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【Mari】全8話-1

2016-12-20 | SFファンタジー小説
1「私はマリだけどなにか?」

 「私は高校生だけどなにか?」

 ここは小樽。港が一望出来る閑静な住宅地。

ここにひとりの名物女子高校生がいた。彼女の名は山田麻理枝17歳。

マリにはちょっと変わった才能があり、書道部の先生は、
普通の女子高生と違う何かを感じていた。
先生は、うまく理屈で説明できない何かに注目していた。


 「マリ、おはよう」後ろから声をかけてきた。書道部顧問兼担任の
花岡仁太35歳独身。

「先生おはようございます。ちゃんと朝飯食ったのか?」
マリは学生カバンを回しながら言った。

「お前ね・・・俺はこう見えても年上でしかもお前の先生・・・
俺の言っている意味解る??」

「だからどうしたの?鼻をかじった先生」

「あのさっ・・・俺の名前を途中で切らないでくれるかな・・・
なんか変に聞こえるんだけど?」

「先生の気のせいだよ・・・で、なに?」

「今年の書道部に入部した一年生の世話役を頼まれてくんない?」


「おい、ジッタ・・・人にもの頼むのにその『くんない・・・』
って頼み方ある?どんな教育受けてんだ?」

「あっ・・・そうだな・・先生が悪かった。忘れてくれ」

「いちど男が発した言葉をそう簡単に撤回すんな」

「ご・ごめんなさい・・・・」

「分かればいい。・・・で、なんで私なのさ?」

「お前、三年生だろ、だからだよ。あたりまえだろ」

「ジッタ去年のこともう忘れたの?私が指導したせいで
三人も退部したじゃない。まだ懲りないわけ?」

「あれはお前が歪な教え方したから生徒が勘違いして戸惑ったんだ」

「何が?」

「だって、お前ねぇ。書道習いに来た人間に、なんでピアノの
レッスンするの?それにあの山口早苗に、お前の家の屋根の
ペンキ塗らせただろ?」 

「だってあれは強制じゃないよって言ったもん。断ってもいんだよって」

「断ってもいんだよって確かに言った。でもその後でなんって言った?」

「なんにも言ってませんけど・・・・」

「あれ?山口は『私も一年の時は塗らされたの。まっ、書道部の
儀式のようなもの』って言ってたぞ。
書道部のどこにそんな儀式あるんだ?・・・
しかもお前が一年の時に先輩の家の屋根のペンキ塗らされたって
言ったそうだが、いったい誰に塗らされたんだ?」

