静 夜 思

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書評 066-1 『 ラジオのこちら側で』 ピーター・バラカン 2013年刊 岩波新書

2017-02-23 13:05:51 | 書評
バラカン氏(以下、PBと略す)は、日本に定住し影響を与える外国人の中でも、私がずっと注目してきた一人だ。最初は、外国語アクセントがほぼ抜けた日本語の
巧さと、落ち着いた語り口・風貌が強く印象に残る理由だけだったが、此の本を読み、様々な事を教えられた。
  余りにもこなれた日本語の文章ゆえ、此の本をPB自身が執筆したのかと疑問をもちつつ読み進んだのだが、岩波の編集担当者がPBの話した内容を文章に起し、
それを忙しいPBが校正チェックした、と「あとがき」で知った。 仮にPBが自ら原稿を書いたとすれば、リービ英雄ばりの筆力だなと秘かに思っていたわけ。 
それにしても文章校正を自分でするというからには日本語読解力は生半可じゃあるまいと感心する。
 だから何?というのではなく、彼の豊富な語彙と感性/知性が申し分なく発揮され、私には知らない事だらけの世界が広がったこと、先ず、それに感謝したい。

 彼の経歴と活躍を承知の人には蛇足だが、PBは1974年ロンドンから来日、東京で音楽出版社に就職した。本書は来日した70年代から10年区切りに章立てしている。 余り年齢の違わない私は、同じ時間を並んで生きた世代として章を辿るごとに、「同じ音楽でもクラシック音楽しか馴染まないできた自分と違い、此のような人生もあったのだ」との素朴な驚きが最初の読後感になった。 
 まず断っておくが、クラシック以外の音楽を低く見做してきたつもりは今も昔もない。実際、金管楽器を演奏するので、クラシックもそうでない音楽の両方を楽しんでいる身として、音楽の愉しみは同じ。
 私が「此のような人生もあったのだ!」と驚くわけは、クラシックミュージックではない音楽放送の仕事にここまでの奥行きがあり、世相/時代の移り変わりと共に歩む仕事に40年以上を奉げているPBが学んだことの深さに感銘を受けたからだ。
   PBがどのような人生航路を歩いたかは、本書をご覧いただくとして、印象に残った何点かを次回以降に記したい。 
   【1】 現代ジャズなどポップス音楽の共時性・・・クラシック音楽選好人種の階級性、「聖 vs 俗」、現実逃避と共生
   【2】 芸術・メディアに生きる表現者の政治コメント・・・国家との対峙、商業主義との向き合い方
   【3】 有償放送への態度と”お上意識”・・・・有償配信への価値観(リスナー側)、放送ビジネス vs 地方文化
   【4】 公共放送の在り方・・・・ BBC vs NHK, インタネット活用と国の電波監理政策、日本メディアの『ガラパゴス化』
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≪ 選択肢を自ら捨てる日本外交 ≫  他力本願の危うさ/愚かさこそ すぐそこにある危機だ

2017-02-23 09:33:09 | トーク・ネットTalk Net
★ 木語:「ポスト西側」の秩序=坂東賢治 http://mainichi.jp/articles/20170223/ddm/003/070/074000c?fm=mnm
・ 詳しくは引用サイト記事を読まれたいが、坂東氏の要点は、米国主導の戦後秩序が今、大きく変わろうとしていること。だが、世界がどこへ向かおうと
  しているのか、答えは誰にもなく、中国、ロシア・中国・EUそれぞれが文字通り、手探りを始めたところだ。試行錯誤の連続と其の結果がこれからの
  新しい世界を形成してゆくと誰もが考えている。
・ そこにあって日本は、アメリカの腕にしがみつくことが唯一残された選択だ、とツユも疑うことないかのようにトランプ詣でをした。
  新しい秩序形成への模索に自らも加わるなど、日本には頭の片隅にも無いかのように世界の指導者には映っていよう。
⇒ 自公政府の外交に従来から距離を置く論者のみならず、保守論客の中からも、少しづつ米国丸投げの外交/安全保障路線への懐疑は出始めている。

◆ 『非核三原則』のうち、<持ち込ませず>の縛りを外すだけでも、3つの核兵器保有国(=ロシア/北朝鮮/中国)への第1義的抑止にはなる。
  無論、通常兵器での防衛力を更に向上させる努力は今まで以上に続ける。 核兵器を日本が自ら製造することに実現性が無いことは、実験場すら領土内に
  造れない哀しい現実を考えれば直ぐにわかる。 ならば、買ってくるか、置いてもらうか、此のどちらかしかない。
       <核兵器廃絶>の願い、アピールを止めよというのではない。言いながら、備えるのだ。
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