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『ハプニング』

2008年08月01日 22時51分49秒 | ホラー映画
ハプニング (特別編) [DVD]

20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

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『ハプニング』  2008年(米)監督:M・ナイト・シャマラン

 なんの前兆もなく、まさに突然、オープニングから恐ろしくグロテスクに死んでいく人間たち。観る者はわけがわからぬまま、一気に恐怖のどん底へと突き落とされるのである。
 渋滞の道路。警官と車の運転手が世間話をする。すると突然、頭を打ち抜かれて血しぶきを噴き出しながら倒れる運転手。銃が横たわっている。警官は恐ろしく静かに銃を拾い、フラフラ歩いたかと思うと轟音のような銃声で、彼は自分を殺す。そんな彼の銃を再びフラフラと静かに寄ってきた女性が拾いあげる。カメラは彼らの持つ拳銃だけをクロース・アップし、死体となった彼らを酷く冷徹に映しだすのだ。
 視覚的に且つ重厚なサウンドたっぷりに、そうまさに映画的表現によってリアルでグロテスクな逃れられない戦慄を体感させるのであるから監督の才を感じられずにはいられない。
 そして、家の中に止まり、恐怖のあまり、銃を持ち、少年を次々に射殺していく誰か。「姿なき恐怖」を人間にも照らし合わせるなど、人間の狂気を「原因不明の何か」と引きを取らないほどグロテスクに描写するから、もう観客は自然も人間も味方してくれないこの絶望的状況にただただ恐怖を体感する他ないのである。
 風が、植物が恐怖となり、自殺というごくありふれた事件が集団化し、全く原因がつかめないとなると、それは日常的モンスターが世界を滅ぼす『鳥』よりも、何かわからないモンスターが襲来し、自ら絶望へと突き進む『ミスト』よりも恐ろしくなるのだ。科学では説明できない超自然的な「何か」はまるで自然界でごく自然に行われている防御反応であり、攻撃だとするならば、攻撃を受けた人類もまた自然の一部であるのだ。
 人類が地球の支配者であるという無意識的な考えは身をもって覆され、人類もまた自然のごく一部にすぎないのであるという事実の再確認は我々に恐怖とは別の底知れぬ衝撃を体感させてくれるのだ。
 本作は『シックスセンス』のように「驚愕のラスト」が要なわけではなく、むしろ観る者が体感する恐怖こそ最大の魅力であり、視覚的聴覚的に綴られる哲学的思考と極限の恐怖は本作をホラー映画の傑作とするに違いない。


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10 コメント

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TBありがとうございます。 (きぐるまん)
2008-08-03 23:58:54
人々を襲っているものの正体が何なのか、最後まで答えを出すことなく描ききってしまう力量はなかなかのものだと思います。
複雑なことは何もない、ただ人が自傷していくだけという、単純だけどそれだけに深甚な恐怖があります。
もう少し評価されていい気がしますよね。
コメントありがとうございます!! (ヒッチ)
2008-08-04 00:19:58
わたくしも、もっと評価されていいと思う作品ですね。
自分としては『シックセンス』以来の傑作とs称しても良いと感じました。
ただM・ナイト・シャマラン監督は『シックスセンス』以来、衝撃のラストに注目されることが多いため、ラストだけに目を見張る観客が多くいあたことも評価の優れない原因の一つかと。
個人的にはとても優れた作品だと思いますし、ホラーの演出としても一流だと感じました。
ハプニングについて (T子)
2009-05-06 01:30:44
久々に最高に、つまらない映画を観た気がします。おちもなにもなく最後まで観た時間がもったいなかったです。
T子さんはじめまして (ヒッチ)
2009-05-06 11:17:16
あら、そんなに酷かったですか。この映画は評価が完全に二分化する気がします。全くをもってつまrないか、凄く面白いか。
しかしなぜ、そんなにもつまらないと感じたのでしょう?最高につまらないのにはそれなりの理由があると思います(・U・)
ぜひ一度考えてみてくださいねっ!
いまさらながら感想を (ヤン)
2009-08-25 05:38:43
つまらなく感じてしまった理由は、単純に脚本のできが悪いからではないでしょうか。
本作は、見えない恐怖を演出しているだけなのでショートフィルムでよかったかもしれません。映画としてみると、不評しかでてきませんね。
感想ありがとうございます (ヒッチ)
2009-08-25 16:22:19
確かに、この作品は、脚本だとか、ラストのオチだとか、そういった物語論では良さを実感できない作品ですね。

