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政教分離違反:大阪府内自治体が護国神社会館での遺族会による戦争体験アーカイブ上映会協力

2016-10-14 22:46:18 | 宗教

 2016年9月28日に、「大阪護国神社」境内の会館において、「大阪府遺族連合会」の主催により、会員や「大阪府内の自治体の平和事業担当者ら約90人」が出席し、「戦争体験のアーカイブDVD」の上映会が催された。DVDは同連合会が提案し、「大阪市」の「戦後70年事業」の一つとして今年3月に完成したものとの事。

 この出来事は、日本国憲法体制下の日本において重大な問題を内包しており、看過できない事柄である。

 まず、遺族連合会の主催であり、護国神社が所有する会館において開催された催しに「地方公務員」が「公務」で出席したという点である。

 憲法第20条「信教の自由」では、第1項「……、いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」、第3項「国及びその機関は、宗教教育その他のいかなる宗教的活動もしてはならない」と規定しているが、この件に関わった大阪府下の公務員は、この規定に違反しているといえるのではないか。その許可を与えた大阪府知事や大阪市長の責任を問うべき出来事である。

 なぜなら、遺族連合会は戦後も国家神道に基づき戦没者を「顕彰」する民間の一宗教法人である「靖国神社」「護国神社」(護国神社は靖国神社の支部で、靖国神社と同様に「顕彰」を主目的としている)と深い関係を持っているとともに自民党を支持する政治団体でもあるからである。それを承知の上で、大阪府内の自治体の公務員を「公務」として認め約90人を出席させているからである。

 「遺族会」の成り立ちについては、1947年に、戦没者遺族の生活援助のための組織として「日本遺族厚生連盟」を結成したが、1952年11月の第4回大会には、靖国神社の慰霊行事を「国費」で支弁する事を決議した。1953年3月には、同連盟は「日本遺族会」に改組し、その目的、事業のなかに「英霊の顕彰、慰霊」を掲げた。そして4月には、遺族を主力にして「靖国神社奉賛会」を結成した。1956年1月には、第8回大会で初めて「靖国神社」の「国家護持」を決議した。「靖国神社国家護持運動」を開始したのである。そして、「自民党」との関わりも深めていく。

 この運動は、遺族会を最大の民衆的基盤として、「神社本庁」、生長の家、国柱会などの宗教団体、旧軍人組織の郷友連盟、右翼団体などとつながり、拡大していった。

 また、遺族会は遺族の唯一の全国組織である社会福祉団体として、政府と遺族の間に立ち「遺族年金」などの援助を独占的に取り扱う事により、「遺族への締め付け」を強め、自民党は有力な支持基盤票田とした。

 しかし、遺族会が自民党と癒着し、「靖国神社への崇敬」を「強制」して来た事から、戦没者とその遺族の信仰に基づく慰霊追悼を呼びかけて、1969年には「キリスト教遺族会」が結成された。1985年には、北海道の旭川と滝川では「平和遺族会」が結成され、「全国平和遺族会」へと発展した。また、1986年には、浄土真宗本願寺派では、島根県大田市に「真宗遺族会」が作られた。つまり現在、遺族会は一つ(自民党系)だけではなく、「日本遺族会」が靖国神社を崇敬する立場をとる事に対して、思想信条的に「反対」の立場をとる様々な「遺族会」が存在し活動しているという事である。この点においても大阪府市の姿勢は「偏向」した行政を行っていると言うべきであり問題とすべきである。

 次に、DVDが大阪市の戦後70年事業の一つとして制作されたという事は、大阪市の「税金」が使われたという事であるが、この事も当然「憲法違反」である。

 憲法第89条「公の財産の支出又は利用の制限」では「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない」との規定に触れるからである。

 そして、第99条「憲法尊重擁護の義務」「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」という規定にも「違反」するものであるといえる。

 DVD制作の目的は、会長の言葉によると、「71年続く平和を次世代に引き継ぐ事が犠牲者の思いに応える最善の道」である、との事で、「継承」を今後の活動の柱に加えたとの事。

その内容は、大阪市内9区のが各地の遺族会の協力を得て約70人の遺族らが、疎開、空襲、戦後の生活など体験を語るものであり、府遺族連合会会長の「71年続く平和を次世代に引き継ぐ事、二度と戦争を繰り返さない事が犠牲者の思いに応える最善の道」という思いを込めたものという。それは、

