一時間ほどで居心地の良い桃源郷を後にした。
寂れた街並みがまたいっそう味わいの深い趣を見せていた。
高校を卒業して32年・・・。
「お前、おもしろくない人生やってるよなあ。毎日スーツ着て、決まった時間に起きて、会社に行って。ストレス溜めて。それで生きているっていえんのかよ。」
18歳の自分が語り掛けてくる。
「そんなにつまらない生き方して、それでいくらもらえんだよ。月に100万とか200万とかもらえんのかよ。俺はもっと自分らしく生きて人生をのしあがってやる・・・」
身の程知らずの生意気小僧だった。
そんなことを考えながら家についた。
五年前に建てた二世帯の家が温かく出迎えてくれる。家族はもう寝ているが、リビングでたたずんでいた。
高校時代の自分、高校時代ののぶりん、現在の自分、現在ののぶりん、いろんな人たちのことを
考えていた。