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VWグループは「デジタル化」「電気自動車(EV)化」を発表した。人材の入れ替えは、容易ではない。

2016年12月13日 | 経済

VWグループは「デジタル化」「電気自動車(EV)化」を発表した。
構造が異なるバッテリー技術、人材の入れ替えは、容易ではない。


2016年12月13日 火曜日

独インゴルシュタットが映す、ポストディーゼルの転換期 12月13日 シュヴァルツァー節子

 苦境のアウディ、そしてVWグループに残されている道は、いち早くポストディーゼルに乗り出す他ない。

 11月18日、VWグループは「デジタル化」「電気自動車(EV)化」を発表した。これらの方針をもとに、ポストディーゼルとして、EV生産に本格的に乗り出すことを明言した。その中のグループ戦略として、アウディは、ライバルのダイムラーやBMWらと協力してドイツ国内400カ所に、EVの充電設備を敷設する。

 しかし、肝心のEVの開発は遅れている。加えて、これからむこう10年間足らずで、アウディを含むVWグループが大きくEV中心へと変化するかどうか、筆者には大きな疑問が残る。長らくガソリン及びディーゼルエンジンをビジネスの柱としてきたVWにとっては、構造が大きく異なるバッテリー技術、それを担う人材の入れ替えは、容易ではない。

  EVの構造、エンジニアリングのコンセプトは、ガソリン、ディーゼル車とは比較にならないほどシンプルだ。主役は電気モーターとバッテリー。ディーゼルインジェクター、ノズルなどの複雑な部品やコンポーネントは必要ない。極端な話、走行パワーに注文さえつけなければ、電気モーターとバッテリーのついた車軸に、VWのビートル、ポルシェのカレラといったボディーを好みで載せればいい。

 その一方で、シンプルさゆえに、プライドを持って開発してきた従来車のエンジニアとしての面目が台無しになってしまう。この致命的な心理的打撃が、EVへの切り替えを遅らせてきたことは、否めない。

 実は、VWは、今回のスキャンダルが発覚する前、2010年から、自社製リチウムイオン・バッテリー電極成分の研究は続けている。電池の専門技術を保有するVarta(ヴァルタ)と共同出資し、Volkswagen Varta Microbattery GmbH(フォルクスワーゲン・ヴァルタ・マイクロバッテリー)を設立、EVの要となるバッテリー開発を進めている。

 同社を筆頭に、VW内部でも、電池技術を意欲的に開発するエンジニアは、存在する。彼らは日本の高水準のバッテリー技術に敬意を払い、日本からの専門家たちとの議論にも前向きだ。

 日本のリチウムイオン電池技術をドイツの自動車業界に紹介していた筆者には、印象深い思い出がある。2008年から2009年にかけて、当時VWの技術開発トップだったユルゲン・レオホルド氏と、アウディで同分野の最高責任者であったヴィリベルト・シュロイター氏に、車搭載用の日本のリチウムイオン電池について様々なプレゼンを行った。

 技術者として彼らの関心は高く、小さな会議室に入り切らないほどの関係者が集まった。技術に熱心に耳を傾けていたことを覚えている。

 ところが、サンプルの購入段階になると、途端に話が進まなくなった。後に聞くと、経営陣からのストップがかかったのだという。現在に至るEVへの取り組みは、一事が万事、このような状況だったと推察できる。

 今もVWの実権を握るといわれるフェルディナンド・ピエヒ氏。その体には、「血ではなく、ガソリンとディーゼルが、流れている」としばしば言われるが、このような体質の会社に電池の話を持ち込むのは、文字通り電気ショックを与えるに等しい。従って、アリバイとしてのEV化はあっても、本気では取り組まない、という暗黙の了解が社内に蔓延していたように思える。

産業構造の変化は都市にも及ぶ

 おそらく、今回のスキャンダルが発覚しなければ、VWは、今も変わらずガソリンとディーゼルエンジン主体の開発路線を続けていただろう。VWだけでなく、ダイムラー、BMWといった他のメーカーも然り。巨大な自動車産業は、多くのサプライヤーの雇用という経済への影響が大きいだけに、これまで築き上げてきたその経済圏を簡単に変えることはできなかった。

 しかし、状況は今、大きく変わった。エンジン車からEVへの転換を推進するとVWグループが宣言した以上、自動車業界に属してきた人々の生活に影響を与えるのは間違いないだろう。

 具体的に言えば、生活の糧となる収入が激減することは、避けられない。ドイツ人が認めたくはない、不都合な真実ではあるが、VWグループが今回明らかにした人員削減策は、それが現実のものとなりつつあることを示している。

