静 夜 思

挙頭望西峰 傾杯忘憂酒

癒しのクラシック ベスト10曲   # 0 7      < 私を泣かせてください ; ヘンデル >

2014-11-23 17:27:55 | 文芸批評
  この曲は、ヘンデルのオペラ <Rinaldo リナルド> 第2幕第2場で女主人公・アルミレーナが歌うアリアである。 (Lascia ch’io pianga) が「涙のながれるままに」と訳されるときもある。 何に涙を流すのかというと、「エルサレムのイスラーム側の魔法使いの囚われの身になったアルミレーナが、敵軍の王アルガンテに求愛されても愛するリナルドへの貞節を守るため、決闘に臨むリナルドを想い「苛酷な運命に涙を流しましょう」と歌うアリアである。 一度耳にすれば忘れることのない、心安らぐ旋律には違いない。 私はキリ・テ・カナワの歌う版が気に入っている。
   ヘンデルがイタリア旅行のあとイギリスに渡る1700年初頭、オスマントルコと欧州の諸王国の間では勢力争いが続いていた。この時代背景に豊かなイタリア音楽を引っさげたヘンデルの登場は、当時の遅れた英国では新風となった。ヘンデルもまた優れたメロディメーカーであり、器楽曲や声楽に限らず、舞台音楽においても素晴らしい。この曲のみならず、例えば「メサイアコーラス」には彼のメロディメーカーの本領躍如たるものがある。  それは同い年だったバッハと比べたら、誰もが即座に肯けるところだ。   
    参考までに、原語と英訳、そして和訳を以下に掲げる。
      Lascia ch'io pianga mia cruda sorte, e che sospiri la libertà. Il duolo infranga queste ritorte de' miei martiri sol per pietà.      
      Let me weep for my cruel fate, and who long for freedom. The duel infringes these de 'my sufferings I pray for mercy.     
      どうか泣かせて下さい。 この残酷な運命に 自由に焦がれて溜め息ばかりついております。 決闘がこの不運を断ち切ってくれますよう 神の御憐れみを祈ります 

  悲恋のアリアだが、死に向かう老年には「残酷な生」から「死という名の決闘」で自由にしてくれと聞こえなくもない、なんて云うとヘンデル先生のお叱りの声が聞こえそうだ。
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消費増税と軽減税率導入   # 0 4   < 導入時の判断要素 >

2014-11-23 14:44:22 | 時評
  さて、これまで観てきた3つの解決課題は、実は個別に存在するのではなく相互に関連しあう。 然も、それだけではないから、ややこしいのだ。つまり、
    1) 軽減税率適用品目の線引きにまつわる実務上の問題点の調整、  
    2) 新たな課税方式の選定と実務適用上の問題点/齟齬の抑制 
    3) 新課税方式に伴う事務負担<事業者/税務当局>と< 情報システム面での支援策の在り方 >の全てを鑑み精査したうえ、  
          且つ、平成27年4月直前の国民経済/内外政治環境を睨み渡した結果でないと、 
    4) <品目毎の軽減率を受けて決まる税収減少のパターンと社会保障への影響検討>の本番が行われ、軽減対象と軽減率は決定できないのだ。
  言い換えれば、(平成27年4月直前の国民経済/内外政治環境)が真の決定要因であって、(軽減対象と軽減率)の決定及び、1)2)3)の実務課題等への具体的対応策は上述した決定要因への従属要因でしかない。   それは、この総選挙で我々が選ぶ時の与党/政治家の胸先三寸だ。財務省の思惑も当然からむだろう。

  因みに、<資料:15頁で>税率を1%下げる毎に減少する税額を、対象品目8カテゴリー毎に試算している。 (例えば、軽減幅5% なら、減収額は下の概数額 X 5になる。) 
   軽減が(A) 全品目対象なら減収は▲6,600億円、(B) 全ての加工・調理食品+生鮮食品の合計・・(←酒類・外食・菓子類・飲料類は軽減なし)・・の場合は▲4,000億円、
       (C) 生鮮食品のみの場合は▲1,800億円 

アベノミクスとやらで謳う「第3の矢」が本当に功を奏し、安定成長と景気浮揚で税収増加できるかどうかの判断で、上記の税収減概算額から対象品目と軽減率は逆算されるしかないということだ。 軽減幅の少ないほど逆進性は効かず、低所得層の不満は高まるが、品目カテゴリー/軽減率ありきの議論には構造上ならないため、摩擦は避けられまい。 また、社会保障費の在り方を含む歳出削減が本気で出来なければ軽減品目幅は更に狭くなり、低所得層の不満にいっそう輪をかけることになる。

  総選挙が迫っている。消費増税延期の信を問うなどといわれても平成27年春の状況を今から予想できず、”脱デフレのための経済運営支持 ”は問われるべき争点にはならない。 そうではなく、経済成長の在り方と政策の方向が実現可能なものか、歳出削減/構造改革の本気度はあるか、その他外交安保は国益にかなうものか、原発依存度への姿勢はどうか、などの多角的な課題に対する総合的信頼性をみて投票するしかないと思う。  今回の選挙結果が政権交代に結びつくとは思えないが、消費税が本当に社会保障目的税として機能するのか・させられるのか、それは国民にかかっている。

   それにつけても若年層の投票率が懸念される。 身の回りの若者に国家経済と市民生活の連関を解らせ、意思決定に参加せねば後で困るのは、間もなく退場する年寄ではなく君たちだよ、と説くのが我々の務めではないだろうか。                                ≪ おわり ≫
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