映画批評ってどんなモンダイ!

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『ノーカントリー』

2008年06月14日 23時25分38秒 | 映画(ナ行)
ノーカントリー スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン

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 『ノーカントリー』  2007年(米)監督ジョエル・コーエン

 静かな荒野。偶然、殺戮現場に遭遇した男。彼は些細な欲からその場にあったニ百万ドルを盗んでしまう。彼を追う殺し屋シガー。事件の真相を追う老保安官エド。些細な欲と多額の金から始まった血の闘争。その中で、奥深く、それでいて挑発的な哲学を観客に投げかけるコーエン兄弟の演出が巧い。殺し屋シドーと動物ハンターであるモスの関係が見事。
 女を片手に持ち、もう片方では銃を構え、刺激感あふれるハンティングを楽しむモス。彼は金に欲をさらけ出した欲望だけに止まらず、道端で出会った女性に再び飢えた欲をさらけだすのだ。そんな欲にまみれた男に待ち受けるのは死という罰。
 一方、奇妙なヘアスタイルと異常な鬼気を放つシドーは見るからに禁欲的で、さらに、神や金、欲望をも超越する理念を抱いているのだ。その理念に忠実で、理念の下部である彼は、人間の生死をも理念で選択する。ラストでは、モスの妻を殺したのかどうか(つまり、理念に従ったか否か)は明かされてはいないのだが、ラストの衝撃的交通事故を見れば、彼が理念に背いてしまったことを感じさせるのだ。なぜなら、彼に致命的傷を負わせたこの交通事故こそ、理念に背いた彼への恐ろしい罰なのである。そして、金を渡して服を買う彼の姿は、かつてのモスと類似し、彼がモスと同様の運命をたどることを視覚的に案じさせるから素晴らしい。そして、老保安官の存在も効果的だ。
 殺し、殺される人生。そんな人生を過ごす現代人を悲観するのは老保安官のエド。まるで荒野の血生臭い殺戮現場のように、もしくは、ハンターに日々狙われている動物たちのように、血の闘争が繰り広げるこの現代社会を静かに、それでいて恐怖いっぱいに感じているエドこそ、我々観客であり、彼の説く奥深き哲学に観客は心打たれるから傑作なのだ。
 ハンターである二人の虚しき終末を視覚的に案じさせる巧妙な伏線や、シドーはモスの妻を殺したのか否かという挑発的にも思える哲学的思考の喚起。娯楽と哲学を巧みに交差させ、怖いほどに非日常を感じさせるコーエン兄弟の手腕は恐ろしいほど美しい。本作は哲学に満ちた最高の芸術的エンターテイメントなのである。


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3 コメント

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はじめまして! (coco)
2008-07-08 23:41:28
はじめまして。トラックバックさせていただきました。
映画批評参考になります!
こちらはブログを再開したばかりで記事は少ないのですがよろしくお願いします。
リンクもさせていただきたいのですがよろしいですか?
またおじゃまします。
cocoさん、はじめまして!! (ヒッチ)
2008-07-08 23:53:03
お越しいただくのもありがたいのに、批評を読んでもらえて、さらにTBまで。さらにさらに、コメントあでいただき、心から「ありがとうごうざいます」。

リンクですか!リンクさせていただくなんて光栄です!!!
ブログ名:映画批評ってどんなモンダイ!
URL:http://blog.goo.ne.jp/1553231/

でお願いします!わたくしもcocoさんのブログをリンクさせていただきますね!
リンクさせていただきました! (coco)
2008-07-09 00:17:54
ヒッチさん、さっそくリンクさせていただきました。
わたしのブログもリンクしてくださるなんて恐縮です…。
励みになる心遣い感謝します!!

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