湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

また選外佳作

2015-07-29 00:00:28 | オリジナル
前々回の合評会で比較的好評だったAの「うらみの径」を改稿・投稿したものが、ユリイカ8月号「今月の作品」の選外佳作になりました。
「湿」の詩というお題があったから書けた作品です。湘南文芸の皆さんありがとう
ユリイカ7月号で選外佳作になった下記の作品も、テーマ「折る」で合評に出した後に書き改めたものでした。
もっているテーマ・モチーフを大切にして、批評してもらいその内容を真摯に受け止めて、自分でも読み返してしつこく改良していくことが大事なのだと感じる今日この頃です。そういう意味では選に入るまで書き直して昇華させる途上のどこか未熟な作品なのかもしれませんが、とりあえず公開します。
 蘆花記念公園で
 
      非在階段

日曜日の夕方 父は決まって家中のごみを集め庭で燃やす 
火の力で清めたいのだ 自分の場所を 黙っていがみあう家族を
父は真剣な顔で火を見つめている
私は二階の自室の窓から 焔に照らされた父を見おろしている
庭に下りて行って隣に立ちたいのだが かける言葉がひとつも浮かばない

月曜日の昼間 親子遊びの会が決まって山の公園に集まる 
山の力で清めたいのだ わが子を 親役割に漠然と滞る不全感を
母親たちは真剣な顔で子供を見張っている
私は二階の自室の窓から 警戒する母親たちを見おろしている
公園の広場に下りて行きたいのだが かける言葉がひとつも浮かばない

火曜日の早朝 ついに私は階段を使った 転んだり落ちたりせずに
私という女の子をごみ箱に捨て家を出る 
私の破片は 次の日曜日に父が燃やしてくれるだろう

――踏み外して怪我をしたくないの
こう言って母はずっと一階に居る
水平で安心で安全な暮らしのために 
転ばぬ先の上らぬ階段 

山の公園の散策路に落ちている枝を踏むと 乾いた音と匂いが上る
廃炉になった登り窯が 緩やかな石段に沿って上昇する
かつては内部の段を火が駆け上っていたのだろう
その時焼き締められていた陶器が立てる音と匂いを幻覚する
石段の途中で窯のレンガの目地を階段状に指で辿っていく
指を踏み外しそうだ
 
廃墟になった作陶小屋がある 
罅の入ったガラス窓越しに乾いた泥のついた室内が見える
母親たちの疑ぐり深い視線が閉じ込められている 


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