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新 【三色の楽譜】全6-3 

2017-07-27 | SFファンタジー小説
3「Ryo」
 
 三人は土曜の夕方に大通りのアサヒビールの会場で空席を探していた。
会場内で彼女たち三人に手を振る女性を目にした。

それに気がついた大越が「あっ??・・・森ちゃん・・・あれ・・・」

二人も指さす方を見て同時に声を出した「ウソッ・・・!」

そう、三人の視線の先には、今しがた別れた宮内が大ジョッキー片手に
満面の笑みを浮かべて大きく手を振っていた。

大越が近寄り「宮内さんもいらしてたんですか?・・・」

「そう・・・帰ろうと思いそこの前を歩いていたら、足が勝手にこちらに
誘導するの・・・気がついたらジョッキーを持ってたというわけ・・・」

四人は仕事を離れ二時間ほどビールと戯れた。

別れ際に大越が「宮内さん、今日はとっても充実した一日になりました。
あなたは本当に貴重な体験をなさいました。

その貴重な体験を是非読者に伝えたいと思います。明日は限られた時間ですけど
よろしくお願いいたします。今日はありがとうございました」

「いいえこちらこそ田舎者の拙い話し方で恐縮してます。明日もわたしの
戯言にお付き合いください・・・ありがとうございました。」

森田は札幌テレビ塔上空の月も、なんとなくほろ酔い気分のように思えた。





すずめが鳴いて すずめを生き
石ころが鳴いて 石ころを生きる

 宮内が「昨日はごちそうさまでした。楽しい時間を与えていただき
感謝します。ありがとうございました」

大越が「こちらこそ、宮内さんと知り合うことが出来て嬉しいです。
仕事を離れて楽しい時間を共有でき幸せです。ありがとうございました」

森田が「ご苦労様でした。楽しいお酒でした・・・大通りビアガーデン最高です。
あんな美味しいビール初めてです。また機会があったら行きたいです」

宮内が「あれはチャリティーのイベントなんですよ。長い歴史があるみたいです」

森田が「そうなんですか・・・もっと飲んでおけば良かった・・・」

部屋は昨日のビアガーデンの時のように和んだ。

大越が「早速ですが今日私たち帰省します。昨日話された三人の詳細を
お聞かせください・・・」

宮内が「はい、ではRyoさんから話しますね・・・もう40年前なので
多少話しが前後するかもしれませんが・・・勘弁して下さい」


 「あれは、私が21歳のころです。昨日話したように友人がRyoの
自宅に連れて行ってくれました。部屋には既に5人の若者が座っておりま
した。Ryoと面識がない私はジッと部屋の雰囲気をよみながら、Ryo
は誰なのか観察してました。薄暗い部屋を包む香の臭いが心地よく感じられ
ました。

すると一人のインドの服を着た細身の髪が長い男性が現れたのです。
そうRyoさんです。男性の雰囲気からすぐわかりました。

『待たせたね・・・』第一声でした。

Ryoは先に来ていた若者の質問に的確に答え私の番がきました。
20分ほどしてわたしの番がきました。

『君、なにか聞きたいことは?』

私は「自分が知りたいです。自分を知るにはどうすればいいですか?」

Ryoが『きみ、生年月日は?』

「32年4月16日です」

Ryoは初めての人を視る時に生年月日を聞くんです。生年月日に意味が
あるのではなく、ふだん名前を聞かれる行為は即答できます。考えずに表面
だけで答えるからです。でも生年月日は聞かれ慣れてないので、一度の深くに
意識を向けるんです。その時にRyoが一緒に意識に入り込み、相談者を
透視するようです。

Ryoは笑みを浮かべながら『悟れ・・・悟ればわかる』それが返答でした。

私は速攻で聞き返しました「悟るにはどうしたら良いですか?」

そしてここからが衝撃的なことが私に起こったの・・・
私はRyoの目をジッと凝視したの・・・お互い沈黙が走ったわ・・・

Ryoは軽く笑みを浮かべ『お帰り・・・』そう言ったの・・・
私はまったく意味がわからなかった・・・

Ryouが『お寺を幾つも廻ったのかい?真面目に座ってたんだね・・・
もう大丈夫だよ、ここに帰ってきたから・・・お帰り・・・』

私はお寺を廻ったことなど、ひと言も云ってないのに彼は解っていました。
禅問答のようでまた意味がわからなかった・・・

今度はいきなり『君・・・堅いよ・・・マリファナでも吸ってみるか?』

はい・・・なにも考えずに即答しました。

『よし、そっか・・・どこに置いたかな~~~』Ryoは部屋の棚の方に
視線を向けていた。

『あっ・・・切らしてたごめん・・・』

これは後で解ったことなんだけど、Ryoは私を試したということだった
ようです」

大越が「なにを試すのですか?そのへん具体的にいいですか?」

「私の真剣度。マリファナなんて初めから家には無いの・・・違法の
マリファナを吸って法を犯してまで、私が真理を知りたいのかどうか・・・

私に覚悟があるかどうかを試したかったのね・・・
又は、社会常識や既成概念に縛られている私を解き放したく思ったのかしらね。
私が簡単にハイと返事したもんだから、拍子抜けしたのかもしれない・・ふふっ」

