映画少年

映画と音楽を愛し 教育の未来を想う 少年のつぶやき

主役は1年生

2017-04-14 05:15:36 | 日記


 入学式といえば,主役は1年生である。
そこで,1年生が主役の映画はないかと考えてみた。
すると,主役ではないが1年生が重要な役として登場する感動的な作品が頭に浮かんだ。
「二十四の瞳」である。
この作品については,以前も書いたような気がするが,今回は1年生という視点から内容を分析してみたい。
「二十四の瞳」は,1952年に壺井栄が発表した小説である。
物語の舞台は,壺井によれば「瀬戸内海べりの一寒村」である。
壺井の出身地が香川県小豆島(しょうどしま)であることから,映画化(最初は1954年)にあたって舞台が小豆島とされ,それ以降(テレビドラマやアニメ化も含めて計9回映像化)小豆島に定着した。

なお,この作品は,1928年から1946年までの18年間にわたる「女先生」と呼ばれた大石先生と子どもたちとの出会いと交流,そして別れを描いたものである。
ここでは,伝説の名女優高峰秀子(当時30歳)が、大石先生を演じた1954年木下恵介監督の映画を例に挙げることにする。



1928年,島の分教場(分校)に赴任した大石先生は,受け持った12人の1年生と楽しく学校生活を送ることとなり,その様子が,美しい映像と音楽とともに心に迫って来る。
特に,一人ずつ名前を読み上げながら出席を確認する大石先生と子どもたちとのやり取りの場面は,強く印象に残っている。日本映画の名場面の一つとして挙げられるだろう。


村の外から赴任した大石先生は,はじめは住民から受け入れてもらえず教師をやめようと思うのだが,先生を慕う子どもたちの姿が住民の心を動かし次第に受け入れられていく。


その後,様々なエピソードとともに時は過ぎ,一度分教場を離れた大石先生は、6年生になった教え子たちと再会する。


しかし、時代は不景気そして戦争へと進み、世相にも変化が起きる。
小学校を卒業した子どもたちもこうした世相に翻弄され,つらい人生を送ることとなる。
教え子たちの窮地を知った大石先生も深く心に傷を負う。
身売り同然の奉公先で病に倒れた女の子,若くして戦場に赴き戦死した男の子・・・。

戦争が終わった翌年,分教場に帰ってきた大石先生は再び1年生を受け持つこととなり,18年前と同じく12人の1年生の二十四の瞳に見つめられながら,一人ずつ名前を読み上げ出席をとる。
ただ,18年前と明らかに違うのは,貧しくとも平和であるということ。
キラキラした子どもたちの瞳を曇らせる世の中の非情と戦争から解放された平和な世の中を原作者は訴えたかったのか。

初めてこの映画(1954年版)をビデオで観たとき,けがをして実家に帰った大石先生を1年生の子どもちが日が暮れた道を泣きながら訪ねていく場面があり,涙が止まらなかったのを今でも覚えている。
実は,この映画の主役は,大石先生ではなく,1年生の子どもたちなのではないのだろうか。ふとそんな思いにさせる名作である。


田中裕子(当時32才)が大石先生を演じた1987年の作品から。冒頭の写真も同じ。

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