「地元に残る戦争の痕跡をたどり、戦時中の食事体験をする」

「夫が戦死し、草を食べて2人の子と生き延びたと語る女性の話」

「爆弾が直撃して腕を吹き飛ばされた女の子を、母親らしき女性が抱きしめ『助けて』と叫ぶ姿が忘れられないと語る男性」

「学徒出陣した11歳年上の兄を戦争で亡くした会長の話」などの内容である。

 しかい、このような内容で、戦争を繰り返さない思いを次世代に伝承できるだろうか不信を持たざるを得ない。つまり、内容は戦時中の「銃後」についてであり、それもほんの一部分についてだけの内容で偏っており、見る者に「被害者」であるかのような誤解を与えるおそれがあり、国内の庶民の物心両面からの生活実態を正確に把握できるものとなっていない。そしてまた、一番の問題は、戦時下の庶民の様相を限定して集めたものと思われる点である。そのため先の戦争についての全貌を理解できるものとなっていないし、学問的科学的体系的な内容になっていないため、「二度と繰り返さない」ための「知恵」を戦争体験のない者が学ぶ事は不可能であり、再び繰り返さないための判断力を培ったり、行動へ踏み出すための啓発にはならず、掛け声だけに終わってしまう可能性が高い。そのような内容が不十分である事は、戦後70年を経ても、大日本帝国政府によって戦争に協力させられた(加害者にさせられた)国民が蒙った被害の補償を歴代の政府や安倍政府に誠実に行わせる事さえできていない現実を見れば納得できるだろう。

 空襲被害に対して国家賠償を認めさせるべきであるにもかかわらず未だにそれをなしえていないではないか。また、政府の戦争政策に反対した人々の名誉回復をさせるべきであるにもかかわらずなしえていないではないか。戦争に反対した人々は現在の政府においても、「非国民」とされたままであるし、「犯罪者」とされたままではないのか。

 そして、もっとも重要な事は、先の戦争は日本政府による「侵略戦争」であったという理解を明確にすべきであるという事である。日本軍の侵略によって、日本軍戦没者の何倍もの膨大な数の外国人兵士や民間人の死者や被害者を生み出したという事である。この事に触れないで、日本人戦没者や銃後の日本人の生活の一部分だけに情緒的に目を向けているだけならば、外国からの批判はもちろんの事、国民からの批判も免れないであろう。

 しかし、なぜこのようなDVDが制作されたのかを考えれば納得できる事がある。それは、大阪府市政が「おおさか維新の会」によってなされているという事である。それは「ピースおおさか」に対してとられた政策に表れているのである。「ピースおおさか」は大阪府市が出資している財団法人が運営しており、元々戦争の被害だけでなく加害行為を同じ程度に扱う公的な施設であった。1991年の設立当初の事務局長は「加害行為に関する研究が進みつつあり、多くの戦争体験者が健在だった時代で、日本がアジアで何をしたかを学ばなければ空襲の背景を充分に理解した事にならないという意識があった」と述べていたが、90年代末から保守系議員や団体が展示内容について圧力をかけるようになり、2011年には橋下徹府知事や「おおさか維新の会」が「偏向した展示物が多すぎる」「展示内容が不適切となれば廃館も考える」などと脅すようになり、2013年には、大阪大空襲の展示を増やし、加害展示を縮小せざるを得なくなった。改装後の展示では、数十点の加害展示を撤去したが、その主なものは「南京大虐殺」「人体実験」「重刑爆撃」「強制連行と強制労働」「捕虜の虐待」などであり、新しい展示からは「侵略」の言葉は消えてしまった。また、平和教育を行いたいという気持ちが伝わってこない内容となってしまった。また、なぜ日本が戦争を始めたのか、どこから爆撃機が飛んでくるようになったのか、空襲を天災のように誤解する子どもが出てくるかもしれないようなものとなってしまったのである。

 「遺族会」のDVD内容の背景には、以上のような背景があるという事を理解しておく必要がある。また、彼らのDVD制作の手法は憲法の「政教分離の原則」に違反するものであり、黙認してはいけないという事である。

 

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