団塊タケちゃんの施術日記

一人二人生の旅立ち

「弁護士余り」は国策だったとは!

2012-03-27 10:14:34 | 社会・経済

「弁護士もつらいよ」とつぶやいた後、図書館で借りた「いったい、この国はどうなってしまったのか!」(2003年4月発刊、NHK出版)を読んだら、「弁護士余り」になった背景に国策があったことを知りました。この本は、元共同通信の司法記者だった魚住昭さんと、週刊文春などの元記者でフリージャーナリストの斎藤貴男が雑誌「ダカーポ」に連載した「メディア時評」をまとめたものです。

魚住さんは「司法制度改革の大きな狙いに弁護士層の解体がある」と指摘します。法科大学院を創設し、毎年の司法試験の目標合格者数を3000人とし、「2割司法」(トラブルの2割しか裁判で争われず、残り8割は泣き寝入りか、暴力団に頼んでいるとの見解)を改善したいと始まった司法制度改革の目的が「弁護士層の解体」であれば、「弁護士余り」の現状はまさに政府側の思うとおりの事態になっているわけです。

魚住さんは「弁護士層は戦後民主主義の強固な担い手集団で、弁護士約2万人の何割かは人権意識を持って仕事をしてきた。国にとってそれが邪魔で邪魔でしょうがない。弁護士層をどうやったら解体できるか、弁護士を増やし、競争が激化すれば、人権問題に熱心に取り組む弁護士の層が極めて薄くなるし、食っていけなくなるから、金もうけを考えなければならなくなる」と話していました。

斎藤さんは「比較的教育程度が高くて、必ずしも体制に与していない職業層がいくつかあり、代表的なのが弁護士であり、マスコミであり、大学の教員、学校の教職員だった。これらの層がことごとく体制に取り込まれていく流れがとても気になる」と訴えていました。

今回は弁護士に限って言及すると、国策の狙いは大成功だったと思います。日本弁護士連合会の登録弁護士数は2012年3月現在で3万2107人で、ここ10年間で1万人以上増えました。弁護士事務所に机を置かせてもらうものの、給料も先輩弁護士の指導もない「軒弁」どころか、いまは「宅弁」といって弁護士事務所に机も置かせてもらえず、自宅で開業する一人弁護士が増えているそうです。実務経験が乏しい「宅弁」に依頼するところはないので、大部分の「宅弁」はとても食べていけない現状といいます。

法科大学院は74校が設立されましたが、受験者が定員に満たないところが続出し、閉校した大学院も出ています。法科大学院ができたことで、大学教授OBらが専任教員として1721人が就任したほか、文部科学省、法務省の役人が職員として多数天下っています。

新聞やテレビは当時、司法制度改革を「開かれた司法」と絶賛していました。批判的な記事を読んだ記憶がありません。こうした背景が分かっていながら、書かなかったということはマスコミはとっくに体制に取り組まれていたということでしょうか。マスコミに在籍していた私としては信じたくない話ですが、原発報道を見ると「そうなってしまったのか」と肯かなければならないのが悔しくてなりません。

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