 自動車メーカーのポストディーゼルへの動きは、間違いなくドイツ国内の産業構造を大きく変える。その変化は、自動車メーカーの城下町として栄えてきた都市も免れることはできない。冒頭のインゴルシュタットの風景は、自動車に依存してきたドイツの都市の多くがこれから直面する姿とも言える。

 大きな転換点の中で、都市行政や市民は、何をすべきだろうか。大切なのは、自分自身の生活の在り方を冷静に俯瞰して見ることだろう。エネルギー資源節約を通し、環境に配慮しなければ、生活を持続できないという現実をしっかりと直視しなければならない。その過程で、市民は自ずとEVあるいは、燃料電池車の時代に踏み出さなければならないことに、気づくはずである。

 「ディーゼル車」への信頼が失われた今、自動車業界は、市民とこぞって、何らかの形での次世代の生活形態を模索しなければならない。売り上げ台数を成長の中心指標とするスタンスを改め、環境とバランスのとれた良識ある消費について考え直す必要がある。

 「環境・自然に配慮したモビリティー社会」の実現に挑戦する姿勢が、ドイツの自動車業界と、インゴルシュタットを代表とするドイツの行政に何よりも必要となっている。



(私のコメント)

自動車の世界にも、電動化やデジタル化の波が押し寄せていますが、ガソリンやディーゼルエンジンで走る自動車は、2030年頃には排気ガス対策などで売る事が出来ないような状況になっているかもしれない。だからドイツの自動車メーカーも電動化に大きくシフトする事が求められている。

しかし電気自動車は、充電や航続距離などに大きな制約があり、リチウム電池などのコストも高くなる。画期的な自動車用バッテリーが出来れば別だが、当面は電気自動車へ一気にシフトする事はないだろう。世界的に見ればガソリン車よりも高性能で安く出来るようにならなければ普及は難しいだろう。

当面はハイブリッド車が主流になるのではないかと私は考えていますが、ガソリンエンジンと電動モーターを載せるわけだから重たくなり構造も複雑になる。ハイブリッドの大衆車を発売しているのは日本メーカーぐらいであり、欧米のメーカーでは高級車にしかハイブリッド車は売られていない。

VW社やアウディ社では、大衆車はクリーンディーゼル車を大衆車として販売してきましたが、プログラムの不正がばれて信用を失ってしまった。その結果としてEVに大きくシフトするということですが、構造や技術が大きく異なるEVは転換が容易ではない。

現実にも日産のリーフや三菱のアイミーブなどは、売れているとは言えず価格と実用性に問題がある。リーフなどは夏冬にエアコンをつければ100キロくらいしか走らない。しかもEVは電動モーターだから低速ではトルクがあるが、高速道路を150キロで飛ばす事も苦手だ。80キロを過ぎると加速が鈍くなる。

街中を買い物専用で走る分にはいいが、数百キロを走るドライブには向かない。むしろ高価なリチウムイオンバッテリーの代わりにガソリンエンジンで発電したほうが安く作る事が出来る。だからプリウスやノートEパワーなどは一度ガソリンを満タンにすれば1000キロは走る事が出来る。ノートEパワーなどは200万円を切る価格で売られている。

ドイツではハイブリッドの大衆車を売る計画は無いようだ。それだけの技術的な蓄積も無く、簡単に作る事が難しいからだ。BMWやベンツなどのハイブリッド車は大型車で高級車だ。低燃費用のハイブリッドではなく加速時にモーターを稼働させるシステムのようだ。VW社ではアイドリングストップさせるだけでもハイブリッド車と称している。

トヨタではまだ本格的なEVを発売していませんが、ミライなどは燃料電池車で基本的にはEVだ。燃料電池なら水素を入れるだけだから充電の必要が無く航続距離もガソリン車並みにある。しかしインフラとコストに問題がある。ならばミライに燃料電池の代わりにガソリン発電機を積めば安くなるだろう。バッテリーも小さくて済むからだ。

ドイツではPHEVにも力を入れるようですが、ハイブリッド車をEVに近づけたものだ。より大容量の電池を積んで電動の距離を伸ばしたものであり、50キロ程度なら電動だけで走れる。それ以上はガソリンエンジンで走るものですが高価になる。

海外でハイブリッド車が売れないのは、高価であることですが、日産のノートEパワーなら200万円以下だから売れるのだはないかと思う。トヨタ方式のハイブリッドは複雑で高価であることが欠点であり、シリーズ方式のハイブリッドなら発電機を積んだEVということで安く作れる。


