湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

ゼームス坂レモン哀歌碑

2017-01-26 12:08:25 | 旅行
品川に用事があって、昔住んでいたゼームス坂へ。

ゼームス坂は、大正末期に建てられた銅板葺きのファサードをもつ、いわゆる看板建築が空襲の被害をまぬがれ残っているエリアです。緑青の色がいい感じ~。
この坂道をちょっと入った所にレモンの木が植えられた高村智恵子終焉の地ゼームス坂病院跡があったはずだと思い行ってみました。するとレモンの木はなくて、モノリスみたいな石碑の前にレモンのお供えがしてありました。
 高村智恵子記念詩碑
下に埋め込まれた銘板によると、智恵子の身長と同じ高さの石碑を平成7年に建てたってことなのね。

昭和七年以来の彼女の経過追憶を細かに書くことはまだ私には痛々しすぎる。ただ此の病院生活の後半期は病状が割に平静を保持し、精神は分裂しながらも手は曾かつて油絵具で成し遂げ得なかったものを切紙によって楽しく成就したかの観がある。百を以て数える枚数の彼女の作った切紙絵は、まったく彼女のゆたかな詩であり、生活記録であり、たのしい造型であり、色階和音であり、ユウモアであり、また微妙な愛憐の情の訴でもある。彼女は此所に実に健康に生きている。彼女はそれを訪問した私に見せるのが何よりもうれしそうであった。私がそれを見ている間、彼女は如何にも幸福そうに微笑したり、お辞儀したりしていた。最後の日其を一まとめに自分で整理して置いたものを私に渡して、荒い呼吸の中でかすかに笑う表情をした。すっかり安心した顔であった。私の持参したレモンの香りで洗われた彼女はそれから数時間のうちに極めて静かに此の世を去った。昭和十三年十月五日の夜であった。 (高村光太郎「智恵子の半生」より)

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