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『スペース・バンパイア』

2011年01月22日 19時15分05秒 | ホラー映画
スペース・バンパイア [DVD]
クリエーター情報なし
20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント


『スペース・バンパイア』 1985年(英)監督トビー・フーパー

●古典的な秀作
 オープニング、鮮烈の赤が登場人物を染め、エメラルド・グリーンの光線が宇宙の黒に入りこむ。ブルーとグリーン、そしてルビーのような赤。全編でさりげなく彩られる色彩美は『白い肌に狂う鞭』(63)に強い影響を受けただろうトビー・フーパーならではでもあり、日常の中に入りこむ非日常的な世界観を観る者に感じさせてくれる視覚的な表現と言えるのではないだろうか。
 終盤に巻き起こるバンパイア(ダン・オバノン式ゾンビ!)の大群から精気を奪って行く青い光の球や四方八方に飛びまわる光線、そして天に向かって放射される青い光線は怪奇的な空気を漂わせ、「修道院に向かう途中」というなんでもないようなシーンでもダイナミズムに溢れた強烈極まりないパワーを生みだし、観る者を圧倒するから、これぞトビー・フーパー作品の持つダイナミズムと言える。
 色彩美と叫び声の連鎖、荒れ狂う強風、強大なモンスターへと立ち向かうクライマックスといった映画的なパワーは、黒沢清の『スウィート・ホーム』(89)や『学校の怪談』シリーズへと持ち込まれている事実を考えれば、トビー・フーパー作品と『白い肌に狂う鞭』がいかに現代のジャパニーズ・ホラーと呼ばれる作品群やモダン・SFホラーに多大な影響を与えていたかが理解できるのではないだろうか。
 映画史的な価値としても本作は充分に堪能できるのだが、真の価値は強烈な色彩美と悲鳴のアンサンブル、暴走列車が火薬庫に向かって加速し大爆発を起こすかのような編集のダイナミズムが感じさせる観客の心的躍動にあることは言うまでもないだろう。そしてダン・オバノンの脚本力も忘れてはいけない。

●『エイリアン』の生みの親 ダン・オバノン
 本作では廃墟と化した宇宙船から宇宙人の死骸と三人の人間を地球に持ち帰ったことで巻き起こる大規模な惨劇を描いているが、そうした一連の物語は『エイリアン』(79)と酷似しており、りドリー・スコットの作品を真似たとしばしば批判を受けることがあるようだ。しかし本作は決してリドリー・スコットの真似などはしていない。なぜなら『エイリアン』はモダンSFホラーを語る上で欠かすことのできない名匠ダン・オバノン(本作の脚本家)の脚本であり、そもそも『エイリアン』自体リドリー・スコットの脚本ではないのだから。
 『バタリアン』で「頭を吹っ飛ばすとゾンビは死ぬ」というロメロ式定義を覆したダン・オバノンが書いた本作では、バンパイア、ゾンビ、エイリアンの境界線そのものを曖昧にし、宇宙飛行士の内面に潜む女性の理想像を具象化したエイリアンと宇宙飛行士の壮大なホラー・ロマンを感じさせてくれるから、裸で天に召されるラストが滑稽でありながらもロマンチックであったように思える。エイリアンもののホラーと思わせといて、実はロマンシズムに溢れた愛と死の物語であることが明かされて一気にひっぱっていく脚本力は、新鮮さと滑稽さに溢れていたように思える。そこに『白い肌に狂う鞭』のテイストを織り交ぜたトビー・フーパーの色彩美とダイナミズムが呼応し、力強くも美しく、新鮮で鮮烈な作品に仕上がったのではないだろうか。
 当然本作は『スピーシーズ/種の起源』(95)『スピーシーズ2』(98)に引き継がれ、後の侵略映画の古典となり、基礎となり、製作者側と観客の血と肉になったことは明白である。視覚的に魅せていく世界観と壮大なサウンドトラック。視覚的・聴覚的な表現で魅せる映画的な作品と評価できるSFホラーの秀作であった。


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2 コメント

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懐かしい! (naotomo)
2011-01-23 12:38:44
2011年という時代に、スペース・バンパイアについてブログを読むことになるとは!
おもしろい時代になったものです。

私は10歳の時に映画館で見ました。
強烈な印象だったなぁ...という記憶だけ残っていて、内容についてはさっぱり覚えていません。

これからも映画について、あれこれ紹介してください。
忙しいのでいつもというわけにはいきませんが、楽しく読んでおります。
新鮮! (ヒッチ)
2011-01-23 13:12:53
『スペース・バンパイア』が公開されて25年あまり。この25年間でどれだけの映画人が本作に影響を受けたのか…現代では当たり前の描写がいくつも組み込まれた古典的な名作と言えるのではないでしょうか。
そうした意味でも再見してみると面白いかもしれませんね。

本作が公開された当時、私はまだ生まれてもいませんでしたが、本作はSFである一方、エロ映画の異名があったようです(笑)
naotomoさんが10歳であれば、たしかに強烈な印象しか残らなかったかもしれませんね。

ちなみに僕らの世代にとっての『スペース・バンパイア』的なSFエロ映画と言えば『スピーシーズ』なわけで、初めて観た時、私も強烈な印象しか残りませんでした。とにかくいエロい。それだけでしたね(笑)
そうこうしている間に『スピーシーズ』を観たくなってきたぜ。今度再見して批評でも載せておきます。

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