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『メメント』

2008年09月30日 17時38分58秒 | 映画(マ行)
メメント [DVD]

東芝デジタルフロンティア

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 『メメント』 2000年(米)監督クリストファー・ノーラン

 ある事件で、数分前の記憶が消えてしまう病になってしまった男のサイコ・スリラー。時間をさかのぼっていくと、そこには自らが仕掛けたおぞましい罠が堂々と横たわっていたのである。その巧妙なストーリーテリングは主人公レニーの今と完全に一致するのだから傑作。
 オープニング。ある男を殺害した主人公が映る。そして時間は逆戻りし、彼はモーテルのロビーにいるのだ。彼が一体何者で、なぜ、今ここにいるのか、ここはどこで、何をしているのか全くわからない。何がなんだかわからないまま話は進行し、やがて時間は再び逆戻りし、彼がモーテルのロビーに行くまでを描くのである。過去が一切明かされず、唯一、彼の撮った写真で彼の過去を知ることとなるのだ。主人公の視点から描くことによって、彼の何がなんだかさっぱりわからないこの感覚を観客にそのまま感じさせてしまうからミステリアス。
 しかし、徐々に時間をさかのぼっていくことにより、真実が暴かれ、彼がいかに利用され、今まで登場した人物がいかに嘘に満ち溢れていたかを衝撃的に感じさせられるのである。そして、ラスト、彼が彼自身に仕掛けた壮大な罠と巧妙な嘘を観客は知ることとなる。すなわち、本作において観客は最大の目撃者であり、主人公であるのだ。
 時間という名のパズルのピースを一つずつはめていくと見えてくるのは驚愕の地獄絵図。その映像が現在なのか、過去なのか、それとも未来なのかも、はたまた本当に記憶であるのかさえも曖昧にし、映像という確固たる物理的現実に観客は大いに騙されるのである。この映画の根本をえぐるような視覚的トリックで観る者を翻弄し、酔わせてしまう感覚は我々が日常で記憶をさかのぼろうと、頭に浮かぶ曖昧な記憶という映像を再生する作業と一致し、その曖昧さ故のサスペンスを展開させてしまうのだから、それは純粋に映画的なストーリーテリングであり、極めて日常的な理解を持った非日常的サスペンス・スリラーなのである。
 拳銃や銃弾、写真や入れ墨、何気ないワイン・ボトルや高級車、家や人、全てが忘れ去られる記憶であり、真実であり、壮大な伏線である本作。無声のショットによって記憶を視覚化し、この曖昧さをショットとショットのつなぎによって感じさせる演出は何よりも映画の真髄を利用した傑作ストーリーテリングであるし、『フォロウィング』『インソムニア』『プレステージ』と一貫してこの巧妙なパズル型時間軸交差を繰り広げるクリストファー・ノーラン監督は、まさに映画の仕組みとその仕掛けを大胆に応用した優れたストーリーテラーであることに間違いはない。
 ショットをこれほどまでに巧くサスペンスに応用する映画に出会えることは誠に幸福なことであり、本作は映画を愛するすべての人と映画が映画であるべきことを愛して止まない映画自身のためでもある、最高の芸術的映画的サイコ・スリラーなのだと断固たる称賛の意をもって感激したい。


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