株式日記と経済展望

株式をはじめ政治経済外交文化歴史などの論評です。

辞める人がいないため、東芝で中途採用の社員に会ったことがありません。

2017年02月27日 | 経済

辞める人がいないため、東芝で中途採用の社員に会ったことがありません。
東電の約5万人の社員にも中途入社の社員は一人もいなかったそうです。


2017年2月27日 月曜日

東芝問題の裏に隠された本当の問題 2月29日 宋文洲

15年前、私は東芝の経営陣と公私両方の付き合いがありました。お世辞抜きにとても素晴らしい方々でしたし、人間的に尊敬できました。

東芝は本当に良いリーダーが居て良い企業でした。そんな東芝がこうなるとは驚きです。本当かと疑うほどです。凋落組織は凋落のリーダーを生み出し、凋落のリーダーがさらに組織を凋落させる。これはあらゆる組織が凋落する際の軌跡です。

東芝の凋落は15年前から兆候がありました。東芝のある役員から「宋さん、当社には2千人も博士がいる。人材の宝庫だからもっと伸びてもいいはず。」と言われた時、私は「人材が多すぎて倉庫になったのでは。少しでも我々のような新興企業に分流すればお互いが助かります。」と答えました。

しかし、名門企業に入った社員が中小企業に来るはずがありません。東電、東芝、シャープ、ソニーなどの名門にいる社員達は「自分が誰か」よりも「自分がどこに属するか」のほうが大切です。自分がどう生きるかではなく、どうやって無事に退職できるか、どうやって組織内のピラミッドをよじ登るかが彼らの目標です。

辞める人がいないため、東芝で中途採用の社員に会ったことがありません。話によると東電の約5万人の社員にも中途入社の社員は一人もいなかったそうです。自社しか知らない、自社にしか適応できない社員の中から誕生した社長が、大きな井の中の一番大きな蛙であり、ガラパゴス島の王者です。人脈が広いが、視野が狭い。順風に強いが、逆風に弱い。気が大きいが、肝が小さい・・・。

昨年、事故防止の義務を怠ったことで東電の旧経営陣が東京地裁に強制起訴されました。しかし、事故対応の詳細を調べてみると、事故の被害が拡大した最初の5日間に旧経営陣が頼ったのはまさに弁護士でした。どうやって事故の被害を止めるかよりも、どうやって法的リスクを減らすかを懸命に弁護士と相談していたのです。「義務の怠慢」で起訴されるとはまったくの「想定外」でしょう。

読者の皆さんはすぐ「だから東電はダメだ」とか「だから東芝が落ちた」と言うかもしれませんが、これは中小企業を含む多くの日本企業の共通点です。経営目標実現のための法律相談よりも、保身のための法律相談が多いのです。中小企業なのに海外企業との契約書の審査に数週間もかける現実をみて、私は呆れてもう彼らにビジネスを紹介する気にもなりません。

弁護士は法的リスクの有無と大小を教えてくれますが、経営を教えてはくれません。リスクを嫌う日本的経営者が弁護士や専門家に回避対策を求めているうちに、経営リスクがどんどん次のリーダーに先送りされます。このリスクのリレーがやがて限界に達して爆発してしまうのです。それが原発事故の本質であり、東芝危機の本質であり、築地市場移転問題の本質でもあります。

東京地裁が東電を「義務の怠慢」として起訴していますが、そもそも日本企業は正社員と個別に労働契約を結ばないため、義務を明確に定めていないのです。明確な契約が存在せず年収が途上国よりも低いのが日本の経営者の特徴です。無事に社長任期を終え、会長や名誉会長で長く居座ることで終身報酬を増やそうとする彼らも哀れです。

個別経営者の素質問題として東電や東芝への批判が多いのですが、これらの経営者は最近まで年金運用株の代表格であり国策と二人三脚を演じてきた名門企業のリーダー達です。彼らは決して特別に悪い人たちではありません。彼らをいくら批判しても、なぜ世界的名門企業が次々凋落するか、なぜ世界的新興企業がなかなか誕生しないかという疑問は解けません。東芝問題の裏に隠された日本企業のガラパゴス化こそ、本当の問題なのです。


(私のコメント)

シャープ、東芝、東京電力と、日本の名門企業が次々とおかしくなってきています。日本の学校では、一流大学を出て一流企業に就職できれば、あとは終身雇用と年功序列で恵まれた生活が保証されてきました。だから東芝や東電などの企業は、一流大学からごっそりと新卒者を採用して、中小企業には優秀な人が来ません。

東芝には2000人もの博士がいるそうですが、その割には業績がパッとしないのはなぜなのでしょうか。一流大企業ともなれば自分のやりたい研究もできなくなり、経営者からは直ぐに業績となるような研究が求められる。しかし経営者が自己保身に走って事なかれ主義では会社も傾いて行く。

東芝では4年ごとに会社社長が代わっては何もできないだろう。その中で一人がおかしな事をやれば、それを修正することは難しい。社長を退任しても名誉会長とか顧問とか相談役として何時までも会社に残るからだ。だから粉飾決算がわかったとしてもなかなか修正ができない。原子力発電事業も一旦決めてしまうと不味いと分かっても撤退は無理だろう。

日立などでは社長の任期は8年程度であり、そうでないと会社の方針を大きく変えることは無理だろう。年功序列人事だから社長候補が沢山いれば短期の社長になるのは自然の流れになる。しかし社長は年功で成れるものではなく、社長適任者は10年に一人くらいがいいところだろう。

日本企業の人事制度は年功人事だから、途中入社や途中退社する事はほとんどなく、純粋培養された社員ばかりになり、風通しの悪い社風になってしまう。入社した当時が優秀な人材でも、使い潰されて中年になると他社では使い物にならないスクラップ社員になってしまう。

アメリカなどでは優秀な人材ほど独立起業するのに、日本では寄らば大樹の影であり独立起業を嫌がる。だから事なかれ的になり冒険をしなくなる。それでは能力が磨かれることはなく、優れた能力も錆び付いていく。東芝などで不思議なのはメーカーなのに技術者が社長になることが少なく、管理屋が社長になっていることだ。

経理のことが分かっても技術のことが分からなければ新製品が作れないだろう。東芝にしても東京電力にしても、原子力発電が分からなければ、事故が起きれば、とんでもない事になることは想定できることだ。しかし東電の清水社長は総務畑の社長であり原子力がわからなかった。

原発災害でも、東電や経産省の対応は事故の収束よりも自己保身が優先されて、「想定外」を連発した。どうやって責任逃れをするかばかりやっているから大事故につながってしまった。だから東電の勝又会長は津波対策に対する勧告を聞いていなかったと責任逃れをした。しかし民間会社に原子力発電を任せた国の責任は大きい。一旦大事故が起きれば民間会社ではどうにもならないことは現実が示している。

問題の根源が、日本の会社の人事制度に問題が有り、専門家を育てず、また技術の専門家がメーカーの社長になれないシステムはおかしい。サービス業などの会社でもコンピューターのことが分からなければ、流通革命に追いついていくことは不可能だろう。

しかしコンピューターに詳しい人材を採用しようとしても、東芝や三菱や日立は技術者を手放そうとなしないでしょう。いたとしても韓国や中国などの会社にスカウトされて中小企業には回ってこない。

コメント (10)   トラックバック (1)
この記事をはてなブックマークに追加