「見えない恐怖を演出しているだけ」というよりも、「見えない恐怖を演出している魅力」があるのだと私は感じます。


「映画としてみると、不評しかでてきません」
という意見がありますが、
私は、逆に、
視覚的・聴覚的表現によってストーリーを語り、非日常の感覚を生み出す「映画」としてみると大変巧い演出をしていると思います。

映画は脚本という魅力も存分にありますが、同時に、その脚本から得たイメージを視覚化し、映画的表現で映画的感覚を体感させる映画術の魅力があります。

映画監督はそうした映画術を観客に気付かれないように演出しているので、ほとんどの観客は映画術に気付かず、脚本のみの力によって映画作品を面白いと感じると考えるのです。
たしかに脚本の魅力や良さもありますが、映画術にこそ脚本の面白さを数倍にも引き延ばすマジックやトリック、作品の魅力が隠されているものです。

ヤンさんのように脚本を重視する考えや見方も良いと思います。脚本がつまらくて、凡庸な監督であると、良い作品になりにくいのは確かですから。
私は本作には脚本よりも映画的表現の巧さがあると思うのです。
少なくとも、私が本作で感じた恐怖は、ダリオ・アルジェント監督作品やスプラッターものなどで感じる「対象の恐怖」ではなく、ブライアン・デ・パルマ監督などから感じる「感覚的・映画的恐怖」です。
映画製作をすればわかりますが、こうした映画的恐怖はたやすく誰でも生み出すことはできないですし、映画でしか体感できない恐怖です。
そうした映画的恐怖をもった本作は、映画として優れた作品なのだと考えます。

わざわざコメントありがとうございます。
どんな意見であっても映画を考えるということに変わりはないこと。
わたくしなんかの批評を読んでいただいて、少しでも映画について考えてもらうと幸いです。
記憶に残る作品 (いぬ)
2012-01-17 14:15:52
この映画は私にとって記憶に残る作品です。
個人的には一言でいって「最低」を通り越した「史上最低」。評価以前の本能的な部分での拒否。この映画に関しては金を返せといいたい。
実際見てこの映画から「恐怖」というものは感じ取れなかった。映画が進むにつれ、もしかしてああなるのか?というもっとも最低な予想にぴったりと重なったエンディングにしばし呆然。「シックスセンス」が限りなく史上最高に近い作品だったと思うだけにこの落差は開いた口がふさがらなかった。映画館がこういう映画ばかりになればもう映画は見ない。
なるほど (ヒッチ)
2012-01-17 17:47:57
そういう映画ってありますよね。最高にクソな作品(^^;)
観客個人によって映画作品の感じ方が異なるのは必然です。すべての観客が同じ評価をする作品は存在しないですしね(*_*)
世に言われている名作というのは、映画史的に名が知れ渡った作品のことであり、名作といえども駄作と思われることはあります。

なぜなら観客の知識や経験、価値観や志向などが個人によって異なるからです。当然、いぬさんと私とは経験や価値観などが異りますから、いぬさんにとって本作をクソ映画と感じることは決して不思議なことではありません。
同時に、いぬさんにとってのクソ映画が私にとって傑作と感じることも不思議なことではありません。

そこで私が気になるのは、いぬさんがどうして本能的な嫌悪感を抱いたのか?ということです。
ホラーが嫌いなのか。過去のホラー映画の展開と類似していたのか。そこが気になります(*^^*)
展開が読めたということは、過去に何か同じような作品を見たのでしょうか?
また、もし、いぬさんがほとんど映画を見ていなかったとしたら、この映画のラストは予測できたのか、ということも考えさせられますね(^_^)/


