られる。雌雄は見分け難いが、雄花では雌しべが小さく、雌花では雄しべが小さい。花の後、雌花は花被片3個が翼状に張り出し、実を包む。花や実が赤味を帯びるものはベニイタドリ(紅虎杖)、またはメイゲツソウ(明月草)と呼ばれる。

  アスパラガスの若芽に似る紅紫色の斑点があるイタドリの若い茎は春の山菜としてよく知られ、少し酸っぱいが、生で食べたり、塩漬けや味噌和えにして食べたりする。現代短歌にも「すかんぽのくきをかみつつともがきと明日香の里をたずねゆくなり」(松村健一)というような歌も見える。薬用としても認められ、「イタドリの名は痛取りから」という説があるほどである。転んで擦り傷をしたときなどに若い茎の汁を患部につけると出血が止まり、痛みも取れると薬草図鑑にはある。また、漢方では根を掘り取って干したものを虎杖根(こじょうこん)と称し、煎じて服用すれば、便秘やじんましんに薬効があると言われる。

  このようにイタドリは古来より有用植物として親近感を持たれて来た身近な庶民派の植物で、地方名の多いのも群を抜き、前述の短歌に見られるスカンポをはじめ、スカンボ、スッポン、カッポン、イタズリ、イタズロ、イッタンコ、スッポ、セージ、タンジ、サシトリ等々、植物の地方名をまとめた『日本植物方言成集』(八坂書房)によれば、その名は七百以上に及ぶ。まさに、その多いのはギネスものと言えるほどである。 写真は花を枝木いっぱいに咲かせるイタドリ(左)、ベニイタドリの若い実(中)、地中から伸び出した春の若芽(右)。   咲き残る花も枯れゆく時の瀬に

<1788> 大和の花 (89) イシミカワ (石見川)                                                    タデ科 タデ属

                           

  全国的に分布するタデの仲間の1年草で、道端、田の畦、林縁などに生える。茎は2メートルほどに伸び、鋭い下向きの棘によって他の草や木に絡みつく。葉は三角形で互生し、葉柄は葉の基部に楯状につく。茎につく托葉鞘は葉のように広がり茎を囲んで円形になる。

  花期は7月から10月ごろで、茎の先端や葉腋に短い総状花序を出し、淡緑色の小花を10数個つける。花序の基部には葉のような円形の苞がつき、よく目につく。5裂する小花の花被は多肉になり、痩果(そうか)を包んで直径3ミリほどの球形になる。これが集合し淡緑色から紅紫色に移り、青藍色に変化して熟す。痩果は光沢のある黒色である。

 漢名は杠板帰(こうばんき)と称し、薬用植物として江戸時代のころから知られているが、イシミカワの語源については定かでない。杠板帰は中国で広く知られ、全草を日干しにし、煎じて服用し、利尿、解熱、下痢止めに用いて来た。また、腫れものには患部をこの煎汁で洗うのもよいという。 写真は青藍色に変化した花被に包まれ集合してつくイシミカワの実。茎には棘が見える(葛城山の林縁で)。  霜月や刈田にありて鴉二羽

 

 

 

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