<2168> 余聞、余話 「師走寒波」
紅葉の終はらぬ先に寒波来る
今冬初の寒波は日本列島をすっぽり被い、大和地方も朝から強い季節風が吹き、周囲の青垣山には冬雲が厚くかかり、平野部にはまだ紅葉の残る大和国中ではあるが、真冬を思わせる一日になった。まさしく師走寒波ということで、この三、四日の季節的天侯の変化に合せ、俳句を試みてみた。まずは昨日以前の穏やかな日の五句。
鴨が来て水面の紅葉騒立てり
冬日差す熟柿いよいよ熟しゐる
遅速ありここにも見えて散る落葉
群雀の斜めに墜ちて刈田の夕
草紅葉明日は寒波が来るといふ
今日は一転、木枯らしの吹き荒ぶ寒い一日となり、身の縮こまるほどで、冬本番を思わせるところがあった。この寒さは北極の寒気団が張り出した影響によるものらしく、当分続くという。どちらにしても、冬はこれからである。では、この寒さに寄せて五句。 写真は紅葉を映す水面から飛び立つカモ(左)と奈良盆地被いかかる冬雲(右)。
照り翳る大和平野の冬の色
寒風や工場(こうば)の煙一文字
木枯らしや大和に龍田 風の神
団栗は落葉掛け寝に寝るのかな
木枯らしも騒がしき世も身に及ぶ