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『グッド・フェローズ』

2008年04月15日 23時32分27秒 | 映画(カ行)
グッドフェローズ スペシャル・エディション 〈2枚組〉 [DVD]
マーティン・スコセッシ,レイ・リオッタ,ジョー・ペシ
ワーナー・ホーム・ビデオ


 『グッド・フェローズ』   1990年(米)監督マーティン・スコセッシ

 スコセッシは奇妙なやり方で物語を展開する。序盤、この話は実話であるという映画の作り手からのメッセージが出てくるのだ。そして物語が始まると、今度は本作の主人公である男が、自分自身のことを自伝的に語り出す。しかも、本作の映像を見ながら語っているのだ。たとえば、「こいつはジミー」といったようにカメラがそのジミーとやらの男を映し出すとそれを見て彼が語り出すのであるから、それは彼の回想ではなく、映画の主人公のナレーションなのだ。
 つまり、本作では、『グッド・フェローズ』の登場人物が『グッド・フェローズ』のナレーションをしているのである。それはこれまでのマシンガン連射で観る者の目を懸命に引き付けるギャング映画とは違う。本作は主人公ヘンリーの人生を最もよく知っているヘンリー自身がまるで映画の世界を飛び出して語っているように自分の人生を語るのだ。ヘンリーの人生をヘンリーに解説してもらいながら観客が彼の人生について哲学的な思考を抱いていくという斬新な演出をごく自然にやってのけてしまうのがスコセッシなのである。だがやはりそんな演出は奥深いドラマがあっての話。脚本も優れたものである。
 本作で描かれる暴力や強奪はそれぞれの彼らの心の内をさらけだすから哲学的。ヘンリーのナレーションがジミーについて語り出す。彼は大物のギャングだが、殺しよりも盗みを好むと言うのだ。彼の言葉の通り、彼はなんでも自らの手で盗み、600万ドルの大金を盗む計画があれば、進んで乗り出す。刑務所に入っても食べ物を盗み、その快感に酔いつぶれるのだ。彼が金に歓喜するシーンや史上最高額の盗みであることを彼は自慢しないし、何も語らずの彼は、むしろ盗みを働いたことに狂喜しているようである。トミーはといえば、彼はどんな時でも銃を振り回し、その力を見せびらかす。気にくわない奴がいれば、銃を取り出し、ぶっ放すのだ。しかも場所や時間を気にせず、いつだって死体を埋めたり、殺したりである。彼は銃で堂々と殺すことを楽しみ、誰にも捕まらず、誰も彼を止められないその権力と暴力の支配を銃でもって高々と見せつけるのだ。だから彼は一人で殺人などはしないし、殺し屋になりさがるわけでもない。殺人は彼のナルシズムを感じさせるから恐ろしい。
 そして主人公のヘンリーは、殺人を好みはしないし、「アイルランド系だから」と言って出世する気もない。強奪はするが、金よりも自由であることに狂喜するのだ。彼はパン屋に並ぶことや、ショーの席を待たされることを口に出して拒否し、力と金によってなんでもできるギャングの世界を見せびらかし、「すごいだろ」と言わんばかりに彼の「自由」を自慢するのだ。だから刑務所であっても、金と暴力でなんでも押し通せるその世界を堪能し、苦にも思わない。だが、彼は「自由」を亡くすこと、すなわち「死」を恐れ、仲間を売る。この密告行為こそ、彼がいかに暴力と金による「自由」を求めていたかがわかり、仲間や絆なんてものは「自由」を得るための道具に過ぎないことを感じさせるのである。
 保護下に置かれたあと、我々が「自由」としているものは彼にとって「自由」ではなく、「パン屋に並んだり、不味い食事を一生食べなければなければならない」と我々にとってのごく普通の生活をまるで刑務所のように嘆くのだ。盗みたいものは盗めて、食べたい食事や欲しい女はいつでも手に入る。そんな彼の「自由」はギャングの世界のみに存在し、そのギャング世界を好んだ彼の人生。「できる」だらけの人生を求めた彼の人生はいかに虚しく、空虚なものであったかを感じさせる最高のラストである。


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1 コメント

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チンケな密告屋 ヘンリーヒル (zebra)
2013-03-03 15:09:58
見ました。 友達がデニーロ好きだから 見せてみようと思ってます。内容自体は充実してよかったですよ^^

聞いたことありますが、マフィアの世界でも 麻薬のビジネスは禁じてるそうです。

ガンビーノファミリーをニューヨーク最強の組織にまでさせたカルロ・ガンビーノも"麻薬をやるやつは死ね"とまで言ったそうです。

もし、ヘンリーがガンビーノ一家の所属だったら・・・
アイルランド系で準構成員になれたとしても、ほぼ確実に消されてたと思いますよ。 元の親分だったポーリーにウソをついて麻薬やって縁切りされて 餞別にお金くれたなんて まだいいほうです。

ポーリー親分も 決してほめられた人物ではないが デニーロ演じたジミーやジョー・ペシ演じたトミーと比べれば まだまともだった・・・

「ポーリー・・彼が何したなんて知らないよ」
って かばってくれてもよかった気がします。 見ててヘンリーは一般人でも裏社会の人間にしてもチンケなハンパ者にしか思えませんでした。

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