虚構の世界~昭和42年生まれの男の思い~

昭和42年生まれの男から見た人生の様々な交差点を綴っていきます

恩人~過信している時~

2017-06-16 10:50:21 | 小説
毎日毎日が楽しくて充実していた・・・。生きているってこんなに楽しいのと思うぐらい
彼は毎日勘違いして生きていた。


 大好きな彼女と毎日毎日一緒に過ごすことができる喜び・・・。塾講師の仕事が終わり、家に帰ると彼女が満面の
笑みで迎えてくれる。

 彼は毎日、彼女の部屋に泊まった。二人は一緒に暮らしているような状態だった・・・。
いや彼女もそれを望んていた。



 「お帰り・・・」、その言葉と同時に彼女は彼に飛びついてくる・・・。映画で見たような世界だった。
1993年、これから夏が街を包み込もうとしているときだった・・・。


 

 彼の友達に小学校に臨時教師として勤務しながら、採用試験にチャレンジしようとしている人がいた。
その友達は、彼の様子を見て・・・

 「今のお前が受かったら、俺は神様を信じない」と、半分冗談、半分本気で言ってきた。それほどまでに
彼のうわっついた生き方が目に余ったのだろう・・・。

 採用試験間際に彼女と半同棲生活をするような・・・。
 そして、全然、勉強していないのに、自信たっぷりなその雰囲気・・・。

 一生懸命に真面目に努力している人間にとっては、彼のような生き方を肯定することは、自分の生き方を否定することになる。

 彼の採用試験の受験勉強は、ほとんどさらっと過去問をやった程度・・・。
「こんなの勉強したって範囲が広すぎもの。それよりも、幅広い知識は国語講師としての教材研究でできている。専門は教科書の指導書を使って教えていたことが役に立つ・・・」

 そう彼は大学時代からずっと塾や家庭教師のバイトをしてきた。彼が講師として人気が高かったのは、決して軽いノリや
雰囲気が生徒たちに受け入れられただけではない。彼は、授業するところは常に入念に予習していた。板書計画、教材解釈・・・。その時、彼は塾にあった指導書をていねいに読んでいたのだ。塾には全教科の指導書が揃っていた。しかし、これを使って教材研究している非常勤講師は彼以外にはいなかった。これを六年間続けていた。だから、採用試験は、いつでも受かるという過信のようなものが存在していたのだ。

 しかし、彼は大学を卒業しても定職につかず、塾講師・予備校講師をかけもちしながら生きていたのだ。もしかしたら、この業界で成功するんじゃないかという浅はかな期待を背負いながら・・・・・・。当時、元暴走族出身のカリスマ予備校講師が世間を賑わせていた。年収〇千万円というその収入に彼は自分も・・・という期待を寄せて生きていた。

 ただ、その考えを変えてくれたのが彼女だった。彼女の仕事に対するひたむきさ、そして、結婚するためには「安定」という名の仕事が大きいということに彼は目を向けるようになったのだ。劇的な視点の変容を遂げた。

 採用試験の前日、いつものように彼は彼女の部屋へと寄った。試験前日は、さすがに部屋でゆっくりと休むものだと彼女は思っていた。しかし、彼は彼女を気分を変えてホテルに行こうと誘った・・・。

 「いいの、明日試験だよ」
 「試験だからこそ、行くのさ。ホテルから試験に行って合格したらおもしろくない」
 「えっ・・・」
 「俺らしくていいでしょ」

 そして、二人は試験の前日、ホテルで一夜を過ごした。

 そして、朝、彼は彼女に車を運転させて、試験会場へと向かった。
 彼女の運転する車から降りて、さっそうと会場へ入る彼は完全に自己陶酔していた・・・。

 「こんな不真面目な奴が教師になったらおもしろいかも・・・」

 周りはスーツを着て、緊張した面持ちで歩いている。

 そんな彼を彼女は「がんばってね・・・」と一途な思いで見つめていた。

 1993年7月のことである。

 「試験が終わったら、何したい。何か料理でも作って待っていようか」
 
 「いや、どこかに出よう。歌がききたいなあ」

 「うん、わかった。じゃあ、おしゃれして、いつも以上にかわいらしくして待っているからね




 過信とは、ある意味、恥じらいのない言動をするエネルギーに変換されるのかもしれない。

 素敵な彼女がいることで、ある意味、彼の方向性はかなりのイレギュラーバウンドをしていた。
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1 コメント

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Unknown (頑張るおじさん)
2017-06-17 23:39:15
読者登録有難う御座いました。

返事が遅れた事にお詫び申し上げます。

現在静電気、冷凍冷蔵機器の節電!

機器の静電気除去にはまり、数値を追っています。

今後とも宜しくお願い致します!!

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