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『スピード・レーサー』 2008年(米)監督アンディ・ウォシャウスキー
本作の凄味はCGの多用さでも原作の面白さでもない。視覚的、聴覚的といった映画的表現で劇的な興奮とユーモアを展開させたことにある。序盤から絶妙だ。
スピードの少年時代。勉強はなんだかつまらない。彼は時計の針を見る。異様に煌めく秒針。レース開始!『マトリックス』のアクション・シーンを彷彿させるような躍動感あふれるサウンドはが鳴り響き、彼はサウンドに乗って猛烈なスピードで答案用紙に書き込むのだが、スッと一気に静寂に包まれ、スピードの親が担任の先生に呼び出されているショットが入り込む。
この予想しなかった躍動の妨げが妙に腹立たしくも、後に誰にも(担任の先生にも)止められないスピードの走りを見せることで、観客に最高の爽快感と疾走感を抱かせてくれるのである。そして左右から雪崩れこむように挿入される人物の顔や背景などによる巧妙で斬新な場面転換は視覚的に観客に物語を理解させるのだから美しい。
最も過酷で危険なレースに参加したスピード。目まぐるしいレーシングカーの動きに合わせて場面転換し、大金に魅せられたレーサーたちを映し出す。次いで再び左右に画面が移動し、ニヤリと怪しく微笑む買収されたレーサーを映す。もうそこにはレースの興奮した雰囲気と、心の躍動を妨げるものは一切なく、レースという過激さの中でも視覚的にストーリーテリングを展開させ、全てを一切のセリフなしに理解させてしまう巧みさが存在するのだ。その卓越したスリリングなストーリーテリングは、観る者にモーションから生まれる純粋なエモーションをストレートに体感させてくれるのである。
ラストのキス・シーンで異化効果をもたらすスプライトルのセリフは蛇足というものであり、あまりに惜しいのであるが、しかし、過激なCG描写でアニメチックな世界観と、そんな世界ならではの馬鹿げたユーモアを創造する演出は「映像革新!」に止まらぬ才を感じさせてくれる。
奇怪で不思議な世界の中で、視覚的聴覚的といった映画的表現で華麗に躍動の洪水と劇的なエモーションを生み出した偉業は本作を傑作であると確定づけ、腐ったCG映画に鋭い喝を入れてくれること間違いないのである。
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