>映画館がこういう映画ばかりになればもう映画は見ない

私も同じです(^^;)もし世界中の映画館がホラー映画ばかり上映していたら私も映画を見ていないでしょう。
忌み嫌う気持ちはわかりますが、今日の映画には様々なジャンルがあり、駄作もあります。それが映画です。

そして、結局のところ、いぬさんがこのコメントで何を問いかけているのか不透明な部分があるので、そこを知れればと思います(^^;)
決して (いぬ)
2012-01-20 01:58:48
ひっちさん。通りすがりの分際で、我が文章を読み返してみると突き放し過ぎ?って感じましたのでとりあえず「ハプニング」を評価する皆様に対してお詫びをいたします。今回ふとしたことから、最低。ハプニングで検索をかけたところ貴ブログにたどり着き、正直に思っている事を書かせていただきました。おかげで少しすっきりしました。基本的に私はサスペンスホラー大好きです。ロメロ監督の「マーティン」、フーパーの「テキサスチェーンソー」スピルバーグ「激突」リメイクが決まった「死霊のはらわた」等、多くのお気に入りがあります。この分野はご存知のようによく映画製作の入り口として利用されます。それゆえかどうかは定かではありませんが秀作が意外と少ない分野だと感じています。しかし、シャマランはこの分野で金字塔を打ち立てましたよね。「シックスセンス」は、愛を描く事に見事に成功したと思います。そこにはある種の「マジックミーティング」とでも言うようなものを感じました。ETで自転車が飛び上がる瞬間に感じたような。「ハプニング」は映画を通して何が言いたかったのか意図がはっきり分かりませんでした。そして見たあとで(もちろん個人的意見です)また、それを考え直す価値を感じていない。本能的なと書いたのは監督と配給の宣伝にだまされたと感じたので。いわゆる不信。それぐらいよくできた予告でした。自分の感覚として、なぜこんな作品を作ったのだろうか?という評価及び集客作戦にだまされたという思いから史上最低レベルは揺るぎません。最後に大きな外的要因。大切な人とのデートで観たという事が事を増幅しているのは事実でしょう(笑)。自分としては映画とは結構感覚的なもので、深く考察する事はほとんどないです。また、自分が映画を見るのは上に書いたマジカルな瞬間を感じたいためです。
ありがとうございます (ヒッチ)
2012-01-20 14:17:10
映画の「体験」は大切ですよね(^^)体験とは映画を見ている瞬間に体感する一瞬の幻ともいえます。一度体験したら、二度と同じ体験はできません。
いぬさんの「マジカルな瞬間」がそれかもしれません。この映画体験は、いぬさんの言うようにその時の鑑賞環境や知識によって左右される傾向にあります。
家でDVDで見るのと映画館で見るのとは違いますし、DVDで見ている途中に電話が鳴って一時停止したら、つまらなくなる時もあります。いぬさんの言うように、デートで見た場合も気分が違いますし、デートでハッピーエンディングの映画を見たらとんでもない傑作に思えたりもしますよね(*^^*)笑
また予告編を見て期待しすぎてしまった、というのも鑑賞者の知識の違いによって生まれる映画のマジックでしょう。

なので、いぬさんのような鑑賞環境で『ハプニング』が最低映画になるのもうなずけます。
私もすべての人にこの作品が傑作になると思っていませんからね(^^)
ただブログをやっていて感じることですが、通りすがりの衝動的な思いだけでコメントをするのは危険な場合があるでしょう。
読み手を意識していない自己発散的な言論暴力になりかねません((+_+))
もちろん私はいぬさんの文章に不快な思いを抱くことはありませんでしたが、自己発散のためにコメントをすると他のブロガーが傷つく可能性もあります。私自身もそうですが、気をつけなければなりませんね(^_^;)

なんにせよ、いぬさんが返答してくれたことで、映画体験の幅広さを実感することができました!コメントありがとうございます☆これからも拝読していただければ幸いです

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