「先生、あのさっ・・・・男が小さい事でがたがた言わないの。
・・・ったく・・・わかった?」

「うん、分かった・・・??なんで??先生の立場はマリより下な訳?」

「いいよ、了解。今年の一年っぺはわたしが引き受けました。
それでいんでしょ?」


 書道部に新入生の女子三人と男子ひとりが入部した。

マリが挨拶した「入学おめ出てとうございます。名は山田麻理枝です
一年間の短い付き合いになりますが宜しくお願いします。
分からないことがあったら聞いて下さい。

書道は習字と違って形にこだわりません。味で勝負、フィーリングです。

正解はありません。感性で書いて下さい。こう言うと怒られますが、
顧問の鼻をかじった先生も字は下手くそです。

本人は宇宙からのバイオリズムがどうのこうのと言ってますが、
あの顔で宇宙は似合いません。一年生も顔を見れば解ります。

宇宙というよりも、水槽の中のクリオネが昼寝してる感じ。
お楽しみに。以上」

「山田先輩ひとつ質問いいですか?」

「はい、どうぞ」

「この書道部は過去になにか賞、頂いてますか?」

「賞?・・・なんで?」

「全国競書大会とか大書道展とか出品されないのですか?」

「あんた名前は?」

「泉谷です」

「そう、あんたはなんで書道部に入ったの?」

「書が書きたいからです」

「うん、私も書が書きたいからここにいるのね。別に全国競書大会とか
興味ないの。私は大会に出品して賞を貰うために書いてないし。

そういう大会に出たい人は勝手に出品して下さい。否定はしません。
そういう形にこだわる人は、こことは別に習字部でも作ると良いかもね。

ここは、書を競うのでなく書を楽しむところなの。他には?」

「蘭島からきた蛯子です。マリ先輩の作品はどれですか?山田マリさんの
名前が見あたらないのですが・・・」蛯子は壁に貼っている数点の書を
指して言った。

マリはブツブツ言いながら作品を机から取り出した。

「これが私の作品・・・どう!」

蛯子がジッと見て口を開いた「???・・・私、これ分りません?
これがそのリズムなんですか?」

「お前ねっ。生意気言ったらぶっ飛ばすよ」

「あっ、いや、すいません。つい・・・」

「つい・・・なにさ?続き言ってみな」

蛯子は次の日から部に顔を出さなかった。

花岡が「マリ、今朝蛯子っていう一年生が退部届け持ってきたけど
なんか聞いてる?」

「私、聞いてません・・・」

先生は思った「あっそう・・・・これって、もしかして退部一人目?」


 ここは書道部。

マリが「今日はテーマがあるのね、自由な発想で丸を書いて欲しいの」

佐伯が「丸ですか?」

「そう丸よ、円」

「丸になんの意味があるんですか?」

「宇宙よ。人それぞれの宇宙を書くの。よく禅宗のお坊さんが
書いてるでしょ。お寺なんかの掛け軸にもあるやつ。あれよ」

一年から三年までの部員十名が円を描き始めた。

一年生の書を並べてマリが「見てごらん単純な丸だけど三人とも違うでしょ。
丸には自分の内面が現われるのよ。

こぢんまりした可愛い丸。こっちは大胆不敵な我が道を行くっていう丸。
これは均整の取れたはみ出しのない几帳面な丸。個々の性格が出るのね。

ねっ、面白いでしょ。たった丸ひとつが沢山のことを表現してるの」

「ところでマリ先輩のはどんな丸ですか?」

「私の見る?」

「はい」全員が返事をした。

「ほれ、これが私の」

「ぷっ・・・・・」瞬間全員が吹き出した。半紙一杯に書いた丸は
完全にはみ出していた。

「マリさんこれはどう表現したらいんですか?」

「自分で言うのもなんだけど、協調性がない。融通が利かない。
自分勝手ってとこかな・・・馬鹿野郎な訳あるか・・・
大胆で壮大な宇宙だろ!」

部室全体、一年から三年まで笑いころげた。

「なによ・・・・なんで笑うの?どこが可笑しいっていうのよ?・・・」

同級生の美智子が「マリ、自分でなに言ってるか分かってるの?」

「なんで?・・・・」

「諸君、これが悪い見本だからね」

「は~い」全員声をそろえた。

・・・・・いつか必ず、こいつら・・・しごいてやる・・・・
 

 顧問の花岡先生が「みんないいか、そろそろ全国競書大会の作品
何にするか考えておくようにな・・・」

一年生の泉谷が「先生よろしいですか?」

「はい、なんですか?」

「全国競書大会の件なんですけど、入部した時にマリ先輩が、
『この書道部はそういう大会は出ないから、出たい人は自分で申込みな』 
って言ってたんですけど・・・・」

「あいつ、今年もまたそんなこと一年生に言ったのか・・・まったく。
それは、あいつが勝手に言ったことなんだ。ライバルを減らすために」

「そうなんですか・・・」

泉谷が作品を書いてるところにマリが部室に入ってきた。

「泉谷なにやってるの?」

「競書大会に出展する作品を考えてます」

「あっ、そっ・・・聞いた・・・?」

「聞きました。マリ先輩ずるいですよ私達一年生には大会は出ない。
出たい人は勝手に出ればって。おまけに、ここは書を楽しむところって
言ってましたよね」

「いつ、だ~~~れが、そんなこと言ったのさ?」

泉谷は次の言葉を失った。この先輩は私の駄目人間リスト
に加えておこうと思った。

マリが「一年生聞いてくれる?そう言うことで今年から競書大会に
うちの部も出展することになりました。自分の納得いく作品を書いてね。
善し悪しは自分で決めないで、鼻をかじった先生か三年生に聞くようにね。
分かった?」

