70代半ばの男性は、夫婦で紙を裁断する仕事をしています。男性の一番の心配事は、大きな病気や大ケガをして寝たきりになることです。「妻や子どもたちに迷惑をかけるようなことにはなりたくない」といいます。
そんなことを奥さんに伝えると、「寝たきりになったら、そのとき、どうするか考えましょう」のひとことでした。
また、ペーパーレスが年々、進んできており、「仕事がなくなったら、と考えると、不安で夜眠れなくなる」とも話します。奥さんに話したら、同じ答えが返ってきます。「今はなんとかあるから、仕事をしましょう。もし、注文が来なくなったら、そのとき考えましょう」
私のカミさんも将来の不安を話すと、「そのとき、考えましょう」で終わりです。「女は強い」です。
私と同世代の男性の患者さんを見ていても、老眼が進んだのか、療養費の申請書に署名をするとき、目を用紙に思いっきり近づけて書く人がおられます。老人性難聴が進んでしまい「右耳は良く聞こえないから、左耳に話して」という方もおられます。私が近い将来、そうならない保証はありません。
「大地震が起こったら」「暴走者にはねられたら」「無差別殺人に遭ったら」。さまざまな災難が起こることも、ありうることです。でも、考え抜いても、想定しなければならない事態があり過ぎて、対策は立てられません。
大まかに考えておいて、あとは起こったときに、臨機応変で対応するしかありません。それこそ「そのとき、考えましょう」です。