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実は終身雇用というのはそれ自体、考えないまま決められた前例踏襲する人材を量産する装置

2017年04月30日 | 経済

 

実は終身雇用というのはそれ自体、考えないまま決められた
やり方でひたすら前例踏襲する人材を量産する装置でもあります


2017年4月30日 日曜日

東芝ってどうして今さら自社株を社員に買わせてるの?と思った時に読む話 4月27日 城繁幸

今週のメルマガの前半部の紹介です。先日、経営危機で上場維持の危ぶまれている東芝が、自社株の購入を従業員にすすめていることが話題となりました。先行きの全く見通せない中で新たに買わせるとはどういうことかと従業員も怒っているそうです。そりゃそうですね、既に持ってる分も大損でしょうし。

【参考リンク】東芝、社員に自社株購入呼び掛け 下落で含み損…「モラル疑う」と反発

ただし、会社として悪意があったかというと筆者はそうは思いません。まして社員に買い支えさせるとか何かの踏み絵にするなんて意図も皆無でしょう。では、なぜこのタイミングで自社株買いの呼びかけをしたのか。単に「何にも考えてなかったから」というのが答えでしょう。

今回の件からは、大組織が陥りやすい体質的な問題がうっすらと浮かんで見えます。そしてそれは、個人のキャリアデザインとも直接的につながる重要なテーマでもあります。良い機会なのでまとめておきましょう。

大組織によくいる「何も考えずに行動する人たち」

大組織には「頭を使って考えずに仕事をする人たち」というのが一定数存在します。と書くと「犬や猫じゃあるまいし、そんなの無理だよ」と思う人もいるかもしれませんが、ここで言う「頭を使う」というのは、新しいこと、まだ起きていないことについて考える、思いを巡らせる、くらいの意味です。

たとえば、こういうことです。毎月、社内の関連部署から数字を拾ってエクセルに突っ込んで、いつも役員に提出しているレポートの数字と日付だけちょろっと更新して部課長のハンコもらって提出する仕事は、上記の定義で言うと「考えない仕事」になります。たぶん二日酔いや風邪で頭ふらふらでもできますし、アシスタントに30分くらいレクチャーすればやってもらえるでしょう。

一方、「〇〇事業部は異常に残業時間が多いから面談して体調チェックしつつ、長時間残業発生の原因も調査して対策を講じる」とか「社内で40代のメンタルトラブルが急増しているため原因の調査と対策を考える」なんて仕事は、これから手を付けないといけないから上記で言う「考える仕事」なわけです。

営業でいえば、既存の取引先を回ってお茶飲んで帰る仕事が前者、見積書を作って新規開拓を目指して飛び込み営業するのが後者になりますね。その人の業務の中でどれくらい考えない仕事が占めるのかは人によりますが、筆者の感覚で言うと、大組織の業務の半分くらいは、考えない仕事、いわゆるルーチンワークが占めているように感じます。

フォローしておくと、通常業務がルーチン化されているというのは素晴らしいことでもあります。その会社の技術力や看板といった要素が高く評価されている証拠ですから。ただし、変化に対して、時にそうした組織は脆弱さを露呈します。今回の件も、先行きも全く読めない中で自社株買いの募集をかければどうなるのか想像しないまま、本社管理部門が決められた手順にのっとっていつものようにルーチンワークしてしまったというだけの話でしょう。この業務に関しては誰も「考えてなかった」ということです。

ではなぜ、人は組織の中では考えることを辞めるのでしょうか。実は終身雇用というのはそれ自体、考えないまま決められたやり方でひたすら前例踏襲する人材を量産する装置でもあります。大きなリターンもクビになるリスクもない環境では、それがもっとも合理的な行動だからです



(私のコメント)

安定した雇用関係というのは好ましいことであり理想ではあるのですが、変化の激しい現代社会ではそれに適応できない状況になりやすい。高度成長期が長く続いた時には終身雇用年功序列はうまく機能した。しかし日本の景気が長期に低迷するようになると、終身雇用年功序列制度は会社にマイナスの影響をもたらし始めた。

国際的なコスト競争では円高などの影響もあり勝てなくなり、多角化した事業も選択と集中が求められるようになり、リストラによって不要な部門が沢山出来たが、終身雇用制度では整理がなかなか進まなかった。不採算部門の整理が進まずコスト競争にも足を引っ張る結果となりリストラの遅れにつながった。

会社の経営幹部も、業績の長期低迷に対して大胆なリストラが求められましたが、新しい成長部門を作ることができなかった。画期的な新商品ができなければコスト競争に巻き込まれることになり、テレビやパソコンやスマートフォンなどの主力商品は韓国や台湾や中国などのメーカーにコスト競争に敗れてしまった。

なぜ画期的な新商品が生まれないかといえば、これも年功序列終身雇用制度が考えない社員を作り出してきたからだろう。これからどのような分野が伸びるかは、技術的な進歩などが読める人材でしかわからず、液晶パネルなどは完成された技術で有り、有機ELなどは開発を打ち切ってしまった。

東芝も、「原子力ルネッサンス」に賭けましたが、高まる安全性へのコスト高で原発そのものが時代遅れになってしまった。スリーマイルやチェルノブイリや福島などの大事故は原発の根幹に関わる問題だった。東芝も考えない社員の弊害が会社をダメにしたのであり、「通常業務がルーチン化されている」仕事が多くなっていったのだろう。

大組織というのは、考えない人物を作り出す装置のようなものであり、「通常業務がルーチン化されている」業務に適している。お役所仕事のようになり前例を踏襲することが当たり前になる。要するに一生懸命仕事はしているが定形作業であり何も考えなくても仕事ができる。

しかし現代の技術は日進月歩であり、IT革命やAI革命などが押し寄せており、大企業ほどこのような変革に適応ができなくて立ち往生している。日本のホワイトカラーの生産性が低いのはITを有効活用することに遅れているからだろう。製造業でのIT化が進んでいるのに事務作業の効率化が遅れて残業が常態化している。

これらの考えない社員がもたらすものであり、やらなくていい仕事を一生懸命やっているように見える。サービス業の効率化も国際競争に晒されにくいから遅れがちであり、過剰なサービスや低価格競争によって生産性は落ち続けている。他と同じことをしているからそうなるのですが、考えることをしていない。

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