また、二人の間に多少の沈黙がまたあったの・・・Ryoの顔を凝視して
直ぐ・・・一生涯忘れないあれが起こったわ・・・

胸が急に熱くなりはじめ・・・張り裂けそうになったの・・・
そして呼吸が乱れ頭が真っ白になった。恍惚状態になったの。

どのくらいそうしたか定かでないけどRyoの視線は覚えてる。

その後、みんながなにを話したか全然覚えてないの、というよりその時の私、
正直みんなの話はもうどうでもいいことだった。

自分のことで精一杯。とにかく早く帰宅して瞑想したい。
この感覚をひとりで味わいたい。その時の率直な感想でした・・・

帰り際にRyoが『いい夢視な・・・あしたの朝は明るいよ・・・』
そう言ってたのを覚えています。


 翌朝は眩しい朝だった・・・総てが輝いてるの・・・生きているの・・・

完璧だった・・・木々や草・鳥も総てが生きているの、呼吸してるの、

電車に乗っても総ての人がみんな生きてるの・・・伝わってくるの・・・

嬉しさやワクワク感が止まない・・・しばらくつづいたの・・・一週間ぐらい。

でも、しだいに普通に戻りね気がついたら頭の中が今度は真っ白・・・
五里霧中・・・自分がどこにいるのか何をしたいのかさっぱり解らない。
全然問題がないの。この世のことはどうでもよかった・・・

その状態は十数年続いたの・・・徐々に普通に馴染めてきたけど
時間がかかった。

その間に会社の転勤で札幌市に戻り、今の主人と出会い結婚し子供を授かったの。
結婚生活はそれなりに楽しさも葛藤もあった・・・当然よね。


 あっ、わたしごとでごめんなさい。つい自分のことばかりですみません。

話しを戻すね、Ryoとはその後何度も会ったし、吉祥寺で彼行きつけの
居酒屋に酒を飲みにも何度か行ったのよ。かれは酒が好きなの、なかなか
酔わないけど酔った時のRyoも面白いのよ。あなた達はRyoのそういう
エピソードのほうが興味あるのかもね・・・」


 森田が「どっちも興味あります。覚者としての彼と、人間としての彼も」

宮内は「彼はいつもすべてと同一線上なの、区別無いよ・・・
みんなに話してる時も、居酒屋で酒飲みながら話す時もみな同じ。
聞く側が勝手にシチュエーションで分けてるのかも・・・

それとRyoのなにが聞きたいのか言っていただけると、さっきみたいに
脱線しないですみますけど・・・」

大越が「法話っていうか、みなさんに話されてる内容でこの辺はRyoさん
らしい表現とか言い回しってありますか?」

「はい・・・これはよく言ってたことなんだけど、Ryoの言うことは
あくまで相談者個人に対しての生きた言葉。だからおなじ事を聞いても、
人によって逆説めいたことを平気で言うの」

大越が「??・・・う~~ん・・・?・・・・つまり?」

「その相談者にとって今一番大事な言葉を的確に話す、その人だけの
その場に必要な大事な言葉をその人だけの為に話す・・・」

森田が「もっと噛みくだいてもらっていいですか?」

「相談者と関係ない人が彼の話をそのまま鵜呑みにしてはいけないということです。
今、必要なのはその相談者だからです。その人の為だけに必要な言葉だからです。

相談者個人にとって一般世間と逆説であっても、今本人に必要な言葉ならその
逆説を平気で言うの・・・それがRyoさん」

森田「嘘も方便みたいな?・・・」

「そう・・・そして彼には嘘なんていう意識は無いと思いますが・・・」

森田が「また解らなくなりました・・・」

「つまり、悟りを開いた人間は、善悪や社会常識・などの概念は超越した
ところにあるの。囚われのない世界観。ある意味で本当の自由。

最後に話すSさんは、悟りを『鎖取』とか『差取』と表現してたの・・・
なるほど上手な表現と思ったよ・・・」

森田が「とても解りやすいです・・・すっきりです」

「Ryoはある時、彼女にたばこ買いに行くと言って、インドにフラッと
行ったことあるの、インドの場所は忘れたけど水辺の景色を見て佇んでると
遠くにRyoとまったく同じ人物を目撃したらしいの。

Ryoはすぐ声をかけてその存在を追いかけたらしいの、そしたらある
寺院に入ったらしい、追って中に入るとそこにヨギが座っての。

その方の上にある額に目をやるとその絵は、伝説のヨギと呼ばれた存在で、
その絵とまったく同じ人だったと話してた。

そこでRyoは修行をして人間では最高のレベルに到達したと話してました。
そのへんになると正直わたしでは理解不能です・・・」

大越は「興味ある話しですね・・・Ryoさんにお会いしたかったです」

「その後、私は不定期ですけど数度会いました。その辺りからわたしは仕事で
大阪に転勤され、札幌に配置換えされて退社しました。

Ryoさんとは電話で数度話しましたがお会いしてません。

知人の話だとRyoは都下で活動をし、活動と言っても話しの解るお兄さん
ていどのことで、彼には組織や団体を作る意思はなく、晩年は自ら即身成仏
したと噂されたみたいですが、当時を知る人とは付き合いがないものですから
今となっては定かではありません。

ひと言でRyoさんを表現するなら・・・戯れの自由人・・・でしょうか。

あくまでもわたしの評価です・・・

ごめんなさい彼を評価などとおこがましいです。というのが率直なお話・・・
わたしレベルで彼を評価しようとすると、彼が小さく限定されるので
彼の著書も数冊ありますから是非購読されて下さい。是非お勧めです」

大越が「ありがとうございました。宮内さんも好い体験なさってるんですね
勉強になります。次は長崎のiさんのお話しをお願いできますか?・・・」
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