「は~~ぃ・・・」一年生は渋々返事をした。


 下校途中マリはひとりで運河の脇を歩いていた。

後ろから女の声がした「おい、姉ちゃんチョット待てや」

マリが振り向いた「・・・・なに?」

同じ小樽にあるもうひとつの高校の制服が目に入った。3人組だった。

「チョット顔かせや」

「あんた誰?」

「関係ねぇよ。ツラかしな」

「あいよ・・・」

4人は倉庫と倉庫の陰に移動した。

マリは「何かわたしに用?」

マリが言い終わらないうちにひとりの女が、いきなりマリの足を
蹴ってきた。蹴りはマリの太ももにヒットした。

「痛え~~~何すんだこら」

「チョット金貸してくんねぇかな」

「なんでだよ」

「なんで~~うなこと関係ねえよ。また痛い目にあいたいのか?」

「お前ら、私が誰か分かってやってるのか?」

「青葉高の山田だろ」

「おう、私のこと知ってやってんだ・・・ということは
誰かに頼まれたね」

髪を赤く染めた体格の良い女が「そんなの関係ねぇ・・・」

「なんだ、そんなの関係ねってか?お前は小島義男か?
オッパピーてか。超古いんだけど、笑えるし」

その女は、マリの顔めがけて殴りかかってきた。

瞬間、マリは左手で防御して右手で女の腹へ突きを入れた。
女はそのまま唸り声を出してうずくまった。

「さぁ、次はだれだ、かかってこいや・・・」拳法の構えをした。

マリは中国拳法黒帯で全国大会3位の腕前だった。

「顔面は勘弁してやるから。好きなだけかかってきな。ちっ、面倒だ
どうせなら3人いっぺんにきな・・・そのひとりは無理なようだけど」

残り2人も完全に腰が退けていた。

もうひとりの女が「あんた、なんかやってるの?」

「うなもん関係あるかい、さぁきな・・・金が必要なんだろ・・・
さぁ、かかってきな。私を倒してから金持って行きな、さっ、コイ」

「もういい、帰んな。今日は許してやる」赤い髪の女が言った。

「はぁ???~~許してやるってか・・?
おまえバッカじゃねえの・・・許して要らねえよ。
とっととかかってきな」

2人はもうひとりを抱え過ぎ去ろうとした。

「おい、待ちな・・・帰る前に誰に頼まれたか言ってみな」

「あんたんのとこの1年っぺで蛯子って知ってるかい」

「蛯子??・・・ああ知ってるけど」

「その姉がうちの高校の3年なんだ、そいつから話し聞いて、
それじゃあ私らが、とっちめてやろうかっていうわけ。
頼まれた訳じゃないからね。姉やその妹には関係ないから・・・」

マリは「分かったよ、じゃぁな」

3人は、うな垂れて歩き出した。

その時後ろから「チョット待った。帰る前に私に金貸してくんない?」

小太り気味の女が「ちっ・・・いくらさ?」

「嘘だよ、あんた達そのままだと道歩いていてもしょぼくれてて
格好つかないよ。私とそこの喫茶店でコーヒーでも飲まない?
少し休んでいこうよ。」

思わぬ言葉に3人は戸惑った。

「嫌かい?嫌ならいいけど」


4人は喫茶店に入った。

マリが「そっちのあんた、腹は大丈夫かい?」

「・・・・えぇ」

「あんた達いつもあんな真似してるのかい?」

赤毛が「してねぇ~よ」

「そっかい、わたしを路地の陰に引き込む手順は馴れてたけどね」

3人は罰悪そうに顔を背けた。

「その顔はやってるね。もうよしな・・・格好悪いジャンそんなこと。
今度私が見かけたら完璧に締め上げるからね。分かった?」

「・・・・・」

「返事は?」

「はい・・・」

「声小さい、聞こえない」

「はい!」

「しっかり聞いたからね。忘れるなよ・・・」

マリが「チョット、トイレ行ってくる」席を立った。

その間3人は小さな声で話し始めた。

マリが戻ってきた。

「ァ~~スッキリした。出すもん出さねえと落ち着かないね」

赤毛の女が切り出した。

「マリさん、今、話し合ったんだけど、あたい達を弟子にしてくんない?」

「なんの?」

「マリさんの」

「なんで?」

「格好いいから」

「弟子ってことは何かを学びたいんだろ・・・だから何を?」

「なんでも」

「あのさっ・・・書道でも教える?」

3人はこけた。

こうしてマリの高校3年がはじまった。

END
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