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『十三人の刺客』

2010年10月04日 17時15分50秒 | 映画(サ行)
十三人の刺客 通常版 [DVD]
役所広司,山田孝之,伊勢谷友介,伊原剛志,松方弘樹
東宝


『十三人の刺客』 2010年(日)監督:三池崇史

 本作を東宝の商業的な娯楽作品の一部として位置づけるのはもったいないように思える。
 念密なキャラクター構成と勧善懲悪の単純明快なストーリー展開が小難しい時代劇への警戒を払拭する一方、当時の言葉づかいを用いたり、当時の女性化粧(歯を黒く塗り、眉毛をそる)をリアルに施すなど、女優の顔を綺麗に見せるための違和感たっぷりなデフォルメを施さない真面目さが、より一層作品や登場人物に対する感情移入を違和感のないものにするなど、現代時代劇にはなかったエンターテイメント性と映画としての質の高さが融合した非常に海外向けの真面目な作品と言えるのではないだろうか。
 まず極悪非道の悪役が国民的アイドルグループSMAPの稲垣吾郎というのが面白い。将来的に老中となる若殿様は一切何をしても許される立場の者。そのため女をレイプし、駆け寄った旦那を遊び半分で殺し、その首を女の前で切り落とす。そして慰め物としていた女の両足と両腕を切り落とし、舌まで切断し、裏切り者の家族、女、子供を弓矢で一人ずつ皆殺しにしていく狂気的な残虐行為が、ありふれた悪役の人相をした人物ではなく、観客の感覚だと犯罪や悪の道とは全く無縁であり、これまでそうした暴君の役柄を演じてこなかった正統派のアイドル稲垣吾郎だから、なおのこと衝撃が増すというもの。しかも冷淡で一切の道理が通らない不条理な人間であるからこそはまり役だし、怖しい。
 しかしながら、こうした悪役の描写が残虐性を増して観客の脳裏に焼きつくのは、配役の良さだけではない。全編を微かなロウソクの光だけで照らしたようなリアルな暗黒気質、『BALLAD 名もなき恋のうた』(09)や『隠し砦の三悪人』(08)のように綺麗なアイドルの顔を見せるために素顔のまま見せる現代時代劇ではなく、わざと当時の(歯を黒く染めたり、顔を白く塗ったりする)常識を取り入れる徹底さ、人を殺すということに対しての若侍の自責の念、殺陣のシーンなどで肉が引き裂かれ、血が溢れだす描写を執拗に見せるリアリズムが、残虐性をより惹き立たせている。
 さらに彼らが文字通り命をかけて、恋愛だとか大切な人のためだとか、そんなものは抜きにして、ただ忠義を尽くす侍の恐ろしいほどまでの戦いを正面から描いたことで物語やキャラクターに説得力が増し、普段はツッコミ入れどころ満載の現代時代劇だが、本作は何も気にかけることなくその戦いに震えることができるから巧い。
 近年の日本映画の流れから感じたことだが、これまで娯楽性とアイドルに頼ってきた時代劇とも呼びがたい時代劇よりも、娯楽性と芸術性を追求した真面目な時代劇が求められ、評価される時代が来たのかもしれない。本作や『桜門外ノ変』(10)などシリアルでリアルな時代劇が活躍し、大衆に新たな時代劇像が創られることを願ってやまないばかりだ。


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