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『第9地区』

2011年02月18日 21時53分32秒 | 映画(タ行)
第9地区 [DVD]
クリエーター情報なし
ワーナー・ホーム・ビデオ


『第9地区』 2009年(米)監督ニール・ブロンカンプ

●社会派よりもサスペンス
 社会派エンターテイメントとして謳われるが、社会派と呼ばれる要素(宇宙人を軍事産業に用いる人間の醜悪など)はサスペンスを盛り上げる一つの脚本術であり、基本的なストーリー展開も「宇宙人が持っていた液体を浴びてしまい体が変異していく主人公の奮闘」というSF映画によくみられるものである。だから本作は完全なる社会派というよりもむしろサスペンスとして楽しめる娯楽主義の作品であり、近年流行りのモキュメンタリーによって世界観を構築している新鮮味溢れたSFアクションと言えるのではないだろうか。
 サスペンスとしても脚本と映像で巧い事をやっている。まず宇宙人を実験し、分解し、肉体を売買する違法密売に手を染める軍事会社は「支援」の名のもとに宇宙人から莫大な利益を得ている最凶の悪徳会社だ。また第9地区に潜むギャングもただのギャングではなく、怪しげなカルト教団である。変異したことによって、その肉体は利益を生む肉体となり、彼らは血を求めるヴァンパイアのように主人公の肉体を追い続ける。しかもグロテスクなほどに残虐な奴らで、血も涙もない。傭兵部隊は最も劣悪な暴君だ。しかしながらこれらは血を魅せることを第一の目的とするスプラッターでもなければ、資本主義経済を皮肉った社会派のテーマでもないように思える。なぜなら、本作の魅力の一つとなるサスペンスは、彼らの悪行なしには成立しないからだ。
 『十三人の刺客』で稲垣吾郎演じた役が大層な悪玉だったのは、十三人の刺客が彼を斬るという一つの目的に対して説得力を持たせるためであろう。それと同様に本作でも軍事会社やギャング、傭兵部隊が残虐極まりないキャラクターでなければ、彼が逃亡し、エイリアンに助けを求め、ラストで傭兵やギャングを殺しまくるアクションに説得力が生まれず、ただの暴力映画になってしまうことだろう。社会派と呼ばれる部分は、実はサスペンスを高めるための古典的な文法のように思えるのだ。
 そのためか、脚本術から生まれるサスペンスは、映像と混ざり合って強烈だ。近年のモキュメンタリー映画に見る揺れる映像を『プライベート・ライアン』並みに抑えた〝映像表現〟、「ファッキング!」の連呼でサウンドトラックなしに空気を狂気感でいっぱいにする〝勢い〟、そして極悪非道の悪役たちがエイリアンたちに迫る脚本術による〝緊迫感〟で観る者の心を躍動させているように思える。
 若さと勢い、モキュメンタリーによるSF映画への大胆なアプローチによって、一級のアクション・エンターテイメントに仕上げた手腕は傑作だ。深い話を抜きにして気楽に楽しめる一方、00年代のモダン・シネマを象徴する一つの代表作であることに異論はない。


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (けん)
2011-02-19 11:09:28
TBさせていただきました。
またよろしくです♪
Unknown (けん)
2011-02-19 11:12:14
すいません。
間違えました(汗
サロゲート消去お願いします。
Unknown (ヒッチ)
2011-02-19 12:09:42
こちらもTBさせていただきました。
ちょくちょくお伺いさせてもらいますので、よろしくです!

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