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7 コメント

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ドイツには優秀な若手人材がどれくらい居るのだろうか… (ponpon)
2016-12-13 18:12:49
ドイツの人口構造を見てみると、現時点でアラフィフ世代がズバ抜けて多いですねぇ…。
ちなみに、日本は↓こんな感じ…。
http://pba.o.oo7.jp/000000.html#00000t
ドイツでは現在40代後半~60歳手前くらいの世代がズバ抜けて多くて(←日本とは全く異なる)、それよりも若い世代が少ない…。ということは、新技術を開発する人材も老化がかなり進んでいるということか…。(苦笑)

> 一気にシフトする事はないだろう
> 高性能で安く出来るようにならなければ普及は難しい

「銭湯」から「内風呂」へシフトしたのは、ガス管敷設とガス器具進歩のおかげでしょうか…。「鉄道」から「自動車」へシフトしたのは、道路建設と自動車技術進歩のおかげでしょうか…。「公衆電話」から「携帯電話」へシフトしたのは、基地局建設と端末技術進歩のおかげでしょうか…。公衆電話から携帯電話へシフトする途中では「ポケベル」「PHS(ピッチ)」なども出現しましたが…。インターネット回線も当初の「ダイヤルアップ」から「ISDN」「ADSL」「光ファイバー」「無線」と段階を踏んで来ましたし…。自動車のエコ化がどのように進んでいくのかは、後世の人のみぞ知るといった感じなのでしょうかねぇ…。(笑)

> 構造や技術が大きく異なるEVは転換が容易ではない
> 技術的な蓄積も無く、簡単に作る事が難しい

自動車メーカーよりも、電車を製造している重電メーカーのほうが得意だったりして…。(笑)ドイツだと「シーメンス」あたりが思い浮かびますが…。お台場を走る「ゆりかもめ」(新交通システム=案内軌条式軌道)もゴムタイヤで走る電車ですし…。

> EVは電動モーター
> 80キロを過ぎると加速が鈍くなる

電動モーターで走る新幹線は時速300キロとか出しますが…。
Unknown (八坂)
2016-12-13 19:23:34
確かに急速なEV化は無理だ。軍用の使用に耐えない。無理をすれば軍需産業に悪影響が出る。
Unknown (雲中の人)
2016-12-13 19:59:26
技術的難易度からすれば、エンジン発電機+モータのシリーズ方式が簡単であろうが、何故トヨタはプリウスの様にパラレル方式にしたのかは多分「良いとこ取り」をしたのだろう。動力源としてモーターは電源さえ確保できれば極めて優れた素材であるが、車の場合は「電源の確保」がネックになる。これを発電では無く化学反応の蓄電でやると制約が多い。
乾電池の発明やリチュウムイオン電池の実用化も日本発であるが、ドイツはエレキよりもメカの国であり、EV化は得意であるとは思えない。その点日本は全方位抜け無しである。
石炭産業が石油産業に置き換わって衰退した様に、ドイツ車も過去の話になる可能性が高いのではないか。
Unknown (八坂)
2016-12-13 20:55:11
全国津々浦々に充電器を敷設して、でかいラジコン走らせるのは、技術的にはハードルは高くないか陳腐化だろ。
バッテリーも充電器も車もラジコンも日本は得意分野なので既に先行している。

それより2年前に米海軍が海水から水素と燃料を作っただろ。まさに米軍おそるべし技術力だ。

資源に恵まれない日本が水素に入れ込んでるのはハイリターン狙いだな。仮に失敗しても電気自動車に乗り遅れる訳ではないのでローリスクハイリターンかもしれない。金はかかるけど技術的な経験と蓄積の価値には代え難い。
水素社会が来ないと言う人間は多いようだが、そもそも来る来ないという運命論の問題ではない。それは出来るのか出来ないのかという技術論の問題なのだ。
Unknown (Unknown)
2016-12-14 00:28:45
有機物から石油を作る技術が出来れば車なんて今のままで良くなる。
日産「ノート」が急にバカ売れし始めた理由 (東洋経済オンライン)
2016-12-14 09:46:59
電気自動車、e-POWER、ハイブリット?
>図解
http://toyokeizai.net/articles/photo/149276?utm_source=yahoo&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=related
スーパーカーは? (笑氏)
2016-12-17 10:14:45
フェラーリとかランボルギーニとかは廃